氷ノ山の冬登山完全ガイド!スノーシューコースと装備を徹底解説

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氷ノ山(ひょうのせん)は、鳥取県と兵庫県の県境にそびえる標高1,510mの山で、冬季にはスノーシュートレッキングや冬登山の人気スポットとして多くの登山者が訪れています。冬の氷ノ山では、スキー場のリフトを利用して標高約1,000mまでアクセスできるため、初心者でも比較的手軽に本格的な雪山体験を楽しむことができます。主要な登山コースとしては、初心者向けの三ノ丸コース(鳥取県側)と、中級者以上向けの東尾根コース(兵庫県側)の2つがあり、いずれもスキー場のリフトを活用した効率的なアプローチが可能です。本記事では、氷ノ山の冬登山・スノーシュートレッキングのコース情報をはじめ、必要な装備やガイド付きツアー、アクセス方法、避難小屋や宿泊施設の情報まで、冬の氷ノ山を安全に楽しむために知っておきたい情報を詳しくお伝えします。

目次

氷ノ山とは?冬登山で人気を集める理由

氷ノ山は、中国地方で大山(だいせん)に次ぐ第2位の標高を誇り、兵庫県の最高峰として「兵庫の屋根」とも称される日本二百名山のひとつです。鳥取県八頭郡若桜町と兵庫県養父市の県境に位置し、四季を通じて多くの登山者に親しまれています。

山名の由来は、天照大神が朝日に映える樹氷を見て「ヒエの山」と呼んだことにあるとされています。その名のとおり、冬の氷ノ山は西日本では数少ない樹氷の鑑賞スポットとして全国的に知られており、毎年多くの登山者やスノーシュー愛好者が訪れています。

氷ノ山周辺は但馬地方に属し、日本有数の豪雪地帯です。冬になると山全体が大量の雪に覆われ、雪庇が張り出す雪稜や広大な雪原、胸を突くような雪の壁など、雪山ならではの圧倒的な風景が広がります。西日本随一の積雪記録を持つこの山は、山スキーのメッカとしても名高い存在です。

冬の氷ノ山で楽しめる絶景と魅力

西日本屈指の樹氷をスノーシュートレッキングで鑑賞

冬の氷ノ山の最大の魅力は、全国でも限られた地域でしか見られない樹氷を比較的手軽に鑑賞できることです。山頂に近づくにつれて美しく形成された樹氷が増え、その幻想的な光景は思わず声が出るほどの感動を与えてくれます。

特に晴れた日には、青空を背景にした樹氷の白さが際立ち、まるで別世界に迷い込んだかのような景色が広がります。樹氷は気温や風向き、湿度などの条件が重なったときに形成されるため、訪れるたびに異なる表情を見せてくれるのも魅力のひとつです。

関西一の大雪原と雪稜の冬登山コース

氷ノ山の稜線に出ると、関西一と称される大雪原が広がります。ある程度登り進めると森林がなく拓けた稜線に出て、遠くに広がる山々の絶景を楽しむことができます。見渡す限りの白銀の世界は、日常では決して味わえない非日常の体験です。

雪庇が張り出す雪稜の縦走は、冬の氷ノ山ならではの醍醐味といえます。左右に広がる雪原と、遠くに見える山々のパノラマは、苦労して登った者だけが味わえる特別なご褒美です。

山頂からの360度パノラマと冬の森の表情

氷ノ山の山頂からは360度の展望が楽しめます。扇ノ山や日本海を望むことができ、天気が良ければ大山や六甲山、空気の澄んだ季節には遠く白山や石鎚山まで見えることもあります。冬の澄んだ空気の中での展望は格別で、夏山とはまた違った絶景が広がります。

森の中では粗氷や樹氷のほかにも、ツリーホールと呼ばれる木の根元の雪が融けてできる穴や張り出した雪庇など、冬の山ならではの自然造形を楽しめます。雪に覆われた針葉樹の森は静寂に包まれ、時折聞こえる風の音や野鳥の声が、冬山の静かな美しさを引き立てます。

氷ノ山の冬季登山コース比較と選び方

氷ノ山の冬季登山には、主に鳥取県側と兵庫県側の2つのアプローチがあり、いずれもスキー場のリフトを利用して標高を稼ぐことができるのが大きな特徴です。初めて冬の氷ノ山に挑戦する場合は三ノ丸コースからスタートすることが強く推奨されています。

