雪山登山を始める際に、最も重要な装備選びの一つが足元の滑り止め装備です。特にチェーンスパイクと12本爪アイゼンは、それぞれ異なる特性を持ち、使用する場面や登山の目的によって選び方が大きく異なります。チェーンスパイクは軽量でコンパクト、装着も簡単なため、低山や凍結した登山道での使用に適していますが、深い雪や急傾斜には対応できません。一方、12本爪アイゼンは本格的な雪山登山に必須の装備であり、前爪を使った急斜面の登攀や深雪にも対応できる高いグリップ力を持っています。初心者の方にとっては、どちらを選べばよいか、またどのような山でどちらの装備が必要なのかを判断することは難しい課題です。本記事では、チェーンスパイクと12本爪アイゼンの構造的な違いから、それぞれのメリットとデメリット、使用シーンの違い、さらには具体的な製品の選び方やメンテナンス方法まで、詳細に解説していきます。安全で楽しい雪山登山を実現するために、あなたの登山スタイルと技術レベルに最適な装備選びをサポートする内容となっています。

チェーンスパイクの基本構造と特徴
チェーンスパイクは、樹脂製またはゴム製の輪っか状のボディに、小さな滑り止めの爪がチェーンで取り付けられている構造を持っています。この爪が靴の裏全体に配置されているため、フラットフッティングと呼ばれる足裏全体で地面を踏む歩き方が苦手な方でも使いやすいという特徴があります。チェーンスパイクの最大の魅力は、その軽量性とコンパクトさにあります。両足でおよそ300g前後という軽さは、6本爪の軽アイゼンが500gから700g程度であることを考えると、重量面で約半分の軽量化を実現できます。使わないときは丸めて収納できるため、ザックの中でスペースを取らず、持ち運びに非常に便利です。
装着の簡便さもチェーンスパイクの大きな利点です。靴下を履くように簡単に装着でき、一体型でシンプルな構造のため、向きや装着手順を間違えることがほとんどありません。アイゼンのようにベルトを細かく調整する手間がなく、素早く着脱できるため、登山中に天候や路面状況が変化した際にも対応しやすいです。装着にテクニックも必要なく、初心者でもすぐに使いこなせるようになります。また、汎用性の高さも魅力的で、トレランシューズやアプローチシューズ、ライトトレッキングシューズなど、山を歩くためのほとんどのシューズに装着可能です。凍結した道や雪のない道、岩場なども、爪が小さいので装着したまま歩くことができます。価格面でも、12本爪アイゼンと比較すると比較的リーズナブルな価格で購入できるため、雪山登山を始める方にとって手が出しやすい装備と言えます。
一方で、チェーンスパイクにはいくつかの重要なデメリットがあります。まず、深い雪には対応できないという点が挙げられます。爪が小さいため、深い雪では爪がしっかりと地面に刺さらず、厳冬期の高所登山では使い物になりません。また、急傾斜での使用には限界があり、チェーンが切れてしまうリスクがあります。爪の長さが短いため、引っかかったと思っても外れて滑ってしまうことがあり、これは重大な事故につながる危険性があります。さらに、足首まですっぽり埋まるほどの新雪になると、雪がダマになってくっつき、うまく機能しなくなるという問題もあります。
チェーンスパイクが最も効果を発揮するのは、冬の低山で少々の積雪および登山道の凍結がある場合です。踏み固められた雪渓のある登山道や、雪が薄く積もっていて岩と雪のミックス状態の場所でも有効です。沢登りで泥でスリップしやすい泥壁をトラバースする場合や、山だけでなく街中での滑りやすい路面や凍結路面でも使用できます。雪があるのか凍結しているのか分からないから、とりあえず保険としてチェーンスパイクを持っていくというシチュエーションがベストな使い方とされています。
12本爪アイゼンの基本構造と特徴
12本爪アイゼンは、つま先から前方に伸びる前爪が特徴的で、足裏全体が鋭利で長い爪に覆われています。この前爪の存在が、チェーンスパイクや軽アイゼンとの最大の違いです。深い雪や凍結した急斜面を登る本格的な冬山登山には必要不可欠な装備であり、雪や氷の斜面を確実に捉えるためには、前爪がある10本から12本爪アイゼンが必須となります。2列目の爪が前に出ているほど、強い傾斜で登りやすく、トラバース時も安定してアイゼンが雪面に刺さります。
