立山黒部アルペンルートは、長野県大町市の扇沢駅から富山県立山町の立山駅までを結ぶ総延長37.2kmの山岳観光ルートで、標高2,450mの室堂を最高地点として6種類の乗り物を乗り継ぎながら北アルプスの絶景を楽しめる世界有数の観光名所です。黒部ダムをはじめとする見どころに加え、初心者から経験者まで楽しめる多彩な周遊ハイキングコースが整備されており、室堂平の散策から雄山登山まで、訪れる人の体力や目的に応じた山歩きを満喫できます。
立山黒部アルペンルートの魅力は、3,000m級の山々が連なる雄大な景観と、それを手軽に体験できるアクセスの良さにあります。ケーブルカーやロープウェイ、電気バスなど個性豊かな乗り物に乗りながら、みくりが池の神秘的な青い湖面、日本一の高さを誇る黒部ダムの迫力ある放水、弥陀ヶ原に広がるラムサール条約登録湿地など、次々と現れる絶景に出会うことができます。また、国の特別天然記念物であるライチョウや可憐な高山植物との出会いも、このルートならではの体験です。
この記事では、立山黒部アルペンルートの基本情報から各エリアのハイキングコース、黒部ダムの観光スポット、季節ごとの見どころ、服装や持ち物のアドバイスまで、周遊ハイキングを楽しむために必要な情報を詳しく解説していきます。

立山黒部アルペンルートとは
立山黒部アルペンルートは、北アルプスを東西に横断する日本を代表する山岳観光ルートです。長野県側の扇沢駅を起点に、関電トンネル電気バス、黒部ケーブルカー、立山ロープウェイ、立山トンネル電気バス、立山高原バス、立山ケーブルカーという6種類の乗り物を乗り継ぎながら、富山県側の立山駅まで移動することができます。
このルートの最高地点は標高2,450mに位置する室堂で、ここを中心にさまざまなハイキングコースが放射状に広がっています。気軽な散策路から本格的な登山コースまで難易度も多様で、観光目的の方から登山愛好家まで幅広い層に親しまれています。
2025年シーズンの営業情報
2025年度の立山黒部アルペンルートは、4月15日から11月30日までの期間で営業が行われました。冬季は豪雪のため閉鎖されており、毎年春の開通時には「雪の大谷ウォーク」を目当てに多くの観光客が訪れます。
2025年シーズンからの大きな変更点として、室堂から大観峰間でトロリーバスに代わり「立山トンネル電気バス」の運行が開始されました。日本の電気バス運行としては最高所となる標高2,450mの地点を走行する画期的な取り組みで、環境に配慮した次世代の交通手段として注目を集めました。
アルペンルートを彩る6つの乗り物
立山黒部アルペンルートでは、それぞれ個性的な6種類の乗り物を乗り継いで移動します。乗り物自体が観光の楽しみとなっており、移動時間も飽きることがありません。
立山ケーブルカーは、立山駅から美女平までを結ぶ乗り物で、標高差500mを約7分で昇降します。最大斜度29度の急斜面を2台の車両がつるべ式に運行する仕組みで、一気に高度を上げていく迫力を体感できます。
立山高原バスは、美女平から室堂までの標高差1,500mの高原を約50分かけて走行します。全員着席制なので、ゆったりと車窓からの景色を楽しむことができ、途中では称名滝や弥陀ヶ原の美しい景観を眺めることができます。
立山トンネル電気バスは、2025年より新たに導入された乗り物です。立山の主峰・雄山の直下を貫く全長3.7kmのトンネルを約10分で走行し、室堂と大観峰を結んでいます。
立山ロープウェイは、大観峰から黒部平までを結ぶ空中散歩が楽しめる乗り物です。景観と環境保全の観点から、大観峰と黒部平の間には支柱が1本もありません。これは冬季の厳しい雪崩から設備を守るための設計で、約7分間の乗車中は360度の大パノラマを楽しむことができ、まさに「動く展望台」と呼ばれています。
