雲ノ平・黒部源流テント泊完全ガイド|日本最後の秘境を歩く3泊4日

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雲ノ平・黒部源流テント泊は、北アルプス最深部の標高2500メートル級の溶岩台地と黒部川源流域を、数日かけてテントを背負って縦走する登山スタイルです。「日本最後の秘境」と呼ばれる雲ノ平へはどの登山口からも1日では到達できず、最低3泊4日以上の行程が必要となります。折立または新穂高温泉を起点に、薬師沢小屋・雲ノ平山荘・三俣山荘などのテント場をつなぎ、鷲羽岳・水晶岳・黒部五郎岳といった名峰群と高山植物の楽園を巡るルートは、国内の山岳縦走の中でも別格の体験として知られています。

本記事では、雲ノ平・黒部源流域でのテント泊縦走について、アクセス方法・ルート選択・テント場情報・装備・おすすめの時期・見どころから安全管理までを、最新情報を交えて詳しく解説します。これから初めて挑戦する登山者にも、再訪を計画している経験者にも役立つ内容です。

目次

雲ノ平・黒部源流テント泊とは何か

雲ノ平・黒部源流テント泊とは、北アルプスのほぼ中央部に位置する黒部川源流域を、テントを担いで複数日かけて歩く縦走登山のことです。出発点となる登山口から雲ノ平までは早くても丸1日半以上を要するため、山小屋泊あるいはテント泊を組み合わせた長期行程が必須となります。

このエリアの最大の特徴は、人里から極端に離れた最奥地であることに加え、火山活動で生まれた広大な溶岩台地・透明度の高い源流の渓谷・高山植物の楽園・周囲を囲む3000メートル級の名峰群といった、変化に富んだ景観を一度の山行で味わえる点にあります。重い荷物を背負って何日も歩き続ける覚悟が必要ですが、その先で得られる景色と体験は、他の山域では代えがたいものとなります。

縦走中の宿泊形態としては、雲ノ平山荘などの山小屋に泊まる方法と、テント場でテント泊する方法の二択になりますが、テント泊を選択することで、満天の星空や夜明け前の静寂、雷鳥や小動物との出会いといった、より深く山と関わる時間を持つことができます。

雲ノ平とはどんな場所か

雲ノ平は、富山県富山市に位置する日本最高所の溶岩台地で、標高約2550メートルの広大な平坦地が広がっています。北アルプスの最深部、黒部川の源流域に位置し、東に水晶岳(黒岳)、西に黒部五郎岳、南に鷲羽岳、北に薬師岳という名峰に四方を囲まれた特別な地形です。

この台地の特異な点は、その成り立ちにあります。火山活動によって形成された溶岩台地の上に、高山植物の楽園が広がっており、夏には一面の花畑、秋には草紅葉が台地全体を黄金色に染め上げます。岩と植物が織りなすパッチワーク状の景観は、日本の他のどの山域とも似ていない独自の美しさを持っています。

雲ノ平の庭園群

雲ノ平には「庭園」と呼ばれるポイントが複数点在しています。アルプス庭園・日本庭園・スイス庭園などと名付けられた場所は、それぞれ個性的な景観を持ち、散策するだけで非日常の世界に浸れます。特に日本庭園は岩の合間に植物が自然の芸術を作り出しており、足を止める登山者が後を絶ちません。

雲ノ平山荘

雲ノ平山荘は、この秘境にある唯一の山小屋で、2005年に現在の場所に建て替えられました。環境への配慮を強く意識した運営が行われており、太陽光発電を活用し、食材の多くをヘリコプターで輸送しています。宿泊は完全予約制で、食事の質の高さでも登山者に親しまれている存在です。

黒部源流とは

黒部源流とは、富山湾に注ぐ全長85キロメートルの一級河川である黒部川の最上流部を指す呼称です。日本三大急流の一つに数えられる黒部川の源流は北アルプスの奥深くにあり、鷲羽岳の南側、岩苔乗越のさらに下あたりから最初の一滴が生まれるとされています。

黒部川の源流域は、鷲羽岳・ワリモ岳・水晶岳・雲ノ平・薬師岳・黒部五郎岳に囲まれた標高2000メートル以上の高地にあり、「黒部源流域」と総称されます。手つかずの自然が残る特別な場所として登山者に認識されてきた区域です。

