新潟と長野の県境にそびえる苗場山は、秋になると二つの異なる絶景を見せてくれる特別な山として知られています。標高2,145メートルの山頂に広がる黄金色の湿原と、日本最長のゴンドラ「ドラゴンドラ」から眺める燃えるような紅葉の海。この両方を楽しめる苗場山は、秋の登山や紅葉狩りを計画している方にとって、見逃せない絶景スポットです。しかし、山頂の草紅葉と山腹の樹林紅葉では見頃の時期が異なるため、訪れるタイミングの選択が重要になります。本記事では、苗場山の登山ルート、ドラゴンドラの楽しみ方、紅葉の見頃時期、アクセス方法まで、秋の苗場山を最大限に楽しむための情報を詳しくご紹介します。登山初心者から上級者まで、そして登山をしない方でも楽しめる苗場山の魅力を、余すところなくお伝えしていきましょう。

苗場山の秋が魅せる二つの絶景
苗場山の秋を語る上で最も重要なポイントは、二種類の紅葉が異なる時期にピークを迎えるという特徴です。この時間差を理解することで、自分が見たい景色に合わせた最適な旅行計画を立てることができます。
天空の黄金郷:山頂湿原の草紅葉
9月下旬から10月上旬にかけて、苗場山の山頂部では「草紅葉(くさもみじ)」と呼ばれる現象が見られます。標高2,145メートルの山頂に広がる約700ヘクタールもの広大な高層湿原が、まるで黄金色の絨毯を敷き詰めたかのように変化していきます。
この湿原には、キンコウカ、イワショウブ、ヌマガヤ、ワタスゲといった湿原植物が生育しており、これらが秋の光を浴びて黄金色に輝く様子は、まさに天空の楽園という表現がぴったりです。湿原には大小3,000もの池塘(ちとう)が点在し、それぞれが秋の空を映し出す鏡となって、幻想的な景観を作り出しています。
山頂湿原の草紅葉は、登山者だけが目にすることのできる特別な絶景です。木道が整備されているため、湿原内を歩きながら360度のパノラマビューを楽しむことができ、遠くには谷川連峰や北アルプスの山々を望むこともできます。この繊細で静謐な美しさは、自らの足で登り詰めた者だけに与えられるご褒美と言えるでしょう。
燃える龍の回廊:山腹の樹林紅葉とドラゴンドラ
一方、10月中旬から11月上旬にかけては、山腹を染め上げる樹木の紅葉がピークを迎えます。カエデ、ブナ、ウルシなどの広葉樹が赤や橙色に染まり、黄金色に輝くカラマツと相まって、ダイナミックで圧倒的な色彩の饗宴を繰り広げます。
この燃えるような絶景を最も効率的かつドラマチックに体験できるのが、日本最長のゴンドラ「苗場ドラゴンドラ」です。全長5,481メートル、片道約25分間の空中散歩では、まるで錦秋の絵画の中を飛翔するかのような映画的な感動を味わうことができます。
ドラゴンドラは登山をしない方でも気軽に秋の絶景を楽しめるため、幅広い年齢層の方に人気があります。8人乗りのゴンドラからは、眼下に広がる紅葉の森を間近に眺めることができ、特に14号柱付近での急降下では、紅葉の海に飛び込んでいくかのようなスリルと迫力を体感できます。
このように、苗場山の秋は二部構成の物語となっており、草紅葉のピークに訪れれば山腹の紅葉はまだ序章に過ぎず、逆に山腹の紅葉が最盛期を迎える頃には山頂の黄金郷は静かに冬の眠りへと向かっています。どちらの秋を体験したいのかを明確にすることが、苗場山を最大限に楽しむための第一歩となります。
苗場山登山の魅力と山頂の絶景
苗場山は、深田久弥によって日本百名山の一つに選ばれた名峰であり、単なる美しい山ではありません。標高2,145メートルの成層火山として、火山活動によって形成された山頂部の広大な溶岩台地が最大の特徴となっています。
神秘の山名の由来と歴史