黒部ケーブルカーは、黒部平から黒部湖までを結ぶ、全線地下を走行する珍しいケーブルカーです。自然環境を守りながら、急斜面を安全に下っていきます。
関電トンネル電気バスは、黒部ダムから扇沢までを約16分で走行します。黒部ダム建設時に掘削された関電トンネルを通り、途中では建設工事最大の難所だった「破砕帯」の区間も通過します。
料金と購入方法
2025年の運賃は2023年と同額に据え置かれていました。主な区間の片道料金として、電鉄富山駅から扇沢駅までが12,170円、立山駅から扇沢駅までが10,940円、電鉄富山駅から黒部湖往復が18,940円となっています。6歳未満は無料です。なお、富山地方鉄道は2025年4月1日より値上げがあり、富山駅から立山駅までの片道料金は1,230円から1,420円に変更されました。
きっぷの購入方法は、「WEBきっぷ」による事前予約がおすすめです。乗車予約ができ、当日は自動受取機でスムーズに受け取ることができます。当日乗車券はアルペンルート各駅のきっぷ売り場で購入可能で、有効期間は購入後5日間となっています。
室堂エリアの周遊ハイキングコース
室堂は標高2,450mに位置する、アルペンルートの中心地です。立山駅からケーブルカーと高原バスを乗り継いで約1時間で到着でき、3,000m級の山々と高山植物、紅葉の絶景を手軽に楽しめる日本有数の山岳リゾート地として知られています。
室堂の雪解けは例年7月上旬、初雪は9月下旬から10月上旬で、夏山シーズンは短いながらも多くのハイカーや観光客で賑わいます。国の特別天然記念物であるライチョウや、数々の高山植物を観賞できることでも人気を集めています。
室堂平周遊コースの魅力
室堂平周遊コースは、所要時間約2時間15分の初級者向けルートです。室堂ターミナルを出ると、目の前には雄大な立山連峰の山並みが広がり、このコースでは室堂平を一周しながら様々な見どころを巡ることができます。
まず訪れたいのが「玉殿の湧水」です。立山の雪解け水が長い年月をかけて濾過された、冷たく澄んだ名水を汲むことができます。そこから石畳の遊歩道を歩いて、高山植物が豊富な室堂平を散策していきます。
コース途中では、日本最古の山小屋「立山室堂」や神秘的な「玉殿岩屋」を見学できます。また、エンマ台展望台からは眼下に硫黄の煙が立ち上る「地獄谷」を望むことができ、立山の火山としての一面を感じることができます。さらに足を延ばせば、雷鳥沢のキャンプ場まで行くことも可能です。
整備された遊歩道なので、トレッキングシューズがあれば初心者でも安心して歩けます。ただし、標高が高いため高山病には注意が必要で、ゆっくりとしたペースで歩くことをおすすめします。
みくりが池周遊コースで絶景を堪能
みくりが池周遊コースは、所要時間約1時間の初級者向けルートで、室堂エリアで最も人気のあるコースの一つです。
みくりが池は、室堂ターミナルから片道約15分の場所にあります。約1万年前の噴火口跡に水が溜まってできた火山湖で、周囲630m、水深15mを誇ります。日本アルプスの湖沼の中では最も深く、「北アルプスで最も美しい火山湖」と称されています。
例年6月までは深い雪で覆われていますが、7月から10月にかけては紺碧の湖面に雄大な立山連峰を映し出し、息をのむような美しさを見せてくれます。特に風のない日の早朝は、鏡のような水面に山々が映り込む絶景が楽しめます。
みくりが池の周辺にはライチョウの住処となるハイマツが群生しているため、運が良ければライチョウに出逢えるかもしれません。5月から6月は縄張りを見渡すために岩や木の上にいることが多く、観察しやすい時期です。
