冬山三大リスク「吹雪・滑落・雪崩」初心者が知るべき対策を徹底解説

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冬山登山における三大リスクとは、吹雪、滑落、雪崩の3つを指します。冬山は雪に覆われた美しい景色や澄んだ空気など夏とは異なる魅力がある一方で、自然条件が格段に厳しくなるため、これらのリスクに対する十分な知識と対策が求められます。特に初心者の方は、悪天候下での転滑落やルートミス、低体温症、凍傷、雪崩など複合的な危険に遭遇する可能性が高くなることを理解しておく必要があります。

冬山でもっとも怖いのは悪天候に見舞われたときです。悪天候下では視界不良による道迷いから滑落につながるケースや、気温低下による低体温症の発症、さらには積雪状態の変化による雪崩発生など、さまざまなリスクが連鎖的に発生することがあります。本記事では、冬山登山における三大リスクである吹雪、滑落、雪崩について、それぞれの危険性と具体的な対策を詳しく解説します。初心者が安全に冬山を楽しむために必要な装備や技術、心構えについても紹介していますので、冬山登山を計画されている方はぜひ参考にしてください。

目次

冬山登山の現状と遭難統計から見るリスクの実態

山岳遭難件数の推移と現状

山岳遭難の現状を正しく把握することは、冬山登山のリスクを理解する上で重要です。警察庁の統計によると、2023年の山岳遭難件数は3126件、遭難者総数は3568人となり、いずれも統計をとり始めた1961年以降で最多を記録しました。前年比では遭難件数が111件で3.7%増、遭難者数は62人で1.8%増となっています。死者・行方不明者は335人で前年比8人増、負傷者は1400人で同94人増でした。

2024年は遭難件数が180件で5.8%減、遭難者数は211人で5.9%減となりましたが、依然として高い水準を維持しています。死者・行方不明者は300人で前年比35人減、負傷者は1390人で同10人減となりました。遭難件数は2010年代初めには2000件を切る水準でしたが、コロナ禍の一時期を除いてほぼ右肩上がりで増加傾向にあることがわかります。

遭難原因の分析と冬山特有の傾向

態様別の遭難者をみると、最も多いのが道迷いで1280人の36.5%を占めています。次いで転倒が602人で17.2%、滑落が578人で16.5%、疲労が286人で8.2%、病気が285人で8.1%となっています。

冬山に限定したデータとして、長野県山岳総合センターの調査では、2011年から2017年までの7年間に長野県内で起きた雪山での遭難事故で最も多いのは滑落で245人、次に道迷いで76人、3番目は疲労で51人という結果が出ています。冬山では滑落事故の比率が特に高いことが特徴的であり、この事実は冬山登山における歩行技術の重要性を示しています。

三大リスクその1「吹雪」の危険性と対策

吹雪とホワイトアウトがもたらす危険

吹雪は冬山における最も深刻なリスクの一つです。吹雪やガスなどでホワイトアウトになったとき、視界が白一色になってしまうと、方向どころか上下の感覚さえわからなくなることがあります。ホワイトアウトの状態では、人間の感覚がいかに視覚に頼っているかを痛感することになります。真っすぐ歩いているつもりでも全然真っ直ぐ歩けず、方向感覚も距離感もなくなってきます。

人間は視界のない状況では同じところを回ってしまう習性があり、これをリングワンデルングといいます。この状態を続けてしまうと、体力を消耗して行動不能になったり、雪庇を踏み抜いて滑落してしまうなど、深刻な遭難につながります。パニックになってあちこち動き回ると、ルートから外れるだけでなく、滑落や雪崩など他のリスクを招くことにもなりかねません。

吹雪・ホワイトアウト時の基本対策

ホワイトアウトの状態は永続的なものではありません。基本対策として、ツエルトをかぶるなどして保温に努めながら、その場で視界が開けるまで辛抱強く待つことが重要です。長時間続かないと判断できるときは、むやみに動かないことが最善の選択となります。

吹雪によって視界が悪化した場合、目的地まで予想以上に時間を要することもあります。現在地や進むべき方向を的確に見極めるためのスキルが求められるため、普段から地図読みや地形を見抜く力を養っておく必要があります。雪山ではルートを読む力が問われますので、事前の準備と訓練が欠かせません。