12本爪アイゼンの大きなメリットは、その高いグリップ力と安定性です。初心者のうちは、より接地面積の広い12本爪タイプが安定して歩きやすく便利です。10本爪に比べて爪が多い分、雪面との摩擦が増え滑りにくくなるため、安全性が高まります。前爪を雪や氷の斜面に蹴り込んで使うことができるため、急傾斜でも登攀が可能となります。初心者の方、特に初めて10本爪以上のアイゼンを使おうという方であれば、基本的に12本爪を選ぶべきです。10本爪に比べて爪が多い分、雪面との摩擦が増え滑りにくくなるので安全です。
軽アイゼンとの最も大きな違いは、前爪がないため蹴ることができないという点です。6本爪などの軽アイゼンは、前爪がないため急斜面での登攀には向きません。冬季でも森林限界を超えない傾斜の緩い低山や、夏季の雪渓歩きなどでは活躍しますが、本格的な雪山登山では12本爪が必要となります。
チェーンスパイクと12本爪アイゼンの使い分け
山域や標高による使い分けの目安として、標高1500m以下の低山で、奥多摩や丹沢などの初級レベルの山では、6本爪アイゼンやチェーンスパイクが適しています。一方、標高1500mから2500mの中山域、たとえば北八ヶ岳の天狗岳や谷川岳などでは、10本爪または12本爪のアイゼンが推奨されます。12本爪アイゼンとチェーンスパイクを使い分ける境界線は、一度12本爪アイゼンを使う雪山登山を経験すると理解できるようになります。12本爪アイゼンとピッケルが必要になるフィールドでチェーンスパイクを使うのは、明らかなミスチョイスであり、安全上の重大なリスクとなります。
12本爪アイゼンの選び方
12本爪アイゼンを選ぶ際には、装着方法による分類を理解することが重要です。ワンタッチ式は、爪先とかかとの2箇所を金具で止める仕様で、スムーズな着脱が可能であり、アイゼンと靴の一体感が最も優れています。足を持ち上げてアイゼンをつけることができるので、装着が早いのが特徴です。ただし、靴との相性があり、合わないまま使用すると登山中に外れることもあります。使用するためには靴の前後に専用のコバと呼ばれる装着用の切れ込みが必要です。
セミワンタッチ式は、かかとの1箇所を金具で止め、爪先はベルトなどで固定する方式です。ワンタッチ式に比べて外れてしまうことが少なく、装着も簡単です。ベルトタイプより素早く取り付けることができます。初心者へのオススメはセミワンタッチ式です。ただし、靴との相性に注意が必要で、後部にコバがある靴のみ対応しています。ベルト式(ストラップ式)は、爪先もかかともベルトで固定します。ほとんどの靴に対応できるため、汎用性の高さが魅力です。外れるリスクではストラップ式に分があります。ただし、初心者で装着間違え率がナンバー1なのがベルト式です。ベルトを巻きつける手順があり、途中で混乱する方も多いです。また、甲の柔らかい靴(夏用靴)に装着すると血行障害を起こし、凍傷を招く場合もあります。
前爪の形状についても選択が必要です。横爪(平爪)は、前爪が地面に対して水平なもので、主に縦走用として使われます。普通の雪山登山ならこちらで大丈夫です。初心者はまず横爪を選びましょう。前爪が平爪のグリベルG12の方が安定感があり、歩行しやすい感覚があります。縦爪は、前爪が地面に対して垂直なもので、クライミング用として固い氷を砕きやすい形になっています。アイスクライミングには、縦爪タイプが最適です。前爪が平たくついているアイゼンも使用することは可能ですが、縦爪の方がより氷に食い込みやすく安定します。バリエーションルートやアイスクライミングをしたくなったら、縦爪を検討すると良いでしょう。
アイゼンを選ぶ際に最も重要なことは、何よりもまず登山靴との相性です。ワンタッチ式が最もしっかりフィットすると言われていますが、それは靴との相性が良いときだけです。いちばん大事なのは靴とのフィット感で、装着方法は二の次です。フィッティング時には、ソールとアイゼンの間に隙間がないかを確認し、爪先とかかとがしっかりフィットしているかを見ます。特に爪先はソールが浮きやすいので要注意です。ソールとアイゼンの横幅がぴったり合っているかも重要なチェックポイントです。アイゼンは登山靴との相性があるので、ご自身の靴を店頭に持参して合わせるのがベストです。靴を買い換えるときなども、必ず自前のアイゼンを店舗に持っていくなどして相性を確かめましょう。