また、みくりが池のほとりには「みくりが池温泉」があります。標高2,410mに位置する日本一高所の天然温泉で、源泉は地獄谷にあります。無加水・無加温の100%掛け流しで、白く濁る硫黄の香りのお湯を楽しめます。ハイキングの疲れを癒すのに最適なスポットです。
室堂山展望台コースからの眺望
室堂山展望台コースは、所要時間約1時間30分の初級から中級向けルートです。室堂平を一望できる「室堂山展望台」への往復コースで、展望台からは室堂平はもちろん、遠く北アルプスの山々まで見渡すことができます。晴れた日には素晴らしい眺望が広がり、登った甲斐を感じられるコースです。
地獄谷の荒涼とした風景
立山の地獄谷は日本の三大霊場の一つとされ、立山信仰の人々が硫化水素の噴気を拝んだ場所です。熱水が湧き出す荒涼とした谷間にいくつもの噴気が上がり、硫黄の匂いがたちこめています。
かつては遊歩道が整備され間近で見学できましたが、2011年から有毒の亜硫酸ガス濃度の上昇が確認されたため、現在は通行禁止となっています。みくりが池温泉の北側にあるエンマ台展望台から、地獄谷の荒涼とした風景を安全に眺めることができます。
弥陀ヶ原・天狗平エリアのハイキングコース
弥陀ヶ原は、室堂の西に広がる標高約1,600mから2,100mに位置する溶岩台地上の高層湿原です。東西9km、南北3kmという広大なエリアで、2012年にはラムサール条約湿地に登録されました。大日平とともに、国内で最も標高の高いラムサール条約登録地となっています。
弥陀ヶ原の特徴的な景観として、「ガキの田」と呼ばれる約3,000個もの池塘が点在しています。これらの小さな池や水たまりが織りなす風景は、どこか神秘的な雰囲気を醸し出しており、訪れる人を魅了します。
ベストシーズンは6月下旬から8月上旬で、ワタスゲやゼンテイカ(ニッコウキスゲ)などの高山植物が咲き乱れます。また、9月中旬からは紅葉も見逃せません。
弥陀ヶ原の散策コース
内回りコースは、所要時間約40分の初級者向けルートです。北に大日連山を望む広大な湿原を散策するコースで、弥陀ヶ原ホテルを発着地とし、湿原に敷かれた木道を歩いていきます。トレッキング初心者にもおすすめで、可憐な高山植物と「ガキ田」と呼ばれる池塘の風景を楽しめます。
外回りコースは、所要時間約1時間20分の初級から中級向けルートです。内回りコースからさらに足を延ばすルートで、「ガキの田広場」から真っすぐ進み、「一の谷分岐」「追分分岐」を回って弥陀ヶ原ホテルへ戻ります。より広いエリアの湿原を楽しむことができます。
カルデラ展望台コースは、所要時間約40分の初級者向けルートです。弥陀ヶ原ホテルから往復するコースで、カルデラ展望台からは眼下に立山噴火口跡が陥没してできた立山カルデラを望むことができます。火山活動の痕跡を間近に感じられる迫力ある景観が広がります。
弥陀ヶ原から室堂への縦走コース
弥陀ヶ原から室堂への縦走コースは、所要時間約3時間から3時間30分の中級者向けルートです。室堂ターミナルから弥陀ヶ原まで歩くコースで、室堂からは約600mの下り、弥陀ヶ原で約120mの登り下りがあります。
ルートは「室堂ターミナル→みくりが池→天狗平→弥陀ヶ原→展望台→弥陀ヶ原バス停」となります。弥陀ヶ原から天狗平間は約4.9kmで標高差320m、天狗平から室堂は約1.6kmで標高差150mです。天狗平から室堂までの間は比較的平らな道が多く、軽い散策にも向いています。
注意点として、かつて立山登山で一番の難所と言われた一ノ谷の鎖場があります。7月上旬まで雪が残ることがあり、木道が滑りやすい箇所もあるため、しっかりとした装備で臨むことをおすすめします。
雄山登山コースで3,000m峰に挑戦
立山は北アルプス(飛騨山脈)の北部に位置する山で、雄山(標高3,003m)、大汝山(標高3,015m)、富士ノ折立(標高2,999m)の3つの峰の総称です。古くから山岳信仰の山として崇められ、日本の三大霊山のひとつに数えられています。