三ノ丸コース(鳥取県側・わかさ氷ノ山スキー場起点)の詳細

三ノ丸コースは、雪山初心者にもっともおすすめのコースです。わかさ氷ノ山スキー場のリフトを2本乗り継いで標高約1,000mのリフトトップまで一気に上がれるため、実際に歩く標高差は約510m程度と取り組みやすくなっています。難易度は初心者向きで、体力は一般向きとされています。

ルートは、わかさ氷ノ山スキー場からリフト2本を乗り継ぎ、リフトトップから三ノ丸(標高1,464m)を経由して氷ノ山山頂(標高1,510m)を目指し、氷ノ山越を経由して響の森方面に下山する周回コースです。スキー場のリフト代は250円×2本で合計500円とリーズナブルな点も嬉しいポイントです。

コースタイムについては、リフト利用の場合、ゲレンデトップから三ノ丸まで約50分、三ノ丸から氷ノ山山頂まで約53分、氷ノ山山頂から氷ノ山越まで約56分、氷ノ山越から響の森まで約39分で、実働時間は約3時間程度です。ただし、積雪状況やラッセルの有無により大きく変動するため、余裕を持った計画が必要です。

三ノ丸からの稜線は広い尾根で樹林も少なく、開放的な雪原歩きが楽しめます。一方で、ガス(霧)がかかった場合は視界不良となり、方向を見失いやすいので注意が必要です。山頂付近は真っ平らで目印がほとんどないため、GPSや地図・コンパスは必携となります。また、注意すべきポイントとして氷ノ山から氷ノ山越の間にある「こしき岩」のトラバース(横断)があり、雪面がカリカリに凍結している場合は滑りやすく、慎重な通過が求められます。

東尾根コース(兵庫県側・氷ノ山国際スキー場起点)の詳細

東尾根コースは、氷ノ山国際スキー場のリフトを利用して東尾根から山頂を目指すルートで、三ノ丸コースに比べると難易度は中級以上です。急登やラッセル、読図力が求められる本格的な冬山登山コースとなっています。

ルートは、セントラルロッジ逆水から氷ノ山国際スキーパトロール詰所で登山届を提出し、山の茶店たけや前を通って東尾根登山口へ進み、東尾根避難小屋を経由して氷ノ山山頂を目指します。冬季はこのルートでの登山が主流となっています。入山前にセントラルロッジ逆水内にある氷ノ山国際スキーパトロール詰所で登山届を提出することが必要です。

コースタイムは、氷ノ山国際スキー場から東尾根避難小屋まで約1時間、東尾根避難小屋から氷ノ山山頂まで約2時間、下りは山頂から東尾根避難小屋まで約1時間20分、避難小屋からスキー場まで約40分で、実働時間は約5時間です。ガイド登山の場合は8時30分出発、15時30分下山が目安です。

このコースの核心部は、東尾根に取り付くまでの急斜面です。ツボ足(スノーシューやワカンなしの状態)だと腰の上まで雪にはまり、もがきながら登ることになります。この区間はスノーシューよりもワカンのほうが歩きやすいとされています。トレースが消えると体力的にも技術的にもレベルが急上昇するため注意が必要です。赤テープ(目印)も多くなく、樹林帯や広い尾根の下りでは視界が悪いときに道を見失いやすいため、読図やGPSナビゲーションの技術が求められます。

冬季登山コースの比較表

項目三ノ丸コース東尾根コース
起点わかさ氷ノ山スキー場(鳥取県側)氷ノ山国際スキー場(兵庫県側)
難易度初心者向き中級者以上
実働歩行時間約3時間約5時間
コースの特徴広い尾根歩き中心、周回コース急登・ラッセル・読図力が必要
リフト代500円(250円×2本)
登山届提出推奨パトロール詰所で提出必須

スノーシューの選び方とワカンとの使い分け

スノーシューとは何か

スノーシューとは、雪山を歩くために登山靴(トレッキングシューズ)の下に装着する「かんじき」のような器具のことです。装着すると足が雪の中に沈み込みにくくなり、歩行用に整備されていない雪道でも比較的楽に進むことができます。

氷ノ山ではスキー場のリフトで標高約1,000mまで上がれるため、そこからスノーシューで山頂を目指す登山スタイルが人気です。全プラン約5時間のうち登りは最初の約50分程度しかなく、残りは比較的平坦な稜線歩きとなるため、スノーシュー初心者でも取り組みやすい環境が整っています。