おすすめブランドと製品
グリベル(Grivel)は、登山者の6から7割くらいが使用しており、グリベルのアイゼンであれば外れはないという評価があります。圧倒的人気と安心感があり、困ったらグリベルで選んでおいて間違いありません。主要モデルとしては、G12 EVOデュアルマチック/ニュークラシックや、エアーテックEVOニューマチックがあります。初心者にはグリベルのエアーテックがオススメです。歯は短いですが、必ずしも長い歯が良いとは限りません。グリベルのアイゼンで最も人気で定番なのがG12になります。価格帯は、エアーテックシリーズが20,000円から28,600円、G12シリーズが28,000円から32,450円となっています。
ペツル(Petzl)は、様々な雪山に行きたい人にオススメのブランドです。特にバサックはオプションパーツがとにかく多く、汎用性が最も高いです。ペツルのアイゼンは軽量なモデルが多く、安定感に優れていながらも軽量性にも特徴があります。主要モデルとしては、バサック(レバーロックユニバーサル/フレックスロック)で重量840g、サルケンレバーロックユニバーサルがあります。ペツルのアイゼンであるダート、リンクス、サルケン、バサックはフロントパーツを交換できます。そのため、どれか1台と別タイプのフロントパーツだけを購入することで、縦走用の平爪とアイス用の縦爪を切り替えられます。価格帯は、バサックが20,900円から24,860円、サルケンが33,110円となっています。
ブラックダイヤモンド(Black Diamond)のセラックシリーズはステンレス製で錆びづらく、フロントレイルがコンパクトで軽量に作られています。主要モデルとしては、セラックストラップが重量ペアで860g、メーカー希望小売価格22,990円(税込み)、セラッククリップ(セミワンタッチ式)があります。ブルーアイスは、軽くてコンパクトなアイゼンが欲しい人にオススメで、圧倒的な軽さとコンパクトさ、それでいて性能は問題ありません。重量比較では、G12が最も重く、ペツルアイゼンよりも片足59gずつの重量増になります。
チェーンスパイクのおすすめモデル
モンベル(mont-bell)は、2024年から2025年秋冬シーズンにさらに高品質にアップデートした新作を登場させました。これまで扱ってきた2種類のチェーンスパイクのいいとこ取りをし、L.W.チェーンスパイクからバンド部分を、通常のモデルからチェーン部分を採用し、軽量性と耐久性のバランスを実現させています。モンベルのチェーンスパイクは装着しやすいのが大きな魅力で、バンド部分が柔らかいため女性でも簡単に着脱できます。モンベルはSサイズからあり、靴サイズ20.5cmから対応しています。モンベルのチェーンスパイクはゴムもチェーンも一番長持ちし、数年毎にマイナーチェンジを繰り返して改良されているとの評価があります。品質や信頼性を重視したい方には、モンベルなどのきちんとしたメーカーの製品をおすすめします。山道具は命を守る道具であり、mont-bellやoxtosなど、きちんとしたメーカーのものを選んでおいた方が良いとされています。
カンプ(CAMP)がラインナップするチェーンスパイク4種のなかで、スタンダードかつ進化系のモデルがエボです。アイスマスターR、アイスマスターエボ、アイスマスターライト、アイスマスターランのなかで、エボは爪の素材をカーボンスチールからステンレスに刷新し、強度と耐久性、さらには軽量性を高めました。爪は15mmと長めなのでグリップ力も確かです。カンプのチェーンスパイクは安定感があり、しっかりと歩けるのが大きな魅力です。ブラックダイヤモンドのチェーンスパイクは、両足で230gという軽量さも魅力で、1番前に爪があるので、蹴り込んだ時の食い付きは良いです。爪の本数が多いほど、雪や氷の上をしっかりとグリップすることができますが、爪の本数が多いほど重量や着脱のしにくさが増します。