苗場山という名前の由来は、山頂の湿原に点在する無数の池塘にミヤマホタルイなどが群生する様子が、田植えを終えた苗代(なわしろ)のように見えたことにあると言われています。古来より、この神秘的な光景は「神の苗代田」や「天の苗代」などと呼ばれ、稲作の守り神として人々の信仰を集めてきました。
山頂に鎮座する伊米神社(いめじんじゃ)奥ノ院は、その信仰の中心であり、今もなお静かに登山者を見守っています。江戸時代の文人・鈴木牧之は著書『北越雪譜』の中で、この山の景色を「千勝万景(せんしょうばんけい)」、すなわち「千の優れた景色と万の異なる光景」と表現しました。季節を問わず、苗場山は訪れるたびに新たな感動を与える千変万化の美しさを秘めています。
山頂湿原が作り出す別世界
苗場山の山頂部は、一般的な山の頂のイメージを覆す特異な地形となっています。鋭いピークではなく、約4キロメートル四方にわたって広がるなだらかな高層湿原が展開しており、約7,000年前から形成が始まったとされるこの湿原の歴史は、自然の壮大さを物語っています。
秋の湿原を歩けば、木道の下からサクサクという足音が聞こえ、頬をなでる涼やかな風だけが感じられる静寂の世界が広がります。黄金色に染まった湿原植物と、点在する池塘が映し出す青空のコントラストは、言葉を失うほどの美しさです。
山頂からは、遠くに谷川連峰や北アルプスの山々を望むことができ、雄大なパノラマと眼前の黄金色の絨毯との対比が、登山者の心を深く揺さぶります。日帰り登山では見ることのできない夕日、星空、朝日といった特別な時間を体験するためには、山頂に建つ「苗場山頂ヒュッテ」での宿泊がおすすめです。
苗場山の主要登山ルート完全ガイド
苗場山へのアプローチには、特性の異なる二つの主要ルートがあります。自身の体力、技術、そして求める山行スタイルに合わせて、最適なルートを選択することが重要です。
祓川コース:景観豊かな王道ルート
祓川(はらいがわ)コースは、新潟県湯沢町側からアプローチする最もポピュラーなルートです。和田小屋を起点として、山頂までの標準的な往復歩行時間は約8時間10分とされ、中級者向けに位置づけられています。
アクセス方法については、関越自動車道湯沢インターチェンジから約18キロメートルの距離にあり、登山口には有料の祓川登山口駐車場が整備されています。駐車場は普通車1,000円で約100台が駐車可能です。
このコースの最大の魅力は、山頂に至るまでのプロセスがドラマチックであることです。和田小屋(標高1,380メートル)から歩き始めると、登山道は「下の芝」「中の芝」「上の芝」という開けた休憩ポイントを順に通過していきます。これらの場所からは徐々に視界が開け、秋にはそれぞれの場所で美しい紅葉が楽しめます。
神楽ヶ峰(かぐらがみね)を越えると、目の前に苗場山の雄大な山容が姿を現す劇的な瞬間が訪れます。この感動的な光景のために、長い道のりを歩いてきたのだと実感できるでしょう。神楽ヶ峰手前の鞍部付近にある水場「雷清水」は、非常に冷たく美味で、登山者にとって貴重な給水ポイントとなっています。
体力的な難易度は高めで、標高差と歩行距離が長いため、相応の体力が求められます。ただし、技術的な難易度は中級レベルで、危険箇所は少なく、登山道も比較的整備されています。
夏季・秋季の特定日には、かぐらスキー場の「かぐら第1高速リフト」が運行されることがあります。これを利用すると、駐車場から下の芝付近までの約1時間半の行程を短縮でき、体力と時間を大幅に節約できるため、日帰り登山の際には非常に有効な選択肢となります。
小赤沢コース:最短だが険しい挑戦ルート