GPSを活用した位置確認の重要性

ホワイトアウトで視界がなくなってしまうと、まっすぐ歩くことができません。焦って歩き回ってしまうと、いつの間にかあり得ない方向に進んでしまい、余計にルートがわからなくなってしまいます。このような状況では、落ち着いてGPSで現在地を確認することが極めて重要です。

現在、多くの登山者は登山アプリのGPSを使用していますが、もしこれらを使っていなければ冬山に登ってはいけないと言っても過言ではありません。GPSを携帯していると自分の位置がわかって便利であり、適切な方向へ移動しやすくなります。正しい位置が把握できていれば、無理に移動せず視界が回復するまで待つかどうかの判断もしやすくなります。

ホワイトアウトナビゲーションの技術

ホワイトアウトナビゲーションとは、地図にポイントとなる地点を定めて、そこまでの進行方向の磁北線に対する角度、距離、標高差などを予め測っておく技術です。通常の地図読みよりも正確にこれから進む道を把握することができ、GPSと併用することでさらに安全性が高まります。

ホワイトアウトナビゲーションをきちんと作成しておけば、コンパスを頼りに正確に歩くことができます。登山用のGPSと併用するとさらに安心で、GPSに慣れれば視界ゼロの濃霧や吹雪の中でも無事に目的地に着くことも可能になります。冬山登山を計画する際は、事前にルート上のポイントを設定しておくことをおすすめします。

三大リスクその2「滑落」の危険性と対策

冬山における滑落事故の実態

冬山での遭難事故で最も多いのが滑落です。雪山では一度転んでしまうと、雪や氷で滑って制動が難しくなります。初期制動や滑落停止など危険を回避する技術はありますが、効果的に発動させるのは雪山上級者であっても至難の業です。

転滑落事故を防ぐ最も重要なポイントは、つぼ足にしろアイゼンワークにしろ、正しい歩行技術をマスターすることです。特に初心者は、雪山講習会やガイド登山などを通して、この基本中の基本である技術をしっかり身につけておくことが必要です。

基本の歩行技術「フラットフッティング」

雪山こそ基本の歩行技術が重要です。初心者向けの雪山ツアーでも、まず始めにレクチャーするのが基本の歩行技術であり、転ばないように歩くことを目指します。

アイゼンをつけての歩行もフラットフッティングが基本で、すべての爪が雪面に刺さるようにします。硬い雪や氷、急な斜面が現れたらアイゼンの出番です。アイゼンをしっかり装着し確実に歩行するというアイゼンワークは、雪山登山でとても重要になります。これがうまくできれば、転倒や滑落を防ぐことができます。

アイゼンワークとピッケルワークの習得

アイゼンワークがきちんとできていないと、転倒や滑落のリスクが高まります。ピッケルを杖代わりに使用するときは、あくまでもバランスの補助であり、ピッケルに体重を乗せすぎないよう注意が必要です。登行時は基本的にアイゼンワークが主体となります。トラバースの際も、基本はアイゼンワークであり、ピッケルは山側の手に持ち替えてバランス補助として使用します。

冬山講習では滑落停止を想像する方もいますが、滑落自体を防ぐための確実なアイゼン歩行とピッケルワークを優先して練習することが重要です。

ピッケルの正しい持ち方と使い方

登山中の通常のピッケルの持ち方は、ピックを後ろ側にするのが一般的です。この持ち方であれば、すぐに滑落停止の姿勢に入ることができます。急斜面では最初にさっとピックを雪に刺して止める意味で、ピックを前にする持ち方も有効です。

登りではピックを前に、下りではピックを後ろに向けて持っていれば、バランスを崩した際にピックを素早く雪面に刺して滑落を防止することができます。トラバースではピックを後ろに向けつつ、ピッケル自体を山側の手に持って行動すると安全です。