山岳用スノーシューを選ぶべき理由

氷ノ山でのスノーシューには、山岳用のスノーシューを使用することが推奨されています。高原(平坦地)用のスノーシューは横滑りしやすく、斜面では危険な場合があります。山岳用はヒールリフターやクランポン(爪)がついており、登りや凍結した斜面でも安定した歩行が可能です。装備を選ぶ際には、使用する場所の傾斜や地形を考慮し、山岳用を選ぶことが安全なスノーシュートレッキングの第一歩です。

コースや積雪状況によるスノーシューとワカンの使い分け

氷ノ山の冬季登山では、コースや積雪状況によってスノーシューとワカンを使い分けると効果的です。三ノ丸コースの広い稜線歩きにはスノーシューが適していますが、東尾根コースの急斜面ではワカンのほうが取り回しがよい場合があります。3月初旬の雪が締まった時期にはアイゼンよりスノーシューが歩きやすいですが、氷ノ山から氷ノ山越の区間ではアイゼンが望ましいとされています。このように、歩く場所や雪の状態に応じて適切な装備を選択することが、安全で快適なトレッキングにつながります。

氷ノ山のスノーシューツアーとガイド付きプラン

初心者や冬山登山の経験が少ない方には、ガイド付きのスノーシューツアーへの参加がおすすめです。氷ノ山では複数のツアーやガイドプランが用意されており、道具のレンタルから専門的なガイドまで、手軽に冬の氷ノ山を体験できる環境が整っています。

氷ノ山自然ふれあい館「響の森」のスノーシューツアー

氷ノ山自然ふれあい館「響の森」は、日本二百名山のひとつである氷ノ山の自然情報や登山道情報、地域の観光情報などを紹介している展示施設です。冬季にはスノーシューや歩くスキーでの雪上ハイキングなど、さまざまな体験プログラムを提供しています。

響の森では、3時間コース(4,275円~4,500円)と5時間コース(5,700円~6,000円)のスノーシュー・スノートレッキングツアーが用意されています。時間帯は9時、10時、13時からの選択が可能です。氷ノ山を熟知したインタープリター(自然解説専門員)がガイドを務め、自然の解説を交えながら雪山を案内してくれます。スノーシューなどの道具は準備してもらえるため、手ぶらで参加することも可能です。

響の森では定期的にスノーシューイベントも開催されています。「おためしスノーシュー」は初心者向けの入門プログラムで、スノーシューの基本的な使い方から教えてもらえます。「スノーシューハイク」はより本格的なコースを歩くプログラムで、家族やカップルだけで楽しめるプライベートツアー「エコツアー」も用意されています。イベントは先着順のため、早めの申し込みが推奨されています。

2025年1月に開催されたスノーシューイベントの参加者からは、「普段見られない景色がとてもキレイで、見た瞬間に声が出ました」といった感想が寄せられており、満足度の高いプログラムであることがうかがえます。

鳥取ツアーズのガイド付きスノーシュー体験プラン

鳥取ツアーズでは、氷ノ山でのスノーシュー体験プランを提供しています。朝10時に現地集合、16時解散の1日コースで、料金は11,000円~12,000円となっており、スノーシューとストックのレンタル代や保険代が含まれています。ガイド歴約20年で日本山岳ガイド協会公認の資格を持つインストラクターが案内してくれるため、安心して参加できます。

コースでは樹氷鑑賞も楽しめ、登り始めて約2時間弱でランチポイントに到着し、約2時間ほどで集合場所に戻る行程です。ツアーに参加すると、まずガイドからスノーシューの説明があり、ゲイターやスノーシューの履き方を教わります。約15分程度のレクチャーを経て実際に外に出て体験が始まるため、道具を持っていない方や初めてスノーシューに挑戦する方でも気軽に参加できるのが魅力です。