小赤沢(こあかさわ)コースは、長野県栄村の秘境・秋山郷側から登る山頂への最短ルートです。3合目登山口からの往復歩行時間は約6時間と、祓川コースより2時間ほど短くなっています。
アクセス方法は、3合目にある登山口駐車場(約100台、無料)まで、津南町の中心部から国道405号線を進みますが、道中は道幅が狭く離合困難な箇所が多いため、運転には細心の注意が必要です。
「最短」という言葉に惑わされてはいけません。このコースは、その短さの代償として急峻な登りが連続します。特に6合目から8合目にかけては急な傾斜の登りとなり、足場も悪く滑りやすい状態が続きます。
登山道は常に湿っており、広範囲にわたって泥濘(ぬかるみ)が存在し、濡れた岩や木の根が非常に滑りやすいことで知られています。そのため、ゲイター(スパッツ)の装着が強く推奨されます。5合目と6合目の間、そして7合目付近には鎖場やロープ場が連続し、技術的に極端に難しいわけではありませんが、常に濡れているコンディションが難易度を格段に引き上げています。
特に下山時はスリップの危険性が高く、一歩一歩慎重な足運びが要求されます。このルートは、時間よりも体力的・技術的な挑戦を求める、経験豊富な登山者向けの道と言えるでしょう。アクセスが困難な分、静かな山行が期待できるというメリットもあります。
山小屋泊で味わう完全な苗場山体験
苗場山の魅力を余すところなく味わうためには、山小屋での宿泊が最良の選択肢となります。日帰り登山では決して見ることのできない、山の特別な時間を体験できるからです。
苗場山頂ヒュッテは、まさに山頂の湿原のほとりに建つ山小屋で、苗場山体験の拠点となります。収容人数は約60名で完全予約制となっており、2025年の営業期間は6月1日から10月25日までが予定されています。
ここに宿泊することで、湿原が夕日に染まるマジックアワー、頭上に降り注ぐ満天の星空、そして朝日に輝くご来光という、山の最も美しい三つの時間を独占できます。日中の喧騒が嘘のような静寂の中で湿原と対峙する時間は、まさに至福のひとときです。
日帰り登山が山を「訪れる」行為だとすれば、山小屋泊は山に「滞在し、一体となる」体験と言えるでしょう。草紅葉の最盛期である9月下旬から10月上旬は予約が集中するため、計画が決まったらできるだけ早く予約を確保することをおすすめします。
日本最長ゴンドラ「ドラゴンドラ」で楽しむ空中散歩
登山が自らの足で大地と対話する行為ならば、ドラゴンドラは鳥の視点で空と対話する体験です。苗場高原と田代高原を結ぶ苗場ドラゴンドラは、その全長5,481メートルという規格外のスケールで、訪れる者を非日常の世界へと誘います。
ドラゴンドラの魅力と見どころ
片道約25分間の旅路は、単なる移動手段ではありません。8人乗りのゴンドラは、いくつもの谷を越え、尾根をかすめ、劇的なアップダウンを繰り返しながら進んでいきます。眼下には手の届きそうな距離に錦秋の森が広がり、その色彩の豊かさに息をのみます。
14号柱の急降下は、ドラゴンドラの代名詞とも言える絶景ポイントです。最初の尾根を越えた直後、ゴンドラはジェットコースターのように急角度で谷底へ向かって降下を始めます。眼下には清津川の清流が流れ、視界の360度が燃えるような紅葉で埋め尽くされます。まるで紅葉の海に飛び込んでいくかのようなスリルと浮遊感は、このゴンドラでしか味わえない唯一無二の体験です。
興奮が冷めやらぬまま進むと、やがて進行方向右手に神秘的なエメラルドグリーンに輝く二居湖(ふたいこ)が見えてきます。これは二居ダムによって生まれたダム湖で、その鮮やかな水の色と周囲を取り囲む紅葉とのコントラストは、息をのむほどに美しい光景です。