初心者におすすめの雪山
雪山デビューに最適な山として、北八ヶ岳(北横岳)が挙げられます。北八ヶ岳はなだらかな山容で、山頂近くまで樹林に覆われています。冬でも入山する人が多いためルートはよく踏まれていますし、雪崩や滑落などの心配も少ないことが特徴です。ロープウェイ山頂駅は標高2237mで、山頂駅から標高差にして250m程の登りですので、雪山を体験してみるには適した山です。冬季でも晴天率が高く比較的積雪量の少ない八ヶ岳は、雪山登山者にも人気です。ロープウェイが利用できて、途中に山小屋もある北横岳は、本格的な雪山登山を始める人向けの山として賑わっています。基本的にストックと軽アイゼンがあれば登れますが、状況に応じて12本爪アイゼンも検討してください。
もう一つの初心者向けの山として、入笠山があります。スキー場のロープウェイを利用して、一気に1780mの山頂駅へ行くことができます。入笠山山頂までのコースは往復約4kmで、危険箇所も少なく冬山初心者にも最適です。入笠山(1,955m)は南アルプス最北部にある山で、山頂近くまでゴンドラリフトが通じているため、雪山初心者にも比較的容易に登頂することができる山として人気です。北横岳より樹林帯が多めであるため、雪山の天敵である風の影響をあまり受けません。ちゃんと踏み跡を辿れば軽アイゼンで登ることができます。
ただし、雪山入門の山といわれる場所でも、初めは必ず経験者の方と同行してください。必要な装備を揃えてもその使い方を十分理解していないと危険になる場合もあります。初めて雪山に行く方は、必ず雪山経験者と一緒に登るようにしましょう。積雪期はコースタイムの1.5倍の時間を見積もって行動することをお勧めします。
アイゼンのメンテナンスと保管方法
アイゼンを長く安全に使用するためには、適切なメンテナンスが欠かせません。使い終わったら、まず水洗いして泥などの汚れを落とすことが最初のステップです。汚れが付いているとさびやひび割れもわかりづらいため、特に爪の部分は念入りに洗浄します。基本は、アイゼンを使用して洗った後にしっかりと乾燥させて、サビないようにすることが重要です。使用後は乾いた布で水分を完全に拭き取ることが必須です。
錆び防止と錆び落としについては、さびが浮き始めていたら金属ブラシやスチールウールで早めにさび落としをして機械用オイルを塗布します。サビが広がる前に、紙ヤスリを使ってサビを落とすことが推奨されています。防錆処理には、サビ止めも有効です。無溶剤のシリコンスプレータイプがおすすめです。KURE 3-36で防サビ処理を行う方法も紹介されています。爪の研ぎ方については、ヤスリは爪の先に向かって一方向に動かし、基本的には押すときに研ぎます。ヤスリではなく、グラインダー(研削盤)を使う人もいるようですが、熱で金属が痛んでしまうのでおすすめしません。
保管方法については、次のシーズンまで保管するような時は、密閉してしまうとよくありません。開口部は少し開けた状態にしておくか、メッシュタイプのクランポンケースを買うことが推奨されています。風通しのいい場所で乾燥させれば、分解までしなくても大丈夫です。定期的なチェックポイントとして、アンチスノープレートやベルトは気がつくと痛んでいることが多いので、定期的に確認が必要です。ジョイント部分はゴミや汚れが入り込みやすい部分なので、特に念入りにクリーニングを行いましょう。
チェーンスパイクの耐久性と交換時期
チェーンスパイクの経年劣化について、ゴムは年数が経つと劣化することは避けられず、約5年使用後にゴムが切れるケースが報告されています。ゴムの部分はチェーンスパイクのウイークポイントとされています。使用後にきれいに洗って乾かしていても、ゴムの劣化を完全に防ぐことは難しいです。ゴムが何となく弱ってきたと感じることが劣化の兆候です。
修理と交換について、CAMPアイスマスターの場合、輸入代理店(キャラバン)に問い合わせると、購入店か取扱店を通じて修理依頼する必要があります。ゴムが裂けてしまった場合、爪がまだ使える状態なら、ジョイント部をモンキーレンチで開いて別のチェーンスパイクと組み合わせる修理も可能です。緊急時の対処法として、破損に備えて5mmの細引きやタイラップを持ち歩き、ゴムが切れた時にチェーンの輪に通して固定する方法が推奨されています。