冬季登山に必要な装備と服装の基本

レイヤリングで体温を管理する服装選び

冬山の服装はレイヤリング(重ね着)が基本で、アウターレイヤー、ミドルレイヤー、ベースレイヤーの3層構成で体温を調整します。

ベースレイヤーとなるアンダーウェアとインナーウェアは、保温力のある化学繊維やメリノウール素材を選びます。氷点下の気温では汗で下着が濡れたままの状態は凍傷や低体温症を招き、大変危険です。速乾性が高く、汗を素早く肌から離してくれる素材が理想的です。ミドルレイヤーにはフリースやダウンなど保温性の高い素材を選び、行動中は薄手のもの、休憩中はその上からさらに防寒着を羽織るという使い分けが効果的です。アウターレイヤーには、防水性・透湿性を備えたゴアテックスなどの素材を使用した雪山用アルパインウェア上下が必要です。スリーシーズン用のレインウェアでは防寒・防風性能が不十分です。パンツはタイツとハードシェルパンツのレイヤリングを基本とし、通気を調整して体温管理を行います。

休憩時に汗冷えで体が冷えないように、サッと羽織れるダウンジャケットなどの防寒着を必ず携行することも大切です。

防寒小物と足回りの装備

帽子は耳の隠れるものを選び、バラクラバ(目出し帽)があると顔まわりの冷えと紫外線の両方から守ってくれます。グローブは防水性と保温性に優れたものを選び、インナーグローブも併用します。積雪期は予備も含めて2組以上の手袋を持つことが推奨されています。靴下は厚手で保温性に優れたウール素材の冬山用を選び、濡れた場合に備えて予備を1足持っていきます。

冬用登山靴はゴアテックスデュラサーモやプリマロフトなどの保温材が入ったものが必要で、アイゼンが装着できる仕様のものを選びます。アイゼンは10本爪から12本爪のものが推奨されます。ゲイターは靴への雪の侵入を防ぐため必携です。スノーシューまたはワカンは、積雪が深い氷ノ山では特に重要な装備となります。

その他の必携装備と食料

保温ボトルは休憩中に温かい飲み物で体を温めるために必須です。ヘッドライトは冬の日照時間の短さを考慮して必ず携行し、予備の電池も忘れずに持ちます。地図・コンパス・GPSは、積雪で登山道や道標が埋もれる冬山では夏山以上に重要性が高い装備です。ツエルトやエマージェンシーブランケット、ガスストーブやクッカーなどの緊急装備も携行します。

食料については、おにぎりなどが凍ってしまうため、パンやカロリー食、チョコレートなどの甘いお菓子を持参するのが実用的です。モバイルバッテリーは、寒い場所ではスマートフォンのバッテリー消費が速くなるため、忘れずに持参したい装備のひとつです。

氷ノ山へのアクセス方法と基本情報

わかさ氷ノ山スキー場(鳥取県側)へのアクセス

わかさ氷ノ山スキー場へ車で向かう場合、最寄りのインターチェンジは中国自動車道の山崎ICで、そこから国道29号線、482号線経由で到着します。山崎ICからの距離は約79kmで、所要時間の目安は大阪から約3時間、京都から約3時間30分、鳥取市内から約1時間です。駐車場は合計870台分があり、平日は無料で利用できます。休日の有料駐車場料金は乗用車600円、中型車1,200円、大型バス1,700円です。

電車・バスの場合は、最寄り駅であるJR因美線の郡家駅または若桜鉄道の若桜駅を利用します。若桜駅からスキー場までは車で約25分です。冬季の1月以降の土日祝日には、若桜駅からスキー場までの直通100円バス(臨時バス)が運行されています。運行日は積雪状況により変更になる場合があるため、事前に若桜町公式ホームページでの確認が必要です。高速バスを利用する場合は大阪難波から若桜まで約1,600円でアクセスできますが、若桜バス停は道の駅にあるため若桜鉄道若桜駅まで徒歩約10分の移動が必要です。

氷ノ山国際スキー場(兵庫県側)へのアクセス

兵庫県側の氷ノ山国際スキー場へは、北近畿豊岡自動車道の八鹿氷ノ山ICから国道9号線、県道87号線経由でアクセスできます。東尾根コースを利用する場合はこちらが起点となります。

スキー場と周辺施設の基本情報

わかさ氷ノ山スキー場は鳥取県八頭郡若桜町舂米(つくよね)に所在し、営業期間は12月中旬から翌3月下旬、営業時間は平日・土休日ともに8時から17時です。登山利用の場合のリフト代は250円×2本で合計500円です。

響の森(氷ノ山自然ふれあい館)は同じく鳥取県八頭郡若桜町舂米に所在し、営業時間は9時から17時です。若桜鉄道若桜駅よりクローバーバス氷ノ山ふれあいの里行で20分、終点より徒歩すぐの場所にあります。