山麓駅を離れたゴンドラがゆっくりと高度を上げていく序盤では、標高が上がるにつれて木々の葉の色が緑から黄色、そして赤へと鮮やかに変化していく様子を観察できます。まるで自然が描くグラデーションのパレットのような美しさです。
ドラゴンドラの営業情報とアクセス
この天空の旅を最大限に楽しむためには、事前の情報収集が不可欠です。紅葉シーズンの営業は例年10月上旬から11月上旬にかけて行われ、2025年は10月11日から11月9日が予定されています。
運行時間は通常、午前9時から午後3時(上り最終)で、下りの最終は午後4時までとなっています。往復乗車券の料金は大人4,000円前後が目安です。
アクセスの手順には注意が必要です。自家用車の場合、ドラゴンドラの山麓駅に直接乗り入れることはできません。まず苗場プリンスホテルエリアの広大な駐車場に車を停め、日帰りセンター「シュネー」内のチケット売り場で乗車券を購入します。その後、無料のシャトルバスに乗り、約5分でドラゴンドラの乗り場へと向かいます。
公共交通機関を利用する場合は、JR上越新幹線・上越線の越後湯沢駅が玄関口となります。越後湯沢駅東口から南越後観光バスの「湯沢-浅貝-西武クリスタル線」に乗車し、「苗場スキー場前」バス停で下車します。所要時間は約40~50分、運賃は片道700円程度です。
周遊ルートで楽しむグランド・ループ
ドラゴンドラの乗車券は、単なる往復券ではありません。近隣の「田代ロープウェー」や連絡リフト、連絡バスも利用できる周遊券としての価値を持っています。このシステムを最大限に活用することで、苗場の秋を多角的に楽しむグランド・ループが可能となります。
まず苗場側からドラゴンドラに乗り、天空の旅を楽しみます。ドラゴンドラ山頂駅に到着後、別料金(往復1,700円程度)の4人乗り「パノラマリフト」に乗り継げば、さらに高い場所からより広大なパノラマビューを堪能できます。
パノラマリフトを降りた後は、無料の「らくらくリフト」を利用するか、高原の散策を楽しみながら徒歩で「田代ロープウェー」の山頂駅へ向かいます。田代ロープウェーは、瞬間地上高が日本一の230メートルに達するスリリングなロープウェーで、ドラゴンドラとは異なる角度から二居湖を眺めることができ、その垂直的な迫力はまた格別です。
田代ロープウェーの山麓駅に到着後、無料の連絡バスに乗り、出発地点である苗場プリンスホテルの駐車場へ戻ります。この周遊ルートは、単にドラゴンドラを往復するのに比べ、景色の変化、体験の多様性、満足度において、はるかに優れた選択肢です。
紅葉の見頃時期と完全タイムライン
苗場山の秋を最大限に楽しむためには、訪問時期の選択が旅の成否を分けます。冒頭で述べた「二つの秋」の存在を踏まえ、以下のタイムラインを参考に自身の目的に最適な時期を見極めてください。
9月下旬から10月上旬:登山者のための黄金期
この時期は、山頂湿原の草紅葉がピークを迎える登山者にとっての最高のシーズンです。標高2,145メートルの山頂に広がる高層湿原が、黄金色に染まる最も美しい時期となります。
キンコウカ、イワショウブ、ヌマガヤ、ワタスゲといった湿原植物が織りなす草紅葉は、燃えるような赤色とは異なる落ち着いた気品と儚さを感じさせます。この時期に訪れるなら、目的は登山一択となります。山腹の木々はまだ緑が多く、ドラゴンドラからの眺めは最盛期には及びません。
山頂の気温は10度前後まで下がることもあるため、防寒着は必須です。また、この時期は苗場山頂ヒュッテの予約が集中するため、宿泊を検討している方は早めの予約をおすすめします。
10月中旬:両方を楽しむ移行期