滑落停止の技術とポイント

雪山登山で絶対に必要な技術がピッケルによる滑落停止です。滑落停止のコツは、足を上げることとピックに全体重をかけることの2つです。

初期制動でも止まらない場合は、すぐに滑落停止姿勢に入ります。ピッケルの持ち手でないもう一方の手でシャフトの下方を握り、上半身を半身にして、胸のあたりでピックを刺し、上半身の体重を乗せるようにします。重要なポイントとして、ピッケルを胸から絶対に離さないこと、アイゼンが雪面に引っかからないようひざを曲げて足を上げること、シャフトを握った手は雪面から持ち上げるようにしてピックの刺さりを利かせることが挙げられます。

滑落停止の動作中はアイゼンを装着した足を上げて雪面に触れないようにすることが必須です。アイゼンの爪が雪面に触れたとたん、足を軸にして身体が反転してしまい、頭から滑落してしまう危険があります。

訓練の重要性と練習方法

滑落停止は重要なピッケルワークですが、そもそも滑落すること自体が大きなリスクです。止まらない斜面ではピッケル1本で停止することが難しい場面も多々あります。

雪の斜面での練習方法として、仰向け、逆さ仰向け、前転、後転、全ての状態を試すことが推奨されています。最も効果的な方法は、ザイルで確保された状態でなるべく急な斜面で練習することです。雪山山行日数よりも訓練日数を増やすことが大切であり、技術の習得には継続的な練習が不可欠です。

三大リスクその3「雪崩」の危険性と対策

雪崩の基本的な理解

山腹に積もった雪が重力の作用によって斜面を崩れ落ちることを雪崩といいます。雪崩には厳冬期に多く起きる表層雪崩と、春先に多く起きる全層雪崩の2種類があります。

雪崩は予測が難しい面もあり、昔から安全とされてきたルートや場所で突然雪崩事故が発生することもあります。ドカ雪や強風、急激な気温の上昇など、極端な気象現象や気象変化は積雪の状態を不安定にし、雪崩のリスクを高めます。

表層雪崩の特徴と発生条件

表層雪崩とは、斜面に積もっている古い雪の上に新たに雪が積もり、この新雪部分の層が滑り落ちる現象です。発生しやすい時期は、寒さが厳しく雪の降りやすい1月から2月頃にかけてです。雪崩のスピードは時速100kmから200kmで、新幹線並みの速さとなります。

表層雪崩は、積雪の途中に形成された弱層と呼ばれる層を境にして滑り落ちます。弱層とは新雪と旧雪の境目などに形成される不安定な層のことで、この弱層の存在が表層雪崩発生の鍵となっています。

全層雪崩の特徴と発生条件

全層雪崩とは、山に積もった雪が全て滑り落ちる現象です。春先などの気温が上昇する時期や、雨が降った後、フェーン現象などで気温が上がったときなどに多く発生します。斜面の上の固くて重い雪が全て流れるように滑り落ち、雪崩のスピードは時速40kmから80kmで自動車並みの速さです。

全層雪崩は、融雪や降雨によって積雪と地面の間に水が入るなど、積雪と地面との間の摩擦力が弱まったときに発生します。積雪が全て滑り落ちるため、表層雪崩よりも規模が大きくなることがあります。

雪崩の発生メカニズム

斜面に積もっている雪は、雪粒同士の結合しようとする力の他に、落下しようとする斜面下側に向かう力と、斜面上側に働く地面との摩擦力が釣り合う形となっています。雪崩は、この釣り合いが保たれている状況が、気温の変化や降雪、降雨、雪質の変化などの何らかの原因によりバランスが崩れてしまうことで発生します。

面発生雪崩が誘発されるときは、コンマ数秒の間に人の刺激がスラブを通して弱層に届き、弱層の破壊が起こり、その破壊現象が弱層に沿って広がり、下支えを失ったスラブが引張破壊を起こして雪崩となって動き出します。

雪崩の危険箇所と前兆現象

集落を対象とした雪崩の危険箇所は全国に20,501箇所も存在します。低木林やまばらな植生の斜面では雪崩発生の危険が高くなります。ササや草に覆われた斜面は裸地よりも危険とされています。

雪崩の前兆として、いくつかの現象が知られています。雪庇は山の尾根からの雪の張り出しで、表層雪崩は雪庇ができている所で多く発生します。スノーボールは斜面をコロコロ落ちてくるボールのような雪のかたまりです。クラックは斜面にひっかきキズがついたような雪の裂け目で、その動きが大きくなると全層雪崩が起こる可能性があります。雪しわはふやけた指先のようなしわ状の雪の模様で、全層雪崩が起こる危険があります。

