赤石岳の登山を椹島から目指す縦走は、南アルプス南部を代表する山旅です。赤石岳(あかいしだけ)は標高3,120.5メートルの日本百名山で、椹島(さわらじま)は赤石岳登山の主要な拠点となる集落跡地です。本記事では、椹島を起点とした赤石岳の登山ルート、荒川三山との縦走計画、椹島ロッジへのアクセスや宿泊情報、2026年に予定されている修繕工事の影響、必要な装備や難易度、危険箇所までを総合的に整理します。標準コースタイム、コース上の山小屋情報、登山適期も網羅しており、これから縦走計画を立てる方が必要な情報をひと通り把握できる内容です。本記事の執筆基準日は2026年6月9日で、最新の運行・営業情報を反映しています。

赤石岳とは|南アルプス南部の盟主と呼ばれる3,120メートルの百名山
赤石岳は、静岡県静岡市葵区と長野県下伊那郡大鹿村の県境に位置する標高3,120.5メートルの山です。 赤石山脈(南アルプス)の主峰の一つで、日本百名山にも選ばれています。南アルプスの山々の中では北岳、間ノ岳、悪沢岳に次いで4番目の高さを誇り、南アルプス南部の盟主として登山者から広く知られている存在です。
山体は輝緑凝灰岩や火砕岩などから構成されており、稜線の東側斜面にはいくつかの圏谷(カール)が見られます。これらは日本国内では最南端の氷河の痕跡とされ、南西斜面には「ゴーロ帯」と呼ばれる岩石氷河の地形も見られます。山頂付近では線状凹地が確認できるなど、氷河地形の宝庫として地質学的にも注目される山です。
山頂からの展望は360度のパノラマで、富士山、奥秩父連峰、八ヶ岳、北アルプスの槍ヶ岳や穂高連峰、中央アルプス、御嶽山まで見渡せます。山頂には国内最高所の一等三角点が設置されており、登山者にとって特別な意味を持つ場所です。山頂直下には赤石岳避難小屋が建てられており、緊急時の宿泊も可能となっています。
「赤石」という名前は、赤石沢に多く見られる赤色チャート(ラジオラリア板岩)の岩盤に由来します。山頂付近に露出する赤赭色のラジオラリア板岩の様相から名づけられたという説が有力で、この赤色チャートはシルル紀からジュラ紀にかけての深海に堆積した放散虫の殻が固まったものです。「赤石山脈」という山脈の名称も、この赤石岳から転用されたものとされています。1886年(明治19年)には修験者の堀本丈吉が長野県側から道を拓き、明治時代に参拝登山が盛んに行われるようになりました。
椹島とは|赤石岳登山の玄関口となる集落跡地
椹島は、大井川の最上流部、静岡市葵区に位置する標高約1,120メートルの集落跡地で、現在は南アルプス南部登山の主要な拠点となっています。 江戸時代から明治・大正にかけては林業で栄えた地ですが、現在は特種東海フォレスト株式会社が管理・運営する椹島ロッジが建ち、登山者のベースキャンプとして機能しています。
椹島は赤石岳のほか、荒川三山(悪沢岳・荒川中岳・荒川前岳)、聖岳、光岳などへの登山口でもあり、南アルプス南部の玄関口として多くの登山者に利用されています。周囲は深い森に囲まれており、原生的な自然環境のなかにある拠点という点が特徴です。
椹島へのアクセス方法と送迎バスの利用条件
椹島は一般車両の通行が禁止されている東俣林道の奥に位置しており、自家用車での直接乗り入れはできません。アクセスには特種東海フォレスト株式会社が運行する専用の送迎バスを利用する必要があります。 この点が、赤石岳・椹島縦走の計画段階で最も重要な前提条件です。
送迎バスを利用するためには、椹島ロッジまたは特種東海フォレストが管理する山小屋(千枚小屋、赤石小屋、荒川小屋、百間洞山の家、熊ノ平小屋など)に1泊以上、素泊まりではなく1食以上付きの宿泊を予約することが条件となっています。テント泊のみの登山者は送迎バスを利用できないため、計画段階で十分に注意したいポイントです。
駐車場とバス乗り場については、椹島の手前約2キロメートルの地点、畑薙第一ダム付近に夏季臨時駐車場が設置されています。約300台の駐車が可能で、無料で利用でき、仮設トイレも併設されています。送迎バスはこの駐車場から出発する仕組みです。
2026年の送迎バス運行期間は7月11日から10月12日までの予定で、例年7月上旬から10月中旬までの運行が行われています。2025年は7月11日から10月13日までの運行が実施されました。公共交通機関を利用する場合は、JR東海道新幹線の静岡駅からJRバス関東の路線バスで静岡市内を経由し、畑薙第一ダムバス停までアクセスする方法があります。夏季のみの運行のため、東京・名古屋方面からのアクセスも含め、事前に時刻表を確認することが重要です。