冬季登山の注意事項と安全対策

天候判断と時期選びの重要性

氷ノ山は本格的な雪山であり、天候が荒れた場合には遭難の危険があります。事前に天気予報を十分に確認し、悪天候が予想される場合は潔く中止する判断力が重要です。特に山頂付近は平坦で目印がほとんどないため、ホワイトアウト(視界不良)時には方向を定めることが極めて困難になります。

時期による積雪の違いも重要なポイントです。1月から2月はラッセルが深く、行動に多くの時間と体力を要するため、場合によっては宿泊が必要になることもあります。一方、3月以降になると雪が締まって格段に歩きやすくなり、日帰り登山が現実的になります。初心者は雪が安定する3月以降の登山がおすすめです。

登山日と行動計画の立て方

ハイカーが多く登る土日を選択して登ることが推奨されています。人が多いとトレース(先行者の踏み跡)がついているため歩きやすく、万が一のトラブル時にも助けを得やすいためです。平日は入山者が少なくノートレースの状態になりやすいため、経験者向けといえます。

冬の登山は日没が早く天候も変わりやすいため、暗くなる前に下山できるよう余裕を持った行動計画を立てることが大切です。雪山では予想外のことが起こりやすく、思ったペースで進めないことや停滞を余儀なくされることも「想定範囲内」として、いつも以上に余裕のある時間配分を心がけます。

汗をかかない行動と体温管理の重要性

冬の山では汗をかかないように行動することが非常に重要です。汗で体が濡れると急激に体温が奪われ、低体温症のリスクが高まります。汗をかきそうになったらシェル(アウター)を脱ぎ、寒くなったら着るという脱ぎ着をこまめに繰り返し、きめ細やかな体温調整を心がけます。

冬季登山のベストシーズンの選び方

氷ノ山の冬季登山のシーズンは概ね12月下旬から3月下旬までですが、目的や経験レベルによって最適な時期は異なります。樹氷を楽しみたい場合は1月中旬から2月中旬がベストですが、この時期は積雪も深くラッセルが必要になることが多いです。スノーシュートレッキングを気軽に楽しみたい初心者には、雪が締まって歩きやすくなる3月上旬から中旬がおすすめです。スキー場のリフト運行期間(12月中旬~3月下旬)内であれば、リフトを利用した効率的なアプローチが可能です。

初心者のための氷ノ山冬登山ガイド

冬の氷ノ山に初めて挑戦する場合に押さえておくべきポイントがあります。

まずコース選びについては、三ノ丸コース(わかさ氷ノ山スキー場側)から始めることが推奨されています。リフトで標高を稼げるため体力的な負担が少なく、広い尾根歩きが中心のため比較的安全に雪山を楽しめます。歩行時間も約3時間と、東尾根コースの約5時間に比べて短く、雪山入門として最適です。

ガイド付きツアーへの参加も有効な選択肢です。響の森や鳥取ツアーズなどが提供するガイド付きツアーなら、道具のレンタルも含まれており、経験豊富なガイドが同行してくれるため安心です。特に響の森の「おためしスノーシュー」は初心者向けの入門プログラムとして最適で、スノーシューの基本的な使い方から教えてもらえます。

冬山登山の経験がない場合は、経験者と同行するか、山岳会やガイドツアーを利用することが強く推奨されています。登山届の提出も忘れずに行うことが大切で、兵庫県側の氷ノ山国際スキー場から入山する場合はセントラルロッジ逆水内のパトロール詰所で登山届を提出します。鳥取県側からの入山の場合も、登山届の提出を忘れずに行います。

氷ノ山の避難小屋情報と利用時の注意点

氷ノ山には複数の避難小屋が設置されており、冬季登山において重要な役割を果たしています。ただし、あくまで「避難小屋」であり営業小屋ではないため、利用にあたっては自己完結の装備が必要です。

山頂避難小屋の設備と利用

氷ノ山山頂に位置する避難小屋は、2019年に約1,500万円の工費をかけて全面改装が行われました。二階には畳15枚と毛布20枚が新調されており、広さも十分で快適な睡眠が期待できる環境が整っています。冬季の利用では小屋内の気温は0℃前後で比較的過ごしやすいですが、夜間には強風によるドアの振動や風音が激しくなることがあります。水場はなく、シュラフやライト、食料、水、調理器具などすべて自分で持参する必要があり、基本的に「何もない」と思って準備するのが正解です。

