扇ノ山(おうぎのせん)は、兵庫県美方郡新温泉町と鳥取県鳥取市にまたがる標高1,309.9メートルの山で、日本三百名山および関西百名山に選ばれた名峰です。毎年春になると山頂付近の残雪と山腹に広がるブナの新緑が見事なコントラストを描き、上山高原エコミュージアム主催の「残雪と新緑の登山ツアー」が開催されています。兵庫県新温泉町を拠点に往復約3時間で登頂でき、約1,200年の歴史を持つ湯村温泉や但馬牛などのグルメも組み合わせて楽しめる、春の但馬地方を代表する登山スポットです。
この記事では、扇ノ山の自然環境や登山ルートの詳細から、残雪期に必要な装備と注意点、さらに新温泉町の温泉やグルメ情報まで幅広くお伝えします。初めて扇ノ山を訪れる方はもちろん、リピーターの方にも役立つ情報を網羅していますので、登山計画の参考にしてください。

扇ノ山とは?兵庫と鳥取の県境にそびえる日本三百名山の魅力
扇ノ山とは、兵庫県美方郡新温泉町と鳥取県鳥取市にまたがる標高1,309.9メートルの山のことです。山名の由来は、山頂付近がなだらかに広がるその姿が扇を広げたように見えることにあります。氷ノ山後山那岐山国定公園の北限に位置しており、中国・近畿地方を代表する火山のひとつとして知られています。
地質学的には第四紀更新世に噴出した玄武岩を主体としており、10数万年前まで何度か火山活動を繰り返していました。噴出した溶岩による台地地形がまだ浸食が進んでいないため、山頂付近はなだらかで広々とした山容が特徴です。一方で高原地帯の辺縁部は著しい浸食を受けており、各所で険しい断崖や峡谷を形成しています。代表的な渓谷美としては、日本の滝百選に選ばれた「雨滝」や、21世紀に残したい日本の自然百選に選ばれた「諸鹿川渓谷」などがあります。
扇ノ山は日本三百名山、関西百名山、ふるさと兵庫50山という3つの名山リストに選ばれています。これらの選定は山の景観の美しさ、自然環境の豊かさ、そして登山コースとしてのバランスの良さが評価された結果です。山頂の穏やかな景観と山麓の渓谷美という対照的な自然が共存している点が、この山の大きな魅力となっています。
扇ノ山の自然環境 ブナの原生林と残雪・新緑が織りなす絶景
ブナ林が育む「緑のダム」の恵み
扇ノ山の最大の自然的魅力は、山腹から山頂にかけて広がるブナの原生林です。南斜面の標高が高い部分には手つかずのブナの原始林が残されており、カエデ類やミズナラ、スギなどの自然林とともに、森全体がまるでセラピーロードのような癒やしの空間を作り出しています。
ブナ林は「緑のダム」とも呼ばれ、豊富な水を蓄える重要な役割を果たしています。扇ノ山のブナ林から流れ出す清らかな水は山麓の渓流や滝の水源となっており、雨滝をはじめとする美しい滝を育んでいます。ブナは春の芽吹きから秋の黄葉まで四季折々の美しい姿を見せてくれますが、特に春の新緑の時期は残雪の白とブナの若葉の緑が織りなすコントラストが格別で、毎年多くの登山者を魅了しています。
扇ノ山に咲く貴重な山野草と出会える野鳥たち
扇ノ山の標高の高い部分では、湿地性の植物を中心にさまざまな山野草が自生しています。ザゼンソウは座禅を組むお坊さんのような形をした独特の花で、雪解けとともに顔を出す早春の植物です。サンインシロカネソウは山陰地方を中心に分布する珍しい植物として知られ、タジマタムラソウは但馬地方の名を冠した貴重な植物として扇ノ山周辺に自生しています。春から初夏にかけてはこれらの山野草が次々と花を咲かせ、登山道を色とりどりに彩ります。
野鳥の面でも扇ノ山とその周辺は鳥取県内有数のバードウォッチングポイントとして知られています。国の天然記念物に指定されているイヌワシが上空を旋回する姿が見られることがあるほか、クマタカやオオタカなどの大型猛禽類も生息しています。夏鳥として渡来するアカショウビンの「キョロロロロ」という美しい鳴き声や、瑠璃色の羽が美しいオオルリ、渓流沿いに見られる青い宝石のようなカワセミなど、多彩な野鳥を観察できるのも扇ノ山登山の醍醐味です。哺乳類ではニホンジカやツキノワグマが生息しており、オオムラサキやギフチョウといった希少な蝶類の生息地にもなっています。
扇ノ山の四季 残雪の春から雪山の冬まで