アンチスノープレートの重要性
アンチスノープレートは、アイゼンの裏側に雪が団子状態になるのを防ぐプレートです。湿った雪質の雪山を歩いていると、凄いペースで厚底ブーツのように雪が成長してくることがあります。八ヶ岳でとんでもない量の雪ダンゴが発生したという報告もあります。この雪団子は非常に危険で、バランスを崩す原因となります。
プレートの劣化問題として、アンチスノープレートは傷が付くと雪だんごの防止機能が顕著に低下します。機能が低下した場合はアンチスノープレートを交換すれば機能回復ができますが、価格的な負担に加えて着脱が面倒なことから、交換することなく機能が低下して役に立たないものを使い続けることが多く、非常に危険です。雪山といえども岩場やがら場も多く、さらに山の石は全て砕石状に尖鋭であることからアンチスノープレートは傷付きやすいという問題があります。近年売っているアイゼンには初めから付属しているアンチスノープレートがあれば解決できる状況です。古いアイゼンの場合は自作で約1000円ほどで作ることができ、正規品の3000円から5000円に比べてかなり安く作れます。
雪山での安全対策
アイゼン装着のタイミングについて、装着するかどうか迷ったら、迷わずアイゼンを装着してください。アイゼンを持っているのに、装着しないで滑落するのは最も避けたい事態だからです。滑落事故の危険性として、どのような方法でもスピードが乗ってしまう前に止まらなければ、何をしても止まりません。ちょっとした油断や気のゆるみが命取りになるため、しっかりアイゼンの歯を地面に突き刺して、1歩1歩確かめながら歩くことが重要です。
アイスバーンでスピードが乗った状態でアイゼンの爪が雪面に引っ掛かると、足首骨折やアキレス腱断裂などの大怪我をすることがあります。アイゼンでの引っ掛けによる転倒事故が多く、反対の足の靴やロンスパを引っ掛けて転倒して谷底に滑落という事故もあります。アイゼンでの歩行はしっかりとした訓練や経験がないと重大事故につながる危険性があります。ネットや本の情報だけで雪山に向かうのは危険です。滑落停止技術は適切な雪の斜面で何度も何度も繰り返し練習すれば、それは一生モノの技術となります。ヘルメットの重要性についても触れておくと、滑落中に頭部に外傷を負い、結果としてそれが致命傷となり命を落とすケースは少なくありません。
ピッケルとアイゼンの関係
雪山の象徴のようなピッケルですが、雪山初心者レベルだと出番がほとんどありません。傾斜が急だとピッケルが必要ですが、そのような急坂のある雪山は、雪山初心者レベルだと時期尚早です。一方、傾斜が緩やかだとピッケルは不要で、ストックのほうがいいです。スノートレッキングという趣旨になると、先端にスノーバスケットをつけたトレッキングポールで行けることもありますが、雪山縦走を始めたいという方であれば揃える必要があります。
装着のタイミングの目安は、アイゼンと同様、森林限界以上になります。ストックが刺さらないような硬い雪や氷が出てきたときは、ピッケルに持ち替えるということです。また、滑落すると危険な場所では、必ずピッケルを使いましょう。購入する順番としては、4シーズン靴を持っていれば、12本爪アイゼン、ピッケル、雪山登山靴の順番だと思います。
初心者の方にとっては、雪山に定期的に行くことになるのかまだわからないのに、高価なギアをすべて揃えるのは大変なことです。そこでおすすめなのが、まずは冬山登山靴だけを購入し、その他は専門店で借りるなど、レンタルを活用してみるというものです。YAMAPレンタルでも冬山道具のレンタルサービスを展開しており、冬期登山靴、12本爪アイゼン、ピッケル、ヘルメットの「冬期登山4点セット」で、14,500円(3泊から)となっています。なお、ピッケルは買えばOKというものではなく、使い方がわかっていないと無用の長物です。滑落停止訓練など、使い方をマスターしましょう。アイゼンやピッケル、スノーセーフティのいずれも、初めて手にして扱えるものではなく、事前に使い方の練習をしておくべき装備です。