東尾根避難小屋と氷ノ山越避難小屋

東尾根避難小屋は兵庫県側に位置し、氷ノ山山頂から約2.1km地点にあります。東尾根ルートを利用する登山者にとっての中間拠点で、冬季の東尾根ルートではこの避難小屋を経由して山頂を目指すことになります。

氷ノ山越避難小屋は三ノ丸コースの下山路上に位置しています。冬季の宿泊利用では、翌朝の室温がマイナス6℃まで下がり、一晩で30cmの積雪があったとの記録もあります。ホワイトアウト状態になった場合の緊急避難場所としても重要な存在です。

避難小屋利用の注意点

避難小屋はテント不要で設営・撤収の手間がなく無料で利用できるという手軽さがある一方、先客がいて泊まる場所を確保できないリスクもあります。冬季は特に天候の急変による滞留が発生しやすいため、ツエルトやテント泊装備も念のため持参することが推奨されています。避難小屋はあくまで緊急時の避難場所であり、宿泊を前提とした施設ではないことを理解しておく必要があります。

周辺の宿泊施設と下山後の楽しみ

高原の宿 氷太くん(ひょうたくん)の魅力

氷ノ山高原の宿「氷太くん」は、鳥取県八頭郡若桜町のわかさ氷ノ山スキー場に隣接する町営の宿泊施設です。氷ノ山登山道の入口、標高約900mに位置しており、冬の登山やスキーの拠点として最適な立地にあります。施設名は一般公募によって命名されたユニークな名前です。

客室は和室15畳が21室、10畳が1室(いずれもトイレ付き、1室最大8名)、洋室ツイン2室(バス・トイレ付き、バリアフリー対応)があり、合計182名まで宿泊可能な大型施設です。宿泊料金は1泊2食付きで8,980円からで、冬季にはスキーパックやスノーボードパック、ファミリー向け箱膳プラン、鍋料理プランなど、さまざまな宿泊プランが用意されています。いずれのプランにも1日リフト券が付いているため、スキーやスノーシュー登山の翌日にもゲレンデや登山を楽しめます。

大浴場も完備されており、氷ノ山から湧き出る清流のなめらかな水を使用したお風呂でゆっくりと体を温められます。宿泊者は無料で利用でき、外来入浴は大人500円、小人300円で受け付けています。冬山登山やスノーシュートレッキングで冷えた体を温めるのに最適です。鳥取市内からは車で約1時間のアクセスで、20名以上の団体予約の場合は鳥取駅または鳥取空港への送迎サービスもあります(冬季は若桜駅までの送迎)。

その他の宿泊オプション

わかさ氷ノ山スキー場周辺には氷太くん以外にもペンションや民宿などの宿泊施設が点在しています。兵庫県側の氷ノ山国際スキー場周辺にも宿泊施設があり、東尾根ルートを利用する場合はこちらが便利です。冬季は予約が集中するため、早めの予約がおすすめです。

冬の氷ノ山を安全に楽しむための心構え

氷ノ山は関西圏や中国地方からアクセスしやすい立地にありながら、冬季には本格的な雪山の様相を呈します。標高1,510mという数字以上に、日本海側気候の影響を受けた豪雪と強風が登山者を待ち受けています。

「スキー場のリフトで手軽に登れる」というイメージだけで安易に入山することは避けなければなりません。リフトで標高を稼げるのは確かに大きなメリットですが、稜線に出てからは本格的な雪山と同じ厳しい環境が広がっています。特にホワイトアウト時には、平坦な山頂付近で方向感覚を完全に失う危険があります。

撤退する勇気も重要です。天候の急変や体調の変化を感じたら、山頂にこだわらず引き返す判断ができることが安全な雪山登山の大前提です。氷ノ山は逃げ場の少ない稜線歩きが続くコースが多いため、一度天候が崩れると身動きが取れなくなる可能性があります。

無理のない計画と十分な準備、そして謙虚な姿勢で山と向き合うことで、冬の氷ノ山は忘れられない感動的な体験を与えてくれます。白銀に覆われた山頂から眺める日本海や周囲の山々、きらめく樹氷の森、どこまでも続く大雪原は、きちんと準備をして臨んだ者だけに許される特別な報酬です。

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