源流域の清流は驚くほど透明で、岩の間を縫うように流れる水は手ですくえるほど清潔です。薬師沢小屋近くの黒部川本流では、エメラルドグリーンに輝く淵が登山者を迎え、その美しさは「黒部の絶景」と形容されることもあります。沢登りの名ルートとして全国的に知られる「赤木沢」も、この源流域の象徴的存在です。

源流域の傾斜は比較的緩やかで流れも穏やかなため、登山道が渓谷沿いを通る区間では、水音を聞きながらゆったりと歩くことができます。この水は下流の黒部峡谷・黒部ダム(黒四ダム)を経て日本海へ流れ込みますが、その壮大な旅の出発点が黒部源流域です。

雲ノ平・黒部源流テント泊の主要アクセスルート

雲ノ平へのアクセスは、主に「折立登山口」(富山県側)と「新穂高温泉登山口」(岐阜県側)の二つが起点となります。どちらからも1日では雲ノ平に到達できないため、最低でも3泊4日以上の行程が必要です。

折立から入るルート

最もスタンダードなのが、折立を起点とするルートです。折立登山口は富山市内から車またはバスでアクセスでき、夏期は有峰林道を通る直通バスも運行されます。

日程区間所要時間の目安
1日目折立→太郎平→薬師沢小屋約7〜9時間
2日目薬師沢小屋→雲ノ平山荘約4〜5時間
3日目雲ノ平→祖父岳→鷲羽岳→双六小屋約8〜10時間
4日目双六小屋→弓折乗越→鏡平→新穂高温泉約5〜7時間

1日目は標高1356メートルの折立から太郎平小屋(標高2373m)まで約5〜6時間で登り、太郎平小屋から薬師沢方面へ進んで薬師沢小屋を目指します。2日目は薬師沢の吊り橋を渡り、急登を経て雲ノ平の台地に上がります。台地に出てからは庭園を散策しながら山荘へ向かう、雲ノ平縦走の核心部となる行程です。

新穂高温泉から入るルート

新穂高温泉を起点とする逆ルートも人気があります。新穂高温泉は岐阜県高山市にあり、各地からのアクセスも良好な登山口です。温泉が豊富なため、登山後にひと風呂浴びてから帰路に就けるという利点もあります。日程の組み方は折立起点の逆順となり、双六小屋・三俣山荘・雲ノ平・薬師沢小屋・太郎平・折立の順に縦走するスタイルが基本です。

アクセス情報

折立への公共交通機関でのアクセスは、東京から新宿発の夜行高速バスで富山駅へ向かい(約7〜8時間)、富山駅から有峰林道を経由するバスで折立へ約2時間という経路が代表的です。名古屋からは新幹線で富山駅まで移動し、富山駅からバスで折立へ向かいます。マイカーの場合は有峰林道を通って折立へ入りますが、有峰林道は夏期のみ通行可で、通行料が必要です。

新穂高温泉へは、名古屋・大阪・東京から高速バスまたは電車で高山駅へ向かい、高山駅から路線バスで新穂高温泉へアクセスします。マイカーの場合は中部縦貫自動車道・松本ICなどから国道158号線を経由するのが一般的な経路です。

雲ノ平のテント場情報

雲ノ平キャンプ場

雲ノ平キャンプ場(雲ノ平テント場)は、雲ノ平山荘から東方向に約700メートル(徒歩約20〜30分)の場所にあります。収容数は約50張で、トイレと水場が整備されています。

2025年シーズンの営業期間は7月10日〜10月15日まで(宿泊)で、2025年4月8日より予約受付が開始されました。2025年は、特定の繁忙期(7月19日・20日、8月9日〜17日、9月13日・14日、9月20日〜22日)のみキャンプ場の予約が必要となり、それ以外の日程は予約不要で利用できる方式が採られました。テント場の利用料金は2025年時点で1人あたり約2500円でした。

2026年の営業期間・料金・予約制度については、雲ノ平山荘の公式ウェブサイトで最新情報を必ず確認することをおすすめします。

山荘とキャンプ場には距離があるため、テント泊で山荘のサービス(食事など)を利用する場合は、その都度移動が必要となります。重い荷物を背負って20〜30分歩くことになるので、山荘で食事を取る予定があれば荷物を軽量化しておくと負担が減ります。