椹島ロッジの宿泊情報と2026年の修繕工事
椹島ロッジは特種東海フォレストが運営する宿泊施設で、南アルプス登山の拠点として機能しています。営業期間は例年4月下旬から11月上旬で、2025年は4月26日から11月3日まで営業しました。2026年は修繕工事のため、7月11日から8月31日の宿泊休業が予定されているため、最新情報を確認することが極めて重要です。
宿泊料金は、シーズン(7月11日から10月13日)の1泊2食付きが2名1室利用で15,000円、シーズン前後は1泊2食付きで11,000円となっています。食事のみの利用も可能で、夕食2,500円、朝食1,500円、弁当1,500円という料金体系です。
テント場は芝生広場に約20張のテントサイトがあり、幕営料は入浴料込みで1人2,000円です。水場は自炊棟を利用し、トイレは自炊棟に併設されています。施設としてはお風呂、売店、レストハウス(コーヒー、アイスクリーム、生ビールなどを販売)、個室、自炊室、乾燥室などが整備されており、登山前夜の前泊や下山後の休憩地として活用されています。
予約方法は、7月11日以降の宿泊について毎年6月よりWeb予約が開始されます。それ以前は電話での受け付けとなり、予約なしの場合は宿泊料金が1,000円加算される仕組みです。
椹島から赤石岳を目指す主要登山ルート
椹島から赤石岳を目指す登山ルートは主に2つあります。それぞれのルートに特徴と難所があるため、計画段階で十分な検討が必要です。
大倉尾根(東尾根)コース|赤石岳ピストン向け
大倉尾根コースは、椹島から赤石岳の東尾根を経由して山頂に至るルートです。この尾根の名称は、明治時代に大倉財閥の製材会社が林業を営んでいたことに由来します。コースタイムは登り合計で約7〜8時間、下り合計で約6時間です。
主要区間ごとの標準的なコースタイムは以下の通りです。
| 区間 | 標準コースタイム |
|---|---|
| 椹島ロッジ(1,120m)→中電基準点 | 約55分 |
| 中電基準点→樺段 | 約60分 |
| 樺段→ボッカ返し | 約135分 |
| ボッカ返し→赤石小屋(2,564m) | 約70分 |
| 赤石小屋→富士見平 | 約45分 |
| 富士見平→砲台型休憩所 | 約60分 |
| 砲台型休憩所→赤石岳山頂(3,120.5m) | 約70分 |
「ボッカ返し」と呼ばれる急登区間は、かつて荷揚げをする際に引き返したくなるほどの急傾斜であることからこの名で呼ばれており、登山者にとって体力的な難所です。赤石小屋を過ぎると視界が開け、富士見平からは天候が良ければ富士山の眺望が楽しめます。
このルートで赤石岳をピストン(往復)する場合は2泊3日が一般的で、1日目に椹島から赤石小屋か椹島ロッジに宿泊し、2日目に山頂を往復して赤石小屋に宿泊、3日目に下山するという行程が標準的な組み方です。
千枚尾根(蕨段)コース|縦走の出発点
千枚尾根コースは、椹島から千枚岳方面に延びる尾根を登り、千枚岳、悪沢岳(荒川東岳)、荒川三山を経由するルートです。このルートは荒川三山と赤石岳を周回する縦走コースの出発点としても利用されます。標準的なコースタイムは、椹島ロッジから小石下まで約1時間、小石下から清水平まで約1時間15分、清水平から見晴台まで約1時間、見晴台から千枚小屋まで約2時間で、椹島から千枚小屋までの登り合計は約5時間15分となっています。
椹島を起点とした荒川三山・赤石岳の縦走コース
椹島を起点・終点とした荒川三山と赤石岳の縦走は、南アルプス南部を代表する人気コースで、一般的に2泊3日または3泊4日で計画されます。 反時計回りで千枚尾根から登り、赤石岳を経由して大倉尾根を下山するルートが代表的な行程となっています。
2泊3日コースの行程は、1日目に椹島ロッジを朝早くに出発し、千枚尾根を登って小石下、清水平、見晴台を経て千枚小屋(標高2,731m)へ約6時間15分で到着します。2日目は千枚小屋から千枚岳(標高2,880m)へ約50分、千枚岳から悪沢岳(標高3,141m)へ約1時間30分、悪沢岳から荒川中岳(標高3,083m)へ約1時間10分、荒川中岳から荒川前岳(標高3,068m)へ約15分、前岳から荒川小屋(標高2,615m)へ約1時間10分という縦走で、合計約5時間の行程です。