扇ノ山は四季を通じて異なる魅力を持っています。春の4月下旬から5月は残雪と新緑のコントラストが最大の見どころとなり、ブナの芽吹きやザゼンソウの開花、渡り鳥の飛来など生命の躍動を感じる季節です。夏の6月から8月は深い緑に覆われた森の中を歩く爽やかなトレッキングが楽しめ、標高が高いため平地に比べて涼しく快適な登山ができます。秋の9月から11月はブナやカエデの紅葉・黄葉が山全体を彩り、特にブナの黄葉は見事で黄金色に輝く森の中を歩く体験は格別です。冬の12月から3月は積雪に覆われスノーシューやバックカントリーのフィールドとなりますが、冬季は上級者向けとなります。
扇ノ山の登山ルート 兵庫県新温泉町側と鳥取県側のコース比較
扇ノ山には兵庫県側と鳥取県側から複数の登山ルートが整備されています。いずれのルートも林道終点の登山口から往復3時間程度で登ることができ、指導標や避難小屋も完備されているため、比較的登りやすい山として親しまれています。各ルートの特徴を以下の表にまとめました。
| コース名 | 方面 | 所要時間 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 河合谷登山口コース | 鳥取県側 | 往復約3時間弱 | 初心者向け、片道約3.2km、標高差少なめ |
| 海上(うみがみ)登山口コース | 兵庫県側 | 往復約3時間 | 上山高原の草原とブナ林が楽しめる |
| 畑ヶ平(はたがなる)登山口コース | 兵庫県側 | 往復約3時間 | 畑ヶ平高原の自然が魅力 |
| 姫路コース・丹比コース | 鳥取県側 | 往復約3時間程度 | それぞれ異なる自然を体験 |
初心者におすすめの河合谷登山口コース
河合谷登山口コースは扇ノ山で最も人気のある登山ルートのひとつで、初心者にも安心して歩けるコースです。片道距離は約3.2キロメートルで標高差が比較的少なく、登り約1時間10分、下り約50分で歩くことができます。小ズッコ、大ズッコと呼ばれるピークを経由して山頂に至るこのコースは、ブナ林の中を歩く気持ちのよいルートです。体力に自信のない方や登山を始めたばかりの方にも適しています。アクセスは鳥取市内から県道31号線を進み、国府町雨滝を通り、林道河合谷線を行った先にある「水とふれあいの広場」が登山口です。駐車場は10台程度のスペースがあります。
残雪と新緑の登山ツアーで使われる海上登山口コース
海上登山口コースは兵庫県新温泉町側からアプローチするルートで、上山高原を経由して山頂を目指します。残雪と新緑の登山ツアーで使用されるのもこのルートの一部です。新温泉町市街地から約30分ほど舗装された海上林道を進み、上山高原を経て登山口に到着します。上山高原のススキの草原を通り抜けてブナ林へと入っていくルートは景観の変化に富んでおり、兵庫県新温泉町の自然の多様さを存分に体感できます。
畑ヶ平登山口コースも兵庫県側からのアプローチルートで、扇ノ山の南東側に広がる畑ヶ平高原の自然豊かなエリアを楽しめます。登山ツアーでは上山高原側から登り畑ヶ平高原側へ下山するという縦走コースが組まれることもあり、異なる2つの高原の景色を1日で堪能できる贅沢なルート設定です。
扇ノ山山頂から望む360度の大パノラマ
扇ノ山の山頂には二等三角点が設置されており、1994年に建てられた木造2階建ての避難小屋があります。この避難小屋の2階からは素晴らしい展望が広がります。北方向には日本海の広大な海原、西方向には鳥取平野とその奥にそびえる大山(だいせん)、東方向には妙見山や鉢伏山、氷ノ山、東山、沖ノ山の山並み、南東方向には岸田川の渓谷が一望できます。晴れた日には周囲に遮るものがない360度のパノラマが広がり、登山の疲れを忘れさせてくれる絶景スポットです。避難小屋の屋上は展望台としても利用でき、開放感あふれる景観を堪能できます。
残雪と新緑の登山ツアー 上山高原エコミュージアム主催の春の人気イベント
毎年恒例のガイド付き登山ツアーとは
扇ノ山の残雪と新緑の登山ツアーとは、上山高原エコミュージアムが毎年春に主催するガイド付きの登山イベントです。扇ノ山の春の魅力を安全に楽しめるプログラムとして、毎年多くの参加者を集めています。