雪崩対策の三種の神器

雪山に行くからには、ビーコン、プローブ、シャベルは必携です。雪崩講習会に参加するなどして、確実に使いこなせるようにしておくことが大切です。これら3つの装備は三種の神器と呼ばれ、各メンバーが各自で所持していないと意味がありません。

ビーコン(アバランチビーコン) は雪崩に巻き込まれて埋まってしまった人の位置を特定するために必要な機器です。通常は無線信号を発信する送信モードにセットしておき、雪崩が発生したら捜索者側が受信モードに切り替え、埋没者のビーコンが発する信号を捉える形で位置を探し当てます。ビーコンをつけていない埋没者を見つけるのは極めて困難で、その場合の生存率はほぼゼロに等しいと言われています。電池残量が60%を切ったら新しい電池と交換し、古い電池と新しい電池を混ぜたり充電池を使うことは避けましょう。

プローブ(ゾンデ棒) は、ビーコンで埋没者のおよその位置を探し当てた後に、より正確に埋まっている場所を特定するために使う探り棒です。40cmから50cm程度の長さの棒がワイヤー等で繋がっており、収納するときは折り畳まれています。使用時に展開して1本の長い棒にし、雪面に突き刺して使用します。プローブの角度は雪面に対して垂直の90度になるよう差し込むのがポイントです。特定ができたらプローブは抜かずに残し、その周辺をスコップで掘っていきます。プローブの先端が埋没者にヒットするという感覚は、初めての経験では確信しにくいものであり、その感覚をつかむには事前のトレーニングが必要です。

シャベル(スノーショベル) はビーコンとプローブで探し出した人を雪の下から掘り起こすためのものです。埋没者の掘り起こし以外にも、雪洞掘りや雪の壁作りなど幅広い用途に使用します。埋没者を一刻も早く呼吸させるために、目印に残したプローブのまわりを全力で掘り進めます。埋没者はどのような体勢で埋まっているかわからないので、プローブの先端部が近づいたらシャベルで傷つけないように慎重に掘ります。

雪崩レスキューの手順

誰かが雪崩に巻き込まれたときの手順は明確に定められています。まずビーコンを受信モードに切り替えて埋没場所を探し、次にプローブを長く伸ばして雪面に刺して埋没者のいる場所を特定し、その後ショベルで掘って救援します。

無事だった者全員のビーコンを捜索モードに切り替え、見張り役をひとり安全地帯に残し、ビーコン捜索に慣れている人が捜索にあたります。雪崩埋没者のいることが確定的となれば時間との勝負であり、通常30分も経つと死者が出始めます。埋没者の顔が出ても口や鼻に雪が詰まり呼吸ができない可能性もあるので、気道確保を最優先にします。できるだけ温かく保温し、出血がひどい場合は止血も行います。

プローブやスノーショベルもザックに外付けせず、ザック内に収納することが推奨されています。雪崩に巻き込まれたときに幸運にも自分が完全に埋没せず脱出できても、外付けでは流されて紛失してしまう可能性があるためです。

低体温症と凍傷への対策

低体温症の危険性と発症条件

低体温症とは、深部体温が何らかの理由で35度以下に下がってしまう状態です。通常は人体が備えている恒常性であるホメオスタシスによって、体温を常に正常域に保つよう調整していますが、深部体温が正常域より下がるということは、人体の調整機能から逸脱してしまった緊急事態を意味します。

低体温症は冬場や雪山など、そもそも気温が低い寒冷環境で発症しやすいと思われがちですが、実際には冬以外の季節や無積雪期の山でも多くの発症例が発生しています。水の熱伝導率は空気の20倍以上であり、雨などで濡れた衣服を着用したままだと身体の熱が急速に奪われてしまいます。

低体温症の予防方法

低体温症は予防が最も重要です。何より悪天時は行動を控えることが基本となります。良質な防風着上下、中間着、シャツ、ズボン、下着、靴、靴下、手袋、帽子で全身を保護し、体の周囲の動かない空気の層を厚くすることが大事です。一方で、不必要に汗で濡れないように、こまめに衣類を着脱して調節することも大事です。