3日目は荒川小屋から大聖寺平(標高2,671m)へ約40分、大聖寺平から小赤石岳の肩(標高3,040m)へ約1時間、小赤石岳の肩から赤石岳山頂へ約55分、赤石岳から富士見平(標高2,784m)へ約2時間5分、富士見平から赤石小屋へ約30分、赤石小屋から椹島へ約3時間35分という長丁場で、合計約8時間45分の行程となります。
聖岳も加える3泊4日縦走の場合は、3日目に荒川小屋から赤石岳を経由して百間洞山の家まで約5時間30分の行程とし、4日目に百間洞山の家から椹島または聖沢登山口まで約6〜8時間で下山する計画が組まれます。聖岳(標高3,013m)や光岳まで足を延ばす縦走者も多く、南アルプスの大縦走を楽しめる山域です。
縦走コース上の山小屋情報
縦走コース上には複数の山小屋が点在しており、計画段階で各小屋の特徴を押さえておくことが重要です。主要な山小屋を整理すると以下の通りです。
| 山小屋名 | 標高 | 位置・特徴 |
|---|---|---|
| 千枚小屋 | 2,731m | 椹島から千枚尾根を登りきった場所。展望良好 |
| 荒川小屋 | 2,615m | 荒川三山の南側。南面の大規模なお花畑が有名 |
| 赤石小屋 | 2,564m | 大倉尾根の中腹。椹島から赤石岳への中継点 |
| 百間洞山の家 | 2,620m | 赤石岳の南側。名物のとんかつが縦走者に人気 |
| 中岳避難小屋 | 3,083m | 荒川中岳山頂直下の避難小屋 |
| 赤石岳避難小屋 | 3,100m | 赤石岳山頂直下の避難小屋 |
千枚小屋、荒川小屋、赤石小屋はいずれも素泊まり11,000円、夕食2,500円、朝食・弁当各1,500円という料金体系で、事前予約が必須です。営業期間は例年7月中旬から10月中旬で、6月から予約受け付けが始まります。
赤石小屋では水場が小屋入り口付近の水タンクから自由に利用でき、通過登山者も無料で水を補給できます。テント場は小屋から少し下った場所にあり、約15張が可能です。百間洞山の家は名物の「とんかつ」が縦走者に大人気で、下山後の楽しみの一つとなっています。2026年は百間洞山の家も修繕工事のため、小屋宿泊は7月11日から8月31日(予定)のみとなり、テント泊・物品販売は工事終了まで継続される予定です。
縦走コースの見どころ|お花畑・展望・氷河地形
椹島から赤石岳を目指す縦走コース最大の魅力の一つが、南アルプスを代表する広大なお花畑です。特に荒川前岳南斜面から荒川小屋周辺にかけての広大なカールは、夏になると色鮮やかな高山植物が咲き乱れる日本有数のお花畑として知られています。シナノキンバイ、ハクサンイチゲ、ミヤマキンバイ、クロユリ、ミヤマキンポウゲなどが競い合うように咲き、まるで天上の楽園のような光景を作り出します。
北沢の源頭部付近は、南アルプス南部でも最高と称されるほどの高山植物の宝庫で、登山者の目を楽しませてくれるエリアです。また、千枚小屋周辺の千枚岳、悪沢岳南西面、中岳から荒川小屋の間にも広大なお花畑が広がっており、縦走を通じて何度も高山植物との出会いを楽しめます。
稜線上に出ると、天候の良い日には終日富士山を望みながら歩くことができます。赤石岳山頂からの360度パノラマは格別で、東に富士山、西に中央アルプスと御嶽山、北に北岳・間ノ岳・悪沢岳、南に聖岳・光岳と、南アルプスのほぼ全貌が視野に入ります。悪沢岳の山頂からも雄大な展望が楽しめ、南アルプスの稜線が続く様子は見る者を圧倒する光景です。
9月下旬から10月上旬にかけては稜線付近から紅葉が始まり、赤や黄色に染まった山肌と残雪のコントラストが美しい時期となります。富士山を背景にした紅葉の稜線歩きは、秋のアルプス登山ならではの楽しみです。赤石岳の稜線から見下ろす圏谷地形は、かつて氷河が存在した証であり、日本国内で最南端の氷河地形として学術的にも注目されているため、地質や地形に興味のある登山者にとっては見逃せないポイントとなっています。
赤石岳・椹島縦走の難易度と必要な体力
赤石岳の登山難易度は「上級」に分類されます。 椹島から赤石岳への往復の場合、平均斜度は約8.9度、総歩行時間は約11時間以上、往復距離は約17キロメートル、累積標高差は2,618メートルに達します。必要な水分量の目安は3.6リットル、消費カロリーの目安は約4,998キロカロリーとされており、十分な体力が求められる山行です。