2025年春には5月11日に開催されました。集合場所は上山高原ふるさと館で、参加費は大人1名2,500円、小学生以下1,000円、定員は先着50名の事前予約制でした。コース距離は約6キロメートルで、自然散策をしながら扇ノ山山頂を目指し、山頂で昼食をとったあと畑ヶ平高原へ下山する内容でした。このツアーの最大の魅力は地元のガイドが同行することで、植物や動物、地形の解説を聞きながら歩ける点にあります。自分だけで登っても美しい山ではありますが、ガイドの解説によって見過ごしてしまいがちな自然の営みに気づくことができます。2026年の開催情報については、上山高原エコミュージアムの公式サイトで最新情報をご確認ください。
残雪と新緑の登山ツアーで体験できる5つの見どころ
残雪と新緑の登山ツアーでは、この時期ならではの見どころを存分に楽しむことができます。まず最大の魅力は、5月の扇ノ山山頂付近にまだ残っている雪の上を歩く体験です。春の柔らかな陽差しの中で白い雪の上を歩くのはこの時期にしかできない特別な体験で、残雪の上からは普段とは異なる目線で周囲の風景を楽しめます。
残雪の白と新緑の緑のコントラストは5月の扇ノ山のハイライトともいえる風景です。ブナの若葉が陽光に透けて輝く様子は「新緑のシャワー」とも形容される美しさです。さらに、雪解けとともに顔を出すザゼンソウやサンインシロカネソウなど、この地域ならではの山野草を間近に観察できます。春は渡り鳥が飛来する季節でもあり、ブナ林の中でアカショウビンやオオルリなどの美しいさえずりを聞くことができます。そして晴れていれば山頂から日本海や大山まで見渡せる壮大なパノラマが広がり、登山ツアーのフィナーレを飾るにふさわしい絶景が待っています。
上山高原エコミュージアムの多彩なプログラム
上山高原エコミュージアムは、扇ノ山と上山高原の自然環境の保全と活用を目的とした組織です。上山高原と扇ノ山の道案内サポートや各種自然体験プログラムの企画・運営を行っています。拠点施設である「上山高原ふるさと館」は登山ツアーの集合場所としても使われており、上山高原や扇ノ山の自然に関する展示や情報提供も行われています。登山前に立ち寄ることで、より深い自然体験につなげることができます。
残雪と新緑の登山以外にも、新緑ハイキングや紅葉トレッキング、霧ヶ滝渓谷や小又川渓谷の散策など、季節に応じたさまざまなプログラムが用意されています。個別のガイド依頼も受け付けており、料金は1人半日6,000円、昼をまたぐ場合は1人10,000円です。グループでの登山や特別なコースを歩きたい場合などに利用でき、自分たちのペースで扇ノ山の自然を満喫できます。
残雪期の扇ノ山登山で必要な装備と注意点
服装の基本はレイヤリング(重ね着)
残雪期の扇ノ山を安全に楽しむためには、適切な服装の準備が欠かせません。基本的には夏山装備に近いものの、残雪の影響を考慮した装備が必要です。服装の基本はレイヤリングと呼ばれる重ね着の手法で、3層構成を基本として気温や天候の変化に対応します。
ベースレイヤーには吸湿速乾性のあるポリエステルやメリノウール素材のものを選び、汗を吸って冷える綿素材は避けます。ミドルレイヤーにはフリースや薄手のダウンジャケットなど保温性のあるものを用意し、行動中は暑くなることもあるため脱ぎ着しやすいものがよいでしょう。アウターレイヤーには防水透湿性のあるレインジャケットを必ず持参します。風を防ぐ効果もあり稜線上では必須の装備です。パンツは防水性のあるトレッキングパンツが適しており、残雪の上を歩くため濡れても乾きやすい素材のものを選びましょう。
残雪期に欠かせない登山靴と必携装備
登山靴は防水透湿性のあるハイカットタイプが望ましく、残雪の上を歩くためくるぶしまでしっかりサポートするものを選びます。ゲイター(スパッツ)は靴の中への雪の侵入を防ぎ、防水・保温効果を高めるために必要な装備です。
残雪期の装備として特に重要なのが軽アイゼン(6本爪以上)です。残雪の上を安全に歩くために欠かせず、朝の気温が低い時間帯は雪が締まって滑りやすくなるため必携といえます。トレッキングポール(ストック)も重要な装備で、歩行のバランスを保ち足への衝撃を和らげる効果があります。残雪の上では特に足を取られやすいため、I型の持ち手のものを2本使うのが基本です。ストックの先が雪に沈まないようスノーバスケットを装着しましょう。