薬師峠キャンプ場

薬師峠キャンプ場は、折立から入るルートの中継地として人気の高いテント場です。太郎平小屋の近くに位置し、薬師岳や雲ノ平へのアクセスの良い拠点となります。水場・トイレが整備されており、雲ノ平までの距離があるルート1日目の宿泊地として定番です。

双六岳キャンプ場

双六小屋に隣接するキャンプ場で、双六岳や鷲羽岳などへの拠点として使われます。収容数が多く、設備も充実しているため、新穂高温泉から入山する場合の重要な中継地点です。

三俣山荘キャンプ場

三俣蓮華岳の直下、三俣山荘に隣接するキャンプ場です。鷲羽岳・水晶岳・雲ノ平へのアクセスに優れ、黒部源流域の中心部に位置します。ここから雲ノ平へは岩苔乗越を経由するルートが一般的で、テントの中から鷲羽岳を眺めるロケーションが魅力となっています。

雲ノ平・黒部源流テント泊のおすすめの時期

雲ノ平・黒部源流域のテント泊に適した時期は、大きく分けて夏(7月中旬〜8月)と秋(9月〜10月上旬)の二つの季節です。それぞれに異なる魅力があり、自分の目的に合わせて選ぶとよいでしょう。

夏の雲ノ平(7月中旬〜8月)

夏は高山植物の最盛期で、雲ノ平の台地は花畑に彩られます。チングルマ・ハクサンイチゲ・クルマユリ・コイワカガミなど、多彩な高山植物が一斉に咲き誇り、その密度と種類の豊富さは北アルプスの中でも随一です。日が長く行動しやすい反面、混雑も激しくなる傾向にあります。

特に7月後半から8月にかけての連休は、テント場が混み合うことも珍しくありません。予約が必要な日程は早めに押さえておくことが大切です。また、夏はブヨなどの虫対策も必要となります。

秋の雲ノ平(9月〜10月上旬)

秋の雲ノ平は、草紅葉の美しさで知られています。チングルマの葉が真っ赤に染まり、ヒメクロマメノキやミヤマヤナギの黄葉が加わって、台地全体がパッチワーク状の鮮やかな色彩に包まれます。岩と紅葉が織りなすしみじみとした色合いは、この時期の雲ノ平を象徴する景色です。

紅葉のピークは例年9月中旬から下旬にかけてで、夏に比べて比較的人が少なく、静かな雲ノ平を体験しやすい時期となります。ただし、朝晩の冷え込みが強くなり、10月上旬になると降雪の可能性もあります。防寒装備をしっかり準備してください。

雲ノ平・黒部源流域の主な見どころ

雲ノ平の庭園群

雲ノ平には「日本庭園」「アルプス庭園」「スイス庭園」などと呼ばれる景勝地が点在しています。いずれも岩と高山植物が織りなす独特の景観で、歩くたびに新しい発見があります。特に日本庭園は、岩の合間に植物が自然の美を表現しており、多くの登山者が立ち止まる場所です。

祖父岳(じいだけ)

雲ノ平の北東に位置する祖父岳は標高2825メートルで、雲ノ平から鷲羽岳・水晶岳方面へ向かう際に通過するピークです。山頂からは雲ノ平全体と周囲の名峰を一望できる360度の大展望が広がり、雲ノ平最高の展望台ともいわれます。

水晶岳(黒岳)

標高2986メートルの水晶岳は、北アルプスの最奥部にある難峰で、縦走でしか到達できないことで知られています。山頂は黒色の岩石で覆われており、「黒岳」とも呼ばれます。山頂からの展望は圧倒的で、槍ヶ岳・穂高岳・立山・剱岳など北アルプスの主要な山々を見渡せます。

鷲羽岳

標高2924メートルの鷲羽岳は、黒部源流の真上に位置する独立峰的な存在感のある山です。山頂から鷲羽池越しに槍ヶ岳を望む景色は、北アルプスを代表する絶景のひとつに数えられることもあります。黒部源流の水はこの山の南斜面から発生するとされており、源流登山の象徴的なピークでもあります。

薬師沢小屋と黒部川本流

薬師沢小屋は、黒部川本流と薬師沢の合流点に建つ山小屋で、エメラルドグリーンの清流が目の前を流れます。吊り橋を渡ると雲ノ平への急登が始まり、小屋前の渓流の美しさは折立ルートのハイライトの一つです。岩魚が棲む渓谷でもあり、釣りを楽しむ目的で訪れる登山者もいます。