北アルプスの山の中では比較的難易度が低く、室堂から登山を開始するため、初心者でも日帰りで山頂を目指すことができます。
室堂から雄山への日帰りコース詳細
室堂から雄山への日帰りコースは、往復約3時間25分、初級から中級向けのルートです。登りは室堂ターミナルから雄山まで約2時間、下りは雄山から室堂ターミナルまで約1時間30分を見込みます。
室堂から一ノ越までの区間は約1時間の行程です。室堂ターミナルから一ノ越までは、石畳の遊歩道を歩きます。傾斜が次第にきつくなってきた場所に、小さな祠「祓堂」が祀られています。標高2,700mの「一ノ越」には山小屋「一ノ越山荘」があり、トイレも完備されています。ここからは後立山連峰や八ヶ岳、常念岳、槍ヶ岳や穂高連峰などの絶景が広がります。
一ノ越から雄山までの区間は約1時間の行程です。一ノ越から雄山山頂までは、岩場の急登となります。大小の石が混在するガレ場で、浮き石や落石の危険があるため、十分な注意が必要です。足元だけでなく頭上にも注意を払いながら登りましょう。
下りは登り以上に危険なため、慎重に下山することが重要です。岩場では三点支持を心がけ、浮き石を踏まないよう注意してください。
雄山登山の注意点
雄山登山は比較的難易度が低いとはいえ、3,000m級の高山です。いくつかの重要な注意点があります。
高山病対策として、急激に標高を上げるため、高山病の症状が出やすい環境であることを認識しておく必要があります。ゆっくりとしたペースで歩き、こまめに水分を取りましょう。頭痛やめまいなどの症状が出たら、無理をせず下山してください。
天候の変化にも注意が必要です。山の天気は変わりやすく、午後になると雷雲が発生することもあります。早朝から登山を開始し、昼過ぎには下山できるようスケジュールを組みましょう。
装備については、トレッキングシューズ、レインウェア、防寒着は必須です。日差しが強いため、帽子やサングラス、日焼け止めも忘れずに準備してください。
黒部ダムの観光スポットと見どころ
黒部ダムは、富山県立山町を流れる黒部川に建設された水力発電専用のダムです。標高約1,470mに位置し、国内最大規模のアーチ式ダムとして知られています。
堰堤の高さは186mで日本一を誇り、堤頂長492mもアーチ式コンクリートダムとしては日本一です。総貯水量は約2億立方メートル、東京ドーム約161杯分の水を蓄えています。
迫力の観光放水
黒部ダムの最大の見どころが観光放水です。2025年シーズンは6月26日から10月15日まで実施されました。高さ186m、長さ492mの堤から毎秒10トン以上の水が吹き出す大迫力の光景を間近で楽しめます。
ダム展望台は、階段220段を上がった先にある標高1,508mの展望台です。立山連峰をはじめとする北アルプスの大パノラマを楽しめます。
レインボーテラス・新展望広場は、観光放水を最も近い場所で観ることができるスポットです。毎秒10トン以上の放水をほぼ真横から体感でき、晴れた日には放水に虹がかかることもあります。
放水観覧ステージは、黒部ダムレストハウス前からバリアフリー通路で行くことができ、車いすやベビーカー利用の方も容易にアクセス可能です。堰堤とほぼ同じ高さで迫力の放水を楽しめます。
黒部ダム建設の歴史
黒部ダムは1956年(昭和31年)に着工し、1963年(昭和38年)6月5日に完成しました。7年の歳月と延べ1,000万人の作業員、当時の関西電力資本金の5倍にあたる513億円という巨額の費用を投じた世紀の大工事でした。
戦後の日本、特に関西地方では深刻な電力不足が社会問題となっていました。豊富な水量と大きな落差から水力発電の適地とされながら、厳しい自然条件により建設が困難とされていた黒部川に、関西電力は挑戦を決意したのです。