意識は正常でも、寒気や震えが始まり、細かい手の動きに支障をきたすようになれば、低体温症の前兆です。この段階を見過ごしてはいけません。ただちにテントや小屋に避難して暖房し、乾いた衣服に替え、寝袋に入って保温しましょう。

低体温症の対処法

低体温症の症状が現われたら、風が避けられる暖かい場所に移動し、安静にさせて保温に努めることが重要です。着ている服が濡れていれば着替えさせ、シュラフに入れて身体を温めます。水筒にお湯を入れた簡易湯たんぽや使い捨てカイロなどで首筋や腋窩、鼡径部を温めるのも効果的です。

ただし、アルコール類やカフェインの入った飲料は血管を収縮・拡張させる作用があるので与えてはいけません。

凍傷の症状と原因

凍傷の症状として、全身の低体温による指先の麻痺やしびれ、寒さで体の組織が凍る、手足の指先や鼻先、頬、耳に起こりやすい、赤紫色に変色して腫れる、水泡ができる、重症は壊死で切断手術が必要となることがあるなどが挙げられます。

低体温症と凍傷は低温下で引き起こされます。予防にはまず保温が大切であり、衣服や手袋など身につけたものは濡らさないこと、風をシャットアウトすること、肌を露出しないことなどがポイントです。

凍傷対策のポイント

凍傷対策として、低体温にならないこと、頭部、顔面、手先に防寒具を着用して保温に努めること、手袋や靴紐をきつく締めすぎないこと、手袋や靴下が濡れたら替えること、腕を振ったり指先を動かすこと、炭水化物を充分に摂ること、お酒や喫煙は体温が下がるので厳禁であることが重要です。

冬山登山に必要な装備と選び方

レイヤリング(重ね着)の基本

冬山の服装こそ効果的なレイヤリングが重要です。ベースレイヤー、ミッドレイヤー、アウターシェルの3層で調整します。

氷点下の気温では、汗で下着が濡れたままの状態は凍傷や低体温症を招き、大変危険です。ベースレイヤーとしてアンダーウェアの下着と、インナーウェアの長袖シャツやタイツは、雪山登山に適応した保温力のある化学繊維やウール素材のものを必ず用意することが重要です。

意外と重要なのがグローブのレイヤリングで、薄手のインナーグローブに防風と保温ができるアウターグローブを重ねます。インナーグローブが濡れると凍傷のリスクが高まるため、必ず替えのインナーグローブを携帯しましょう。

アイゼンの選び方

アイゼンは主に10本爪と12本爪の2タイプがあります。初心者の方、特に初めて10本爪以上のアイゼンを使おうという方は、基本的に12本爪を選ぶべきでしょう。10本爪に比べ爪が多い分、雪面との摩擦が増え滑りにくくなるので安全です。

アイゼンのタイプには3種類あります。ワンタッチ式は登山靴の前と後のコバである溝にはめ込むタイプです。セミワンタッチ式は前はカップなどで後がワンタッチになっています。一本締め式は前も後もカップとベルトで締めるタイプです。セミワンタッチアイゼンはつま先に溝がない4シーズンブーツでも取り付けられます。アイゼンの素材はクロモリ合金が最も無難であり、アルミは強度がないために太めに作られており、爪がシャープではないので固い氷に食い込みにくい場合があります。

ピッケルの選び方

ピッケルは土木作業に使うつるはしのような形をした道具です。シャフトという棒の部分にヘッドがついています。初心者は硬い雪や氷の上でバランスを取るため、杖のように使うことがほとんどです。

シャフトの形状について、ピッケルのシャフトはベントシャフトとストレートシャフトに分かれます。シャフトがまっすぐだと杖のように使いやすく、スノーウォーキングなどに向いています。入門者向けの手頃なモデルに採用されることが多いです。

長さの選び方として、ピッケルを持って体の横に付けたときに、ちょうどくるぶしくらいにある長さがちょうどいいサイズ感です。実際には雪が積もった状態で使うため、長すぎても扱いにくく、短すぎても身体を支えるには不十分です。