10月中旬は、登山とドラゴンドラの両方を楽しみたい方にとっての妥協点となる時期です。山頂の草紅葉は盛りを過ぎ始めますが、まだ十分に美しい景色が楽しめます。一方で、標高の高い山腹から紅葉が始まり、ドラゴンドラからの景色も日ごとに鮮やかさを増していきます。
神楽ヶ峰や山腹上部では紅葉が見頃を迎え、登山道を歩きながら色づいた森を楽しむことができます。ドラゴンドラ沿線の山腹中部も徐々に色づき始め、グラデーションのような美しい景色が広がります。
10月下旬から11月上旬:ドラゴンドラの最盛期
この時期は、山腹の紅葉がピークに達し、ドラゴンドラからの眺めがまさに絶景となる時期です。カエデ、ブナ、ウルシなどの広葉樹が赤や橙色に染まり、黄金色に輝くカラマツと相まって、色彩の饗宴を繰り広げます。
特にシーズン終盤には、山麓のカラマツが黄金色に輝き、最後まで秋の彩りを楽しませてくれます。14号柱付近の急降下では、360度が紅葉で埋め尽くされる圧巻の景色を体験できます。
この時期、山頂は既に冬の気配が漂い、場合によっては初雪に見舞われることもあります。登山を計画する場合は、天候情報をこまめにチェックし、十分な防寒装備と雨具を携行することが重要です。
休日のドラゴンドラは大変混雑するため、可能な限り朝早く行動を開始することが、待ち時間を減らし一日を有効に使う鍵となります。
アクセス方法と周辺情報
苗場山へのアクセスは、自動車と公共交通機関のいずれでも可能ですが、登山口やドラゴンドラへの直接的なアクセスを考えると、自家用車の利用が最も便利です。
自動車でのアクセス詳細
関越自動車道の湯沢インターチェンジが最寄りのインターチェンジとなります。祓川コースへは、湯沢インターチェンジから国道17号経由で約18キロメートル、登山口手前の祓川登山口駐車場を利用します(有料:普通車1,000円、約100台駐車可能)。
小赤沢コースへは、湯沢インターチェンジまたは塩沢石打インターチェンジから秋山郷方面へ向かいますが、道幅が狭く運転には注意が必要です。小赤沢三合目駐車場は無料で約100台が駐車可能です。
ドラゴンドラへは、湯沢インターチェンジから国道17号を苗場方面へ約30~40分進み、苗場プリンスホテルの駐車場を利用します。駐車場は広大で、秋のシーズン中は無料で利用できることが多いです。
公共交通機関でのアクセス
JR上越新幹線・上越線の越後湯沢駅が玄関口となります。ドラゴンドラへは、越後湯沢駅東口から南越後観光バスの「湯沢-浅貝-西武クリスタル線」に乗車し、「苗場スキー場前」バス停で下車します。所要時間は約40~50分、運賃は片道700円程度です。
秋のシーズン中は、ドラゴンドラの営業開始時間に合わせて早朝の便を確認することが重要です。バスの時刻表は季節によって変更されるため、事前に南越後観光バスの公式サイトで最新情報を確認しましょう。
祓川、小赤沢の両登山口へ直接アクセスする路線バスはありません。越後湯沢駅からタクシーを利用するか、小赤沢へは津南駅から路線バスとタクシーを乗り継ぐ必要があります。
温泉で癒しのひととき
登山や絶景散策の後は、温泉で心身を癒すのが旅の醍醐味です。苗場エリアには、いくつかの魅力的な温泉施設があります。
苗場プリンスホテル「火打の湯」は、日帰りスキーセンター内にあり、宿泊者以外も利用可能な天然温泉です。料金は1,000円で、露天風呂もあり疲れた体を癒すのに最適です。ただし、営業は秋季・冬季限定で、2025年の秋季営業は10月11日から11月8日までと期間が限られているため、事前に確認が必要です。
雪ささの湯は、苗場エリアにある人気の高い日帰り温泉施設で、源泉かけ流しの温泉を楽しめます。営業時間も長く(10:00-21:00)、時間を気にせず利用できるのが魅力です。