最大の難関は「破砕帯」との戦いでした。1957年5月、大町トンネル(現・関電トンネル)の工事中、入口から約1,600mの地点で破砕帯に遭遇しました。破砕帯とは、岩盤の中で岩が細かく割れ、地下水を溜め込んだ軟弱な地層のことです。最大毎秒660リットルもの地下水と大量の土砂が噴き出し、工事の続行が不可能な状態に陥りました。
わずか80mの破砕帯を突破するのに7ヶ月もの苦闘を要しました。水抜きトンネルを掘るなど、当時の土木技術の粋を結集し、現場の労働者たちの熱い思いでついに破砕帯を突破したのです。
この世紀の大工事は171名もの殉職者を出しました。うち87名は雪崩の被害によるものです。冬季はマイナス20度にもなる極寒の中、作業は続けられました。殉職者の方々を悼む慰霊碑が右岸に建てられており、彫刻家・松田尚之氏による「六体の人物像」と「尊きみはしらに捧ぐ」という言葉、殉職者全員の名前が刻まれています。
2025年に開催された特別イベント
2025年シーズンには、黒部ダムでいくつかの特別イベントが開催されました。
星空鑑賞ツアーは、通常は見ることのできない暗闘の中、幻想的にたたずむ黒部ダムと満天の星空を鑑賞できるツアーでした。2025年は6月14日、7月5日、8月21日、9月6日に開催されました。
破砕帯見学ツアーは、黒部ダム建設工事において最も困難を極めた関電トンネル内の破砕帯区間(約80m)を歩いて見学するツアーでした。一般の方は降り立つことができない関電トンネル内を歩き、破砕帯から出る湧き水に触れるなど、貴重な体験ができました。2025年は7月12日、8月8日、9月27日に開催されました。
黒部の太陽展示では、2017年に閉館した石原裕次郎記念館で展示されていた映画『黒部の太陽』関連の展示品が、黒部ダム新展望広場特設会場で公開されました。
大観峰・黒部平エリアの絶景スポット
大観峰は立山連峰の断崖に位置する駅で、標高2,316mにあります。駅の屋上には展望台「雲上テラス」が設置されており、アルペンルート随一の絶景を楽しむことができます。
テーブルや椅子が設置されているので、休憩しながら黒部湖や後立山連峰の雄大な景色を堪能できます。特に秋の紅葉シーズンには、眼下に広がる「タンボ平」が赤や黄色に染まり、息をのむ美しさです。
タンボ平の紅葉
大観峰から黒部平へ向かうロープウェイからは、眼下にタンボ平の絶景が広がります。紅葉の見ごろは例年10月上旬から中旬頃で、緩やかな斜面一面が赤や黄色、オレンジに染まります。
この時期には「三段紅葉」と呼ばれる現象も楽しめます。高山には雪、中間に紅葉、山麓には緑という三層の景色が同時に見られる、贅沢な眺めです。
黒部平からの眺望
標高1,828mに位置する黒部平は、立山連峰と黒部峡谷の両方を同時に望むことができるビュースポットです。パノラマテラスからの眺めは格別で、10月上旬から中旬にかけて周囲の山々が美しく紅葉します。
また、黒部平には高山植物観察園があり、立山の高山植物を間近で観察することができます。ロープウェイやケーブルカーの待ち時間を利用して、散策を楽しむのもおすすめです。
雪の大谷ウォークで巨大な雪壁を体験
標高2,450mの室堂周辺は世界有数の豪雪地帯です。特に吹きだまりのため積雪が多くなる「大谷エリア」を通る道路を除雪してできるのが、巨大な雪の壁「雪の大谷」です。
通常はバスでしか通ることができない区間ですが、春の開通直後から6月下旬までは徒歩で楽しむことができます。約500mにわたる雪壁区間を20分ほどかけて歩く「雪の大谷ウォーク」は、毎年多くの観光客で賑わいます。
2025年の雪の大谷