その他の必要装備
雪山のウェアも夏山と同様、レイヤリング(重ね着)の考え方が重要です。アウターレイヤー、ミドルレイヤー、ベースレイヤーの3層構成が基本となります。ウィンターゲイターについては、雪山では厚く降り積もった雪の中を歩くので、ズボンのまま歩くと裾から雪が侵入します。それを防ぐためのものがウィンターゲイターです。雪の侵入を防ぎ、防水・保温効果を高めるアイテムです。靴が雪に埋まる状態やアイゼン装着の場合は必須となります。
冬山登山靴については、雪山用はアイゼンがつま先までフィットするよう、ソールがフラットなことも特徴的です。つま先がそっているとアイゼンが密着しにくく、はずれやすくなります。冬山登山靴を選ぶには、とにかく妥協しないことが第一です。保温断熱性能、靴のフィッティング、アイゼンのフィッティング、使いやすさ動きやすさなどを総合的に検討してください。
初心者がやりがちな失敗と対策
装備に関するよくある失敗として、手袋の問題があります。ネットで流行しているボア付きゴム手袋を購入してくる初心者がいますが、これは雪山には不適切です。オーバーグローブでのアイゼン装着やジッパー操作ができない、ラッセル時に袖から濡れや風が侵入する、極寒環境(マイナス20度、風速20m)には対応できないなどの問題があります。手袋を風で飛ばされてなくし、手袋なしで行動して凍傷になり、指を切断することになった人もいます。予備の手袋は必須装備として必ず持参してください。
ウェアの選択ミスについては、一般的なスキーウェアは生地が分厚すぎて、暑くなって脱いだ時にリュックに収納できない場合があります。登山は暑くなったら脱ぐので、そのことを想定して準備する必要があります。雪山登山はハードな運動で非常に汗をかきます。汗が冷えると急激に体温が奪われるので、汗をかきそうになったらすぐ脱ぐ、寒くなったらすぐ着るという調整が重要です。
重要な安全上の注意点として、寒さによるトラブルがあります。凍傷やシモヤケ、低体温症といった寒さからくるトラブルは「濡れ」と「風」が引き金となっています。汗で濡れてしまったら乾いた服に着替えるなど、濡れた状態でいないことを徹底しましょう。特に休憩時には体が冷えやすいため、すぐに防寒着を着用することが重要です。
山選びの重要性については、トレースのない雪道を初心者が行くのは非常に危険です。また、ラッセルは非常に疲れるため、初心者がやるのは無謀と言えます。初心者こそ人気で人が多い山に行くべきです。週末の谷川岳など大人気で、トレースもつきやすく安心して登ることができます。講習の活用については、登山教室でプロに教えてもらうという方法が非常に有効です。スライドを使った道具解説や実技講習を受けることで、正しい装備の使い方や雪山での歩き方を学ぶことができます。独学では気づかない重要なポイントを専門家から直接学べるため、初心者には特におすすめです。
まとめと最終的な装備選びの指針
チェーンスパイクと12本爪アイゼンは、それぞれ異なる場面で活躍する重要な雪山装備です。チェーンスパイクは軽量でコンパクト、装着が簡単で、低山や凍結した道での使用に最適です。保険として持っていくには最適な装備と言えます。一方、12本爪アイゼンは本格的な雪山登山に必須の装備で、急斜面や深い雪にも対応できます。初心者でも10本爪より12本爪を選ぶことで、より安全に雪山を楽しむことができます。
どちらを選ぶかは、登る山の標高、傾斜、雪の状態、そしてあなたの経験レベルによって決まります。最も重要なのは、自分の技術と装備に見合った山を選び、安全第一で雪山登山を楽しむことです。購入の際は必ず自分の登山靴を店頭に持参し、フィッティングを確認してください。また、初めての雪山は必ず経験者と一緒に行き、装備の使い方を実践的に学ぶことが、安全な雪山登山への第一歩となります。装備選びに迷った場合は、信頼できる登山用品店のスタッフに相談し、自分の登山計画と技術レベルに最適な装備を選ぶことをお勧めします。









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