高天原温泉

雲ノ平の南に位置する高天原(たかまがはら)温泉は「日本一遠い秘湯」として知られる名湯です。どの登山口からも最短で10時間以上かかる最奥地にあり、そこに湧く天然温泉は登山者にとって最高のご褒美となります。雲ノ平から高天原山荘まで往復4〜5時間かかるため、日帰りで立ち寄る場合は体力配分への注意が必要ですが、そこまで足を運ぶ価値は十分にあります。白濁した硫黄泉が縦走で疲れた体を癒してくれます。

三俣蓮華岳と黒部五郎岳

縦走ルートに組み込まれることの多い三俣蓮華岳は標高2841メートルで、富山・岐阜・長野の三県境に立つ山です。山頂からは鷲羽岳・水晶岳・黒部五郎岳・双六岳などが一望でき、雲ノ平の台地も眺められます。

黒部五郎岳(標高2840m)はその独特のカール(圏谷)と広大な山頂台地が特徴で、カール底にはミズバショウやハクサンコザクラなどの花畑が広がります。鎖場などの難所は少ない一方、折立からのアプローチが長いため体力を要する山として知られています。カール内を歩く独特の登山道は、北アルプス屈指の名ルートと評されています。

雲ノ平テント泊に必要な装備

雲ノ平・黒部源流域のテント泊縦走は、最低でも3泊4日以上の行程となるため、それなりの体力と装備が必要です。装備選びは縦走の快適さと安全性を大きく左右します。

ザックの容量

3泊4日のテント泊縦走では、50〜65リットルのザックが標準的です。テント・シュラフ・マット・食料・水・衣類・雨具などを詰めると、合計重量は12〜18キログラム程度になることが多くなります。体力に自信がない場合は食料を山小屋の食事に頼ることで荷物を軽量化できますが、雲ノ平ではテント場と山荘が離れているため、その分の移動も考慮する必要があります。

テント選び

雲ノ平キャンプ場は標高2550メートルに位置し、夏でも夜間の気温は10度以下になることが多い環境です。秋は0度近くまで下がることもあります。耐風性と保温性を持つテントを選ぶことが基本で、シングルウォールのテントは結露が激しく、クッカー使用時の換気不足にも注意が必要なため、ダブルウォールのテントが推奨されます。

寝袋とマット

夏でも快適使用温度3〜5度程度の寝袋を用意するのが基本です。秋(9月以降)は快適使用温度0度以下のものが安心できる選択肢となります。マットはスリーピングパッドとして必須で、断熱性の高いものを選んでください。

レインウェアと防寒着

山の天気は変わりやすく、特に北アルプスの源流域では突然の雨に見舞われることが多いものです。上下セパレートのゴアテックスなど高機能レインウェアは必須装備で、濡れた場合の予備の衣類も忘れずに準備してください。秋期はニット帽・手袋・防寒着の重要性が一段と増します。

その他の必需品

ヘッドライトと予備電池、ファーストエイドキット、地図とコンパス(またはGPS機器)、熊鈴、日焼け止め、夏期は虫除けスプレー、サングラス、ビニール袋(ゴミ袋や防水に活用)なども忘れず準備しましょう。

黒部源流環状縦走プラン(4泊5日・折立起点)

雲ノ平を核として黒部源流域を周回する「環状縦走」は、この地域の魅力を最大限に味わえるルートとして人気が高いプランです。標準的な4泊5日の例を以下に示します。

日程区間コースタイム
1日目折立→太郎平小屋→薬師峠キャンプ場約6〜7時間
2日目薬師峠→薬師沢小屋→雲ノ平キャンプ場約6〜8時間
3日目雲ノ平→高天原温泉往復→雲ノ平キャンプ場約4〜5時間+散策
4日目雲ノ平→祖父岳→岩苔乗越→黒部源流→三俣山荘キャンプ場約5〜6時間
5日目三俣山荘→鷲羽岳→双六岳→弓折乗越→新穂高温泉約9〜11時間