2025年の雪の大谷ウォークは、4月15日から6月25日まで開催されました。2025年の雪壁の高さは16m(4月14日現在)で、昨年の14mより2m高くなっていました。
記録が残っている約30年間のデータによると、最も高かった年は2000年(平成12年)の20mでした。雪解けが進むと壁の高さも低くなっていくため、より高い壁を見たい場合は開通直後がおすすめです。
雪の大谷の楽しみ方
雪壁を背景にした写真撮影は定番の楽しみ方です。巨大な雪の壁と比較することで、そのスケールの大きさを実感できます。
また、雪壁には年輪のような模様が見えることがあります。これは積雪の層を示しており、その年の降雪の様子を読み取ることができます。ガイドの解説を聞きながら歩くと、より深く雪の大谷を楽しめます。
高山植物とライチョウとの出会い
立山黒部アルペンルートでは、貴重な高山植物やライチョウに出会うことができます。これらの動植物との出会いも、このルートの大きな魅力の一つです。
ライチョウについて
ライチョウは昭和30年に国の特別天然記念物に指定された貴重な鳥です。室堂平周辺には約280羽(平成23年調べ)のライチョウが生息しており、霊山立山では古くから「神の使い」として大切にされてきました。
ライチョウは季節によって羽の色が変化します。冬は全身真っ白、夏は褐色の保護色に変わります。人をあまり恐れない性格で、運が良ければ間近で観察することができます。
観察のベストシーズンは5月から6月で、縄張りを見渡すためにみくりが池周辺の岩や木の上にいることが多い時期です。ひな連れの親子は天敵から逃れるため、ハイマツの周辺で餌を取っていることが多くなります。
ライチョウを見かけたら、静かに見守ることがマナーです。大きな声を出したり、追いかけたりすることは避けてください。
高山植物の魅力
高地という特殊な環境で育つ高山植物は、低地の植物とは異なる趣があります。空気が薄く、太陽光線の照射が強い高山帯の厳しい条件に耐えながら、美しい花を咲かせます。
短い春と夏の間に、太陽の光を浴びて一斉に花が開き、室堂平は色とりどりに染まります。代表的な高山植物には、チングルマ、コバイケイソウ、ハクサンイチゲ、クロユリなどがあります。
弥陀ヶ原湿原では6月下旬から8月上旬にかけて、ワタスゲやゼンテイカ(ニッコウキスゲ)が見ごろを迎えます。
立山自然保護センターでは、立山の豊かな自然について学ぶことができます。ライチョウや高山植物など貴重な動植物の展示や解説があるほか、ナチュラリスト(自然解説員)が案内する自然観察ツアーも企画されています。
服装と持ち物のアドバイス
アルペンルートは各種乗り物を乗り継ぐだけで気軽に観光を楽しめますが、トレッキングをする場合は適切な準備が必要です。標高の高いアルペンルートは、平地と比べて12度から13度ほど気温が低く、天候も急変しやすいため、山の天候に合わせた服装に注意が必要です。
季節別の服装ガイド
春(4月から6月)は、気温がマイナス5度から10度程度と低く、室堂周辺や弥陀ヶ原の散策道は雪に埋もれています。防水効果のあるトレッキングシューズや長靴が必要です。雪の照り返しが強いため、サングラスは必需品です。手袋、カイロ、マフラー、ウール帽子、ネックウォーマーがあると便利です。
夏(7月から8月)は、平均気温が15度前後と涼しく過ごしやすいですが、雨が多く天気が変わりやすい季節です。コンパクトな雨具と温度調節しやすい服装がおすすめです。山の日差しは想像以上に強烈なので、通気性が良く肌を露出しない服が適しています。
秋(9月から10月)は、気温が10度前後で、冬のような寒さを感じる日もあります。防風性のあるジャケットやダウンなど、温度調整しやすい上着が必要です。室堂平周辺では雪が降ることもあるため、ウールやフリースなど暖かい素材の服を用意しましょう。