そのほか、残雪からの照り返しが強いためサングラスや日焼け止めは必須です。防水性のある手袋は残雪に触れる際に必要で、濡れた場合に備えて予備も持参するとよいでしょう。帽子は日差しを防ぐだけでなく防寒にもなります。日帰り登山であれば25リットルから30リットル程度のザックが適しています。積雪により登山道がわかりにくくなったり道標が雪に埋もれていることがあるため、地図とコンパスの必要性は夏山以上に高まります。
残雪期の食料と飲み物の選び方
残雪期はまだ気温が低いため、保温ボトルに温かい飲み物を入れて持参することをおすすめします。ペットボトルの飲み物は気温によっては凍ってしまうこともあるので注意が必要です。行動食にはチョコレートやナッツ、エネルギーバーなどカロリーが高くすぐにエネルギーに変わるものが適しています。残雪期はおにぎりが凍ることがあるため、パンやカロリー食を携行するのがよいでしょう。山頂での昼食を楽しむ場合は、保温ジャーに入れたスープやカップ麺用のお湯など温かいものを用意すると快適に過ごせます。
安全な登山のために守りたい注意点
出発前には必ず天気予報を確認しましょう。山の天気は変わりやすく、特に残雪期は急な天候の変化に注意が必要です。年によって残雪の量や状態は大きく異なるため、事前に登山情報サイトやSNSで最新の状況を確認することが重要です。春とはいえ山中では暗くなるのが早いため、余裕を持ったスケジュールで行動し、遅くとも午後3時には下山を開始するようにします。
特に残雪期はルートを見失う危険性が高まるため、複数人での行動が望ましいです。登山ツアーに参加すればガイドの案内で安全に歩けるため、この点でも安心です。登山口に登山届のポストがある場合は必ず提出してください。万が一の遭難時に捜索の手がかりとなる重要な情報です。また、扇ノ山はツキノワグマの生息域でもあるため、クマ鈴の携行などクマ対策も忘れずに行いましょう。
兵庫県新温泉町の温泉とグルメ 扇ノ山登山後の楽しみ方
約1,200年の歴史を誇る湯村温泉の魅力
新温泉町は兵庫県の北西部に位置する日本海に面した自然豊かな町で、町名の通り良質な温泉に恵まれています。町内には湯村温泉をはじめ浜坂温泉、七釜温泉など5つの温泉地が点在しており、扇ノ山登山の疲れを癒やすには最適の場所です。
中でも湯村温泉は扇ノ山登山とあわせて楽しみたい温泉地の筆頭です。嘉祥元年(848年)に慈覚大師によって発見されたと伝えられる約1,200年の歴史を持つ古湯で、開湯以来、湧出量と泉質が衰えることなく現在に至っています。温泉のシンボルともいえるのが元湯「荒湯」で、98度の高温泉が毎分470リットルも自噴しています。深いボーリングを必要とせず、わずか数メートルの深度で湧出しているのが大きな特徴です。荒湯の周辺ではこの高温の源泉を利用した「湯がき」が楽しめ、卵や野菜を温泉の湯で茹でる体験が観光名物となっています。
泉質はナトリウム-塩化物・硫酸塩・炭酸水素塩泉で、低張性・弱アルカリ性・高温泉です。無色透明の湯は肌あたりが柔らかく、登山で疲れた体を癒やすのにぴったりの温泉です。また、湯村温泉は1981年にNHKで放送されたドラマ「夢千代日記」のロケ地として全国的に有名になり、以来「夢千代の里」とも呼ばれるようになりました。温泉街にはドラマにちなんだモニュメントや記念館があり、情緒ある散策が楽しめます。
但馬牛と日本海の幸 新温泉町の食の魅力
新温泉町は食の宝庫でもあります。日本を代表するブランド牛「但馬牛」の産地であり、ステーキやしゃぶしゃぶなどさまざまな調理法で味わうことができます。日本海に面しているため新鮮な魚介類も豊富で、冬の松葉ガニは名物として有名ですが、春から夏にかけてもイカやエビなどの海の幸が楽しめます。荒湯の高温源泉を利用した「湯がき」は卵や野菜、山菜などを茹でる湯村温泉ならではの体験グルメで、登山後の楽しみとしても人気があります。
宿泊施設も充実しています。「人気温泉旅館ホテル250選」にも選ばれた佳泉郷 井づつやでは上質なおもてなしと料理が楽しめます。湧泉の宿 ゆあむは扇ノ山の登山ツアー情報も発信している宿で、登山と温泉を組み合わせた宿泊プランも用意されています。登山の前泊・後泊として温泉宿に宿泊すれば、登山と温泉という贅沢な組み合わせを満喫できます。
扇ノ山登山とあわせて訪れたい周辺観光スポット