規格について、CENでは強度の違いによってテクニカルとベーシックの2つに分類されます。ベーシックは初心者用に設計されていて軽量で、主に滑落防止などの緊急時に使用します。クライミングをしない登山であればベーシックでも十分です。

リーシュについて、ピッケルバンドは肩掛けにして使うショルダータイプと、手首にループをかけて使うリストタイプの2種類があります。ショルダータイプはバンドが長いため、ピッケルを左右で持ち替えやすく、初心者にはおすすめです。

冬山用登山靴とゲイター

冬山用登山靴は、ゴアテックスデュラサーモやプリマロフトなど保温材が入ったもので、靴底がしっかりとしてアイゼンがしっかりと装着できるものを選びましょう。サイズが小さすぎると冷えやすくなります。

ゲイターはロングタイプが雪山では必携装備で、雪の侵入を防ぐのが一番の目的です。アイゼンを履いた場合のパンツの裾の保護にもなります。

装備のレンタル活用

アイゼンやピッケルに加え、冬山用の登山靴やウエアについても、登山道具のレンタル専門店で借りることができます。1泊からの貸し出しで、アイゼンは4,000円前後、ピッケルは3,000円前後が相場です。

冬山装備はサイズ感やギア同士の相性がとても重要なので、フィッティングして購入することをおすすめします。

初心者が冬山登山を始めるためのアドバイス

山選びのポイント

冬山の知識をしっかりと身につけ、きちんと準備をし、注意点を守れば、安全に楽しむことができる山はたくさんあります。初心者には、標高が低くコースタイムが短い山を選ぶことが推奨されており、具体的な目安としてはコースタイムが4時間以内の山が挑戦しやすいです。

講習会やガイドツアーへの参加

初めて雪山に挑戦するなら、まずは講習会に参加してみたり、ツアーに参加して実地で体験することが、雪山登山をより安全に楽しむ近道といえます。

2024年から2025年の冬シーズンでは、プロの登山ガイドによるオンラインでの事前机上講習と冬山での実技を組み合わせた講習が開催されており、初心者向けの入門講座として2025年1月から実施されています。モンベル・アウトドア・チャレンジでは、雪山登山をより安全に楽しむために、最も重要なピッケルワークとアイゼンワークなどの技術を習得できる講習会を開催しています。

登山届の提出と事前準備

警察庁は、天候や積雪の状況、滑走するコースや地形を必ず確認し、登山計画書および登山届の提出、必要な装備品を携帯するなど、事前の準備を徹底するよう呼びかけています。登山届は遭難時の捜索活動において非常に重要な情報となるため、必ず提出しましょう。

天気予報の確認方法

冬山登山では天気予報の確認が極めて重要です。一般的な天気予報は広いエリアごとに予報されており、山岳地帯の気象条件を正確に反映していないことがあります。山岳気象は周辺の地形などの影響を受けやすく、予報と実際の気象状況は異なる場合があります。

山岳専門の天気予報サービスとしては、ヤマテンやtenki.jp登山天気、YAMAPなどがあり、山頂の天気予報を詳細に確認できます。予報はあくまでも予報であり、天気図を読めるようになれば、天気予報に自分なりの解釈を加えて微細な天気の変化を予測でき、雲の観察で天気の急変を事前に察知できる可能性があります。

悪天候時の判断基準として、その先に進んで体力の回復が図れるかという点で有人山小屋の有無などを確認すること、危険箇所のリスクが増大しないかを評価すること、朝起きた時の体調を確認することが挙げられています。カッパを着ていても稜線で強風だと寒く、体力を消耗するため食糧の消費も激しくなります。水や食糧の不安が出るようなら撤退すべきとされています。

冬山登山に臨む心構え

冬山登山は、ほかのシーズンと比較すると自然条件が厳しくなるため、より周到なリスクマネジメントが求められます。事前の準備と正しい知識、適切な装備、そして謙虚な姿勢で山と向き合うことが、安全な冬山登山への第一歩です。

冬山は危険と隣り合わせですが、正しい知識と準備があれば、夏山とは全く異なる素晴らしい体験ができます。安全第一で、冬山登山を楽しんでください。

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