1日目は太郎平小屋で休憩しながら、薬師峠キャンプ場でテントを張ります。翌日の長い行程に備えて早めに就寝するのがよいでしょう。2日目は薬師沢小屋近くの清流の美しさを堪能してから、急登を登って雲ノ平へ向かい、日本庭園・アルプス庭園を散策しながらキャンプ場に到着します。

3日目は雲ノ平で連泊し、サブザックで高天原温泉を往復します。日本一遠い秘湯を体験した夕方は、雲ノ平の庭園散策を楽しむのが定番です。4日目は祖父岳から黒部源流碑を経て三俣山荘へ向かい、岩苔乗越付近で黒部川の最初の一滴が生まれる場所を実感できます。最終日は鷲羽岳に登頂し、双六岳経由で新穂高温泉へ下山する長丁場となるため、早朝出発が基本です。

テント泊の食料計画

雲ノ平・黒部源流域での3泊4日以上のテント泊縦走では、食料計画が行程の快適さを大きく左右します。「軽量・高カロリー・手軽」の三原則を意識した準備が重要です。

行動食としては、ミックスナッツ・ドライフルーツ・エネルギーバー・羊羹・チョコレート・ゼリー飲料などが定番となります。これらはそのまま食べられて携行も容易で、山行中に少量ずつ食べ続けることでエネルギーを維持できます。

朝食・夕食はテント場での調理が基本で、軽量なガスストーブとクッカーを準備します。アルファ米(お湯を入れるだけで食べられる)とフリーズドライ食品の組み合わせが定番で、最近のフリーズドライ食品はカレー・シチュー・親子丼・ラーメンなど多彩なメニューが用意されています。重量が気になる場合は、重いパスタや缶詰は初日に消費し、日程が進むにつれて軽量な食材に切り替える方法が有効です。

水については、雲ノ平キャンプ場・薬師峠キャンプ場・三俣山荘キャンプ場のいずれにも水場があります。行動中の水分は沢水を活用できる場面もありますが、飲用には登山道の指定された水場を使うのが基本です。ゴミは必ず自分で持ち帰り、雲ノ平山荘などでは環境保全のためゴミ持ち帰りが強くお願いされています。

テント泊縦走に必要な体力トレーニング

雲ノ平・黒部源流域のテント泊縦走に挑戦するには、それなりの体力と経験が必要です。いきなり雲ノ平に挑戦するのは危険なので、段階的なステップアップが基本となります。

まずは日帰り登山でコースタイム5〜6時間程度の山を複数回経験し、次に小屋泊で2泊3日程度の縦走を経験するのが安全な進め方です。テント泊装備の重さに慣れるため、近場の山でテント泊を1〜2回経験してから本番に臨むのが理想的です。

日常的なトレーニングとしては、ウォーキングやジョギング・階段昇降などの有酸素運動が効果的です。特に重いザックを背負っての登山を想定するなら、日常的に重めのリュックを背負ったウォーキングを取り入れると、肩や腰への負担に慣れやすくなります。

雲ノ平の前ステップとして経験しておきたい山として、燕岳・常念岳の縦走(2泊3日テント泊)、八ヶ岳縦走(テント泊)、槍ヶ岳などが挙げられます。これらの山でテント装備を担いで歩く経験を積んでから、雲ノ平に挑戦するのが安心です。

雲ノ平・黒部源流テント泊の安全上の注意点

雲ノ平・黒部源流域は北アルプスの最奥地であり、いったん入山すれば容易には下山できない場所です。以下の注意点をしっかり守って安全に楽しんでください。

雲ノ平テント泊縦走は、1日あたり6〜12時間の行動時間を必要とする日が複数含まれます。日帰り登山や小屋泊での山行経験を積んだうえで挑戦することが大切で、初めてテント泊登山をする人は、まず低山や日数の少ない山行でテント泊に慣れてからチャレンジしてください。

山の天気は平地と大きく異なり、急変することがあります。出発前には必ず最新の山岳気象情報を確認し、悪天候が予想される場合は無理に行動しないことが原則です。北アルプスは午後に雷雨が発生しやすいため、午前中のうちに行動を終える計画が基本となります。

雲ノ平周辺は携帯電話の電波が届きにくいエリアが多いため、緊急連絡手段として山岳保険への加入と、入山前の登山計画書の提出(電子申請または登山口のポストへの投函)を必ず行ってください。北アルプスには熊が生息しているため、行動中は熊鈴を装着し、食料は匂いが漏れないよう密封して保管します。テント場での食料管理にも配慮してください。