初冬(11月)は、気温が氷点下になることも多く、十分な防寒対策が必要です。乗り物の中は暖房が効いていますが、一歩外に出るととても寒くなります。散策の予定がなくても、ダムの堰堤などで雪の上を歩くことがあるため、防水性で滑りにくい靴を用意しましょう。
持ち物チェック
必須アイテムとして、トレッキングシューズ(防水性のあるもの)、レインウェア(上下)、防寒着、帽子、サングラス、日焼け止め、水筒、行動食、地図を準備しましょう。
あると便利なものとして、ストック(登山コースを歩く場合)、携帯用トイレ、虫除けスプレー、カメラ、モバイルバッテリーがあります。
散策時の注意事項
散策のタイミングは午前中がおすすめです。午後からは晴天の日でも地上で発生した雲が山の上に上がってきて視界が遮られることが多くなります。特に夏は午後2時を過ぎると雷雲や夕立が発生する可能性が高まります。
歩道以外を歩かない、高山植物を採取しない、ライチョウを見かけたら静かに見守る、ゴミは持ち帰る、登山者は携帯用トイレを持参する、テントは指定場所のみで設営する、ペットは連れてこないなどのマナーを守りましょう。
おすすめモデルコースの紹介
立山黒部アルペンルートを効率よく楽しむためのモデルコースを紹介します。
初心者向け日帰りコース(富山側発着)
所要時間約6時間から7時間のコースです。
8時に立山駅を出発し、立山ケーブルカーで美女平へ向かい、高原バスに乗り換えて8時57分に室堂に到着します。9時から11時30分まで室堂平を散策し、みくりが池周遊や玉殿の湧水などを楽しみます。12時に室堂を出発し、立山トンネル電気バスで大観峰へ向かい、雲上テラスで休憩します。12時40分に大観峰から立山ロープウェイで黒部平へ向かい、パノラマテラスで眺望を楽しみます。13時10分に黒部平から黒部ケーブルカーで黒部湖へ向かい、徒歩で黒部ダムへ移動します。13時30分から14時30分まで黒部ダムを観光し、放水見学や展望台からの眺めを楽しみます。14時40分に黒部ダムから関電トンネル電気バスで扇沢へ向かい、14時56分に到着します。帰路は扇沢からバスまたはタクシーで大町方面へ向かいます。
室堂満喫コース(1泊2日)
1日目は、午前に室堂に到着後、みくりが池周遊コースを歩きます。午後は室堂山展望台コースまたは雷鳥沢方面の散策を楽しみ、夕方にはみくりが池温泉またはホテル立山にチェックインします。
2日目は、早朝にご来光鑑賞を行い(天候による)、午前中は雄山登山(往復約4時間)に挑戦します。午後は大観峰、黒部平を経由して黒部ダムの観光を楽しみます。
弥陀ヶ原・室堂周遊コース
所要時間約5時間から6時間のコースです。美女平から高原バスで弥陀ヶ原へ向かい、湿原散策を楽しんだ後、室堂へ移動してみくりが池周辺を散策します。2つのエリアの異なる魅力を1日で楽しめる充実したコースです。
まとめ
立山黒部アルペンルートは、日本が世界に誇る山岳観光ルートです。雄大な立山連峰、神秘的な火山湖であるみくりが池、世紀の大工事で生まれた黒部ダム、そして貴重な高山植物やライチョウなど、見どころは尽きません。
初心者でも気軽に楽しめる室堂平の散策コースから、本格的な雄山登山まで、様々なレベルに対応したハイキングコースが整備されています。季節ごとに異なる表情を見せるアルペンルートは、何度訪れても新しい発見があります。
春の雪の大谷、夏の高山植物、秋の紅葉、そして初冬の雪景色と、四季折々の美しさを堪能しながら、自分のペースで山歩きを楽しめます。安全に配慮し、自然を大切にしながら、立山黒部アルペンルートの素晴らしい世界を満喫してください。









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