苗場プリンスホテルには宿泊者専用の「苗場の湯」もあり、サウナも完備されています。苗場エリアでの宿泊は、全ての施設の中心となる苗場プリンスホテルが最も便利です。
秘境・秋山郷への誘い
小赤沢コースの起点となる秋山郷は、単なる登山口ではありません。「日本の秘境100選」にも数えられる、手つかずの自然と独自の文化が息づく特別な場所です。
中津川の渓谷沿いに点在する集落を結ぶこの地域には、天を突くような柱状節理の絶壁「布岩」、かつての生活道であった吊り橋「見倉橋」、先人たちの労苦が偲ばれる「結東の石垣田」など、見どころが豊富に存在します。
また、屋敷温泉や小赤沢温泉といった素朴な温泉地が点在し、旅の疲れを癒してくれます。健脚な登山者であれば、「第二の谷川岳」の異名を持つ上級者向けの山、鳥甲山(とりかぶとやま)への挑戦も視野に入るでしょう。
時間に余裕があるなら、ぜひ秋山郷にも足を延ばしてみてください。苗場山の登山と組み合わせることで、より深く奥信越の自然と文化に触れる旅が実現できます。
おすすめモデルプラン
これまで紹介してきた情報を基に、目的とスタイルに応じた具体的なモデルプランをご提案します。これらを参考に、あなただけの苗場山の秋の旅を組み立ててください。
山頂湿原を満喫する1泊2日プラン
このプランは、天空の楽園である苗場山頂湿原の草紅葉を、その最も美しい時間帯に堪能するためのプランです。最適な時期は9月下旬から10月上旬となります。
1日目は、午前中に祓川登山口駐車場に到着し、ゆっくりと時間をかけて祓川コースを登ります。午後3時頃に苗場山頂ヒュッテにチェックインし、荷物を置いたら夕日に染まる黄金色の湿原を散策します。山小屋での夕食後は、満天の星空を観賞しましょう。
2日目は、ご来光と共に起床し、朝日に照らされて輝く池塘と湿原の絶景を心ゆくまで楽しみます。朝食後、名残を惜しみながら下山を開始し、麓に下りたら日帰り温泉で汗を流して帰路につきます。
このプランの成否は、苗場山頂ヒュッテの予約にかかっています。計画が決まったら、できるだけ早く予約を確保することが重要です。
ドラゴンドラ紅葉周遊日帰りプラン
このプランは、ドラゴンドラと田代ロープウェーを駆使し、一日で苗場・田代エリアの紅葉を最大限に楽しむプランです。最適な時期は10月下旬となります。
朝一番の新幹線で越後湯沢駅へ、または早朝に車で苗場プリンスホテル駐車場へ向かいます。9時の運行開始と同時にドラゴンドラに乗車し、14号柱の絶景などを楽しみます。ドラゴンドラ山頂駅到着後、別料金のパノラマリフトでさらに上からの眺望を楽しみ、山頂エリアのレストランで昼食をとります。
午後は、らくらくリフトまたは徒歩で田代ロープウェー山頂駅へ移動し、田代ロープウェーで異なる角度からの絶景を楽しみながら下山します。連絡バスで苗場プリンスホテルへ戻り、帰る前に「火打の湯」で日帰り入浴をして旅の締めくくりとします。
休日のドラゴンドラは大変混雑するため、可能な限り朝早く行動を開始することが、待ち時間を減らし一日を有効に使う鍵となります。
苗場・秋山郷2泊3日完全制覇プラン
このプランは、苗場山の二つの顔(登山とゴンドラ)と、秘境・秋山郷の文化の両方を深く体験するプランです。最適な時期は10月中旬となります。
1日目は、午前中に秋山郷に到着し、見倉橋や石垣田などを散策して日本の原風景に触れます。秋山郷の温泉宿に宿泊し、静かな夜を過ごします。
2日目は、早朝に小赤沢3合目登山口から苗場山登山を開始します。険しいが達成感のあるルートを登り、盛りを少し過ぎた山頂湿原の景色を堪能します。下山後、車で苗場エリアへ移動し、苗場プリンスホテルに宿泊します。