標高2500〜3000メートルの高地では高山病のリスクもあります。十分な水分補給、急激な高度上昇を避けたゆっくりとしたペース、症状が出た場合の早期下山判断が大切です。

下山後の楽しみ ─ 温泉と食事

長い縦走を終えた後の温泉は、登山者にとって最大のご褒美のひとつです。下山口によって楽しめる温泉が異なります。

新穂高温泉側へ下山した場合、奥飛騨温泉郷の一角である新穂高温泉には日帰り入浴施設が複数あります。「新穂高の湯」は無料の露天風呂として有名で、蒲田川沿いの開放的な湯が旅の疲れを癒してくれます。有料施設では「ひがくの湯」などが日帰り入浴を受け付けており、山岳エリアとは思えない充実した温泉施設が揃っています。新穂高温泉には旅館やホテルも多く、登山後の一泊もおすすめで、翌日ゆっくり帰路に就くことで体力を十分に回復できます。

折立側へ下山した場合は、折立近辺の亀谷温泉(白樺の湯)が下山後の温泉として人気です。有峰林道沿いにあり、折立からの帰路に立ち寄りやすい立地となっています。富山市内まで下りてくれば、白エビや鱒寿司、ブリなどの海の幸を楽しみながら、縦走の達成感を噛みしめる時間を持てます。

雲ノ平・黒部源流テント泊についてよくある疑問

雲ノ平・黒部源流テント泊については、初めて挑戦する登山者からよく寄せられる疑問がいくつかあります。

最低限必要な日数はどのくらいかという問いに対しては、3泊4日が最短で、ゆとりを持って楽しむなら4泊5日以上が望ましい答えになります。1日では到達できない場所であり、行動時間の長い日が複数あるため、日程に余裕を持たせることが安全と満足度の両方につながります。

予約は必要かという点については、2025年シーズンの雲ノ平キャンプ場は特定の繁忙期のみ予約必須で、それ以外は予約不要という運用が行われました。2026年については営業期間や予約制度が変更される可能性があるため、雲ノ平山荘の公式ウェブサイトで最新情報を確認してから計画を立ててください。

初心者でも挑戦できるかという疑問もよく聞かれますが、雲ノ平・黒部源流域は北アルプスの中でも難度が高く、テント泊縦走の経験と相応の体力が前提となります。日帰り・小屋泊・短めのテント泊縦走を順に経験してから挑戦することが推奨されます。

雨天時の判断はどうすべきかという点については、午後の雷雨や急な悪天候が発生しやすい地域のため、悪天候予報が出ている場合は日程変更や入山見送りを検討する柔軟さが安全につながります。山行中であっても、悪天候時には停滞日を設ける勇気が必要です。

まとめ

雲ノ平と黒部源流域は、日本の山岳地帯でも特別な場所です。アクセスに時間がかかり、体力と準備を要しますが、それを乗り越えた先にある景色と体験は、他のどの山でも得られないものがあります。広大な溶岩台地に広がる庭園、黒部川の清流、周囲を囲む北アルプスの名峰群、そして日本一遠い秘湯・高天原温泉。これらが一度の縦走で味わえるエリアは、国内では雲ノ平・黒部源流域をおいて他にありません。

テントを担いで何日も歩き続けることで、現代社会の喧騒から完全に切り離された世界に身を置くことができます。満天の星空の下、テントの中でシュラフに包まれながら聞く沢の音は、一生忘れられない体験になるでしょう。夜明け前に目を覚まし、ヘッドライトを灯してテントから顔を出すと、漆黒の空に無数の星がちりばめられ、山のシルエットがそれを背景に浮かび上がります。この瞬間のためだけに、重い荷物を担いでここまで来る価値があると感じる登山者は少なくありません。

雲ノ平は環境保護の観点からも大切にされてきた場所です。訪れる一人ひとりが自然への敬意を忘れず、ゴミを持ち帰り、植生を踏み荒らさず、静かにその場の空気を感じながら歩くことが、次の世代にもこの秘境を引き継ぐための条件となります。これから挑戦したい方は、まず体力作りと登山経験を積むところから始め、十分な準備を整えたうえで、いつかあの秘境の台地に立つ日を目指してみてください。

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