扇ノ山登山とあわせて楽しめる観光スポットも豊富です。リフレッシュパーク湯村は温泉の源泉熱を利用した全天候型の屋内プールで、露天風呂やレストランも併設されています。上山高原は扇ノ山の登山口に近い高原で、秋のススキの草原が有名です。上山高原ふるさと館では地域の自然や文化について学ぶことができます。
シワガラの滝は新温泉町にある秘境の滝で、洞窟の中に落ちる滝として知られていますが、長袖・長ズボン・長靴・手袋などの装備が必要な経験者向けのスポットです。また、新温泉町は山陰海岸ジオパーク(ユネスコ世界ジオパーク)のエリアにも含まれており、海岸線の地質学的に貴重な景観を楽しむこともできます。山の自然から海の絶景まで、新温泉町は多彩な魅力を持つ観光地です。
扇ノ山へのアクセス方法とおすすめ登山モデルプラン
車と公共交通機関でのアクセス
車でのアクセスは、大阪方面からは中国自動車道から播但連絡道路、北近畿豊岡自動車道を経由して新温泉町へ向かい、所要時間は約3時間から3時間半程度です。京都方面からは京都縦貫自動車道から舞鶴若狭自動車道、北近畿豊岡自動車道を経由します。鳥取方面からは鳥取市内から県道31号線を経由して河合谷登山口へアクセスできます。新温泉町市街地から海上登山口までは舗装された海上林道を約30分ほどで到着し、駐車場は10台程度のスペースがあります。
公共交通機関を利用する場合は、JR山陰本線の浜坂駅が最寄り駅です。大阪からは特急「はまかぜ」で約3時間半で到着します。浜坂駅からは路線バスまたはタクシーで湯村温泉へ移動し、そこから登山口へは車での移動が必要です。登山ツアーに参加する場合は集合場所の上山高原ふるさと館までの送迎が手配される場合もあるため、事前に確認することをおすすめします。
日帰りプランと1泊2日プランのモデルコース
日帰りの場合は、早朝7時に新温泉町の宿を出発し、7時半に上山高原ふるさと館到着、8時に登山を開始するスケジュールがおすすめです。9時半頃に山頂に到着して休憩や展望を楽しんだ後、10時半に下山を開始すれば正午には登山口に帰着できます。午後は湯村温泉に移動して温泉で疲れを癒やし、温泉街の散策や湯がき体験を楽しむ充実した1日が過ごせます。
1泊2日の場合は、初日の午後に新温泉町に到着して湯村温泉にチェックインします。荒湯周辺の散策や湯がき体験を楽しみ、温泉でゆっくりくつろいだ後は、但馬牛や日本海の幸を堪能する夕食を楽しみましょう。2日目は早朝6時半に朝食をとり、7時半に宿を出発して8時半から登山を開始します。10時頃に山頂に到着して昼食と展望を満喫し、11時に畑ヶ平方面へ下山を開始すれば12時半には下山を完了できます。その後、湯村温泉で日帰り入浴を楽しんでから帰路につくという充実した旅が組めます。
登山ツアーに参加する場合は主催者のスケジュールに従い、上山高原ふるさと館に集合して受付と準備体操の後、ガイドとともに山頂を目指します。ツアー前日に湯村温泉に宿泊し、翌日のツアーに参加、下山後に再び温泉に浸かるというプランが特におすすめです。
氷ノ山後山那岐山国定公園における扇ノ山の自然的価値
扇ノ山は氷ノ山後山那岐山国定公園の北限に位置しています。この国定公園は中国山地の東端に位置し、兵庫県、岡山県、鳥取県の3県にまたがる広大な自然公園です。氷ノ山(1,510メートル)、後山(1,345メートル)、那岐山(1,255メートル)を中心に、扇ノ山を含む山岳地帯が公園区域となっています。
この国定公園は近畿地方でもトップクラスの自然環境を保っています。西日本では他に見られない亜寒帯の湿原植物が残されているほか、国の天然記念物であるイヌワシの生息地として保護が図られています。中腹から山頂にかけてのブナ自然林は特別保護地区に指定されており、貴重な植物が多数自生しています。山麓を流れる渓流には国の特別天然記念物であるオオサンショウウオも生息しており、生物多様性の面でも極めて重要なエリアです。
扇ノ山がこの国定公園の北端を担っていることには大きな意味があります。日本海に近い位置にあることから他の山域とは異なる独特の気候と植生を持っているのです。海からの湿った空気が山にぶつかることで降雪量が多くなり、それが豊かなブナ林を育み、春の残雪と新緑の美しい景観を生み出しています。扇ノ山の残雪と新緑のコントラストという魅力は、この地理的条件があってこそ成り立つものなのです。