3日目は、前日の登山の疲れを癒すように、この日はドラゴンドラの周遊ルートをゆっくりと楽しみます。見頃を迎え始めた山腹の紅葉を空中から満喫し、旅を締めくくります。
体力と時間を要するプランですが、苗場山とその周辺地域が持つ多層的な魅力を最も深く理解できるプランと言えるでしょう。
登山時の注意事項と装備
苗場山の秋は美しい反面、山の天候は常に変わりやすく、特に秋は晴天と悪天候が目まぐるしく入れ替わる季節です。十分な準備と装備が安全な登山の基本となります。
必携の装備リスト
防寒着は必須です。山頂の気温は10度前後まで下がることもあり、風が強い日はさらに体感温度が下がります。フリースやダウンジャケットなどの保温性の高い上着を必ず携行しましょう。
雨具も欠かせません。山の天気は変わりやすく、突然の雨に見舞われることもあります。上下セパレートタイプの防水性の高いレインウェアを準備してください。
登山靴は、滑りにくいソールのものを選びましょう。特に小赤沢コースは濡れた岩や木の根が多く、滑りやすい状態が続くため、グリップ力の高い登山靴が重要です。ゲイター(スパッツ)も、泥濘対策として有効です。
ヘッドランプは、日帰り登山でも必ず携行してください。予定よりも時間がかかり日没を迎える可能性もあるため、万が一に備えることが大切です。
その他、地図、コンパス、十分な水と行動食、救急セット、携帯電話(予備バッテリー含む)なども基本装備として準備しましょう。
天候と登山計画
苗場山の秋は美しい反面、天候の変化には注意が必要です。事前に天気予報をこまめにチェックし、悪天候が予想される場合は無理をせず計画を変更する勇気も大切です。
特に10月下旬以降は、山頂付近で初雪に見舞われる可能性もあります。積雪がある場合は、夏山装備では対応できないため、登山を中止するか、十分な冬山装備を準備する必要があります。
小赤沢コースの危険性は、決して軽視してはいけません。濡れた岩や鎖場が続くため、雨天時や雨天直後は特に危険度が増します。不安がある場合は、祓川コースを選択するか、経験豊富な登山者と一緒に行動することをおすすめします。
登山届の提出
万が一の事態に備えて、登山届(登山計画書)の提出は必ず行いましょう。新潟県警察や長野県警察のオンライン登山届システムを利用すれば、簡単に提出できます。また、家族や友人にも登山計画を伝えておくことが大切です。
まとめ:苗場山で最高の秋を
苗場山の秋は、訪れる者に対して明確な問いを投げかけます。「あなたは、どちらの秋を見たいのか」と。その問いに答えること、すなわち自らの旅の主目的を「山頂の草紅葉」か「山腹の樹林紅葉」かに定めることが、全ての計画の出発点となります。
9月下旬から10月上旬は、山頂湿原の草紅葉がピークを迎える登山者のための黄金期です。自らの足で登り詰めた先に広がる黄金色の湿原と、池塘に映る青空のコントラストは、一生忘れられない思い出となるでしょう。
10月下旬から11月上旬は、山腹の樹林紅葉がピークを迎え、ドラゴンドラからの眺めがまさに絶景となる時期です。日本最長のゴンドラから眺める360度の紅葉は、登山をしない方でも気軽に楽しめる圧巻の体験です。
どちらのプランを選ぶにせよ、事前の計画と準備を万全に行い、自然への敬意を払うことで、苗場山はあなたに一生忘れられない秋の記憶をプレゼントしてくれるでしょう。天空に広がる黄金の楽園、そして燃える龍のように連なる紅葉の回廊。その二つの絶景が、あなたを待っています。
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