荒川三山との縦走コースは総計で約17〜20キロメートルを超えることもあり、複数日にわたる行動に耐えられる体力と、山岳テント泊または山小屋泊の経験が望ましいレベルとなっています。初心者が単独で臨むには難しいルートであり、経験豊富な仲間やガイドと共に登ることが推奨されます。「日帰り不可」とされる山の一つであり、最低でも1泊2日、余裕を持った山行には2泊3日が推奨されています。
危険箇所と注意事項
東尾根(大倉尾根)は椹島と赤石小屋を結ぶ区間で全体を通じて急坂が続き、「ボッカ返し」と呼ばれる区間は特に急傾斜のため、下山時には十分な注意が必要です。南アルプス南部での登山事故の多くは、この東尾根の下りで発生していることが報告されており、疲労の蓄積する3日目の下山時には特に慎重な行動が求められます。
北沢の源頭付近は、雪の影響で登山道が崩れることがあります。毎年登山道の状況が変わることがあるため、事前に最新情報を山小屋または特種東海フォレストのWebサイト等で確認することが重要です。南アルプスは高気圧の縁を歩くような天気になることが多く、午後から雷雨が発生しやすい山域となっています。10月上旬には初冠雪を見る年もあり、気温の急変や強風にも注意が必要なため、防寒・防風着は必携です。
ダマシ平は平坦な地形で、霧や視界不良時にルートを見失う恐れがあります。GPSや地図での現在地確認を常に行い、視界不良時は無理に進まず天候の回復を待つことが重要です。長時間の行動に備え、水分は十分に持参する必要があります。コース上の水場は限られており、特に稜線上では水の補給ポイントが少ないため、出発前に水場の位置を確認し、計画的に補給を行うことが求められます。
必要装備と登山適期
赤石岳・荒川三山縦走に必要な基本装備は、ハイカット・防水タイプの登山靴、30〜40リットル程度の登山用ザック、上下セパレートタイプの雨具、フリースやダウンなどの防寒着、予備電池を含むヘッドライト、地図・コンパス・GPS、絆創膏や包帯などの救急セット、ビバーク用のエマージェンシーシートなどです。
飲食面では、出発時の水は2リットル以上、山小屋での補給を計画して準備します。カロリーバー、ナッツ、ゼリー飲料などの行動食も必須で、山小屋泊の場合は弁当の手配も考慮するとよいでしょう。季節による追加装備として、初夏や秋には手袋や防風タイプの帽子、7月初旬には稜線上に残雪がある場合があるため、チェーンスパイクや軽アイゼンの携行が推奨されます。テント泊の場合は、山岳用テント、夏用でも氷点下5度対応以上の寝袋、マット、ガスバーナー・コッヘルなどが追加で必要となります。
赤石岳の登山適期は7月中旬から10月中旬です。 7月中旬から8月にかけては梅雨明け後に安定した晴天が続くことが多く、高山植物が最盛期を迎える時期で、荒川小屋周辺のお花畑は特に美しい季節となります。9月は天候が安定し、虫も減少し、気温も涼しくなって歩きやすい時期です。山小屋の混雑も夏季ピーク時より落ち着いてきます。10月上旬から中旬は紅葉の最盛期で、稜線上では9月下旬から始まり、10月上旬には美しい紅葉景色が広がります。ただし急激な気温低下や初冠雪のリスクもあるため、防寒対策を十分に行うことが必要です。
下山後のおすすめ|南アルプス赤石温泉白樺荘
畑薙第一ダムから車で約10分の場所にある「南アルプス赤石温泉白樺荘」は、縦走後の疲れを癒やすのに最適な施設です。 露天風呂から南アルプスの山々を眺めながら入浴でき、「山女魚(やまめ)おろしそば」など大井川源流部で取れる食材を使った料理も楽しめます。日帰り温泉も利用可能で、宿泊施設も完備されており、長期縦走の締めくくりに多くの登山者が立ち寄る人気スポットです。
荒川三山と南アルプス大縦走の魅力
赤石岳との縦走でセットで訪れることが多い荒川三山には、それぞれ特徴的なピークがあります。悪沢岳(荒川東岳)は標高3,141メートル、荒川三山の最高峰であり、日本の山の標高ランキングで6位に位置する高峰です。「悪沢岳」の名前は、山腹から北西方面に延びる沢の名前「悪沢」に由来します。山頂からは北に鳳凰三山・間ノ岳・農鳥岳、南に赤石岳・聖岳、東には富士山が美しく望め、360度の大パノラマが広がっています。千枚岳から悪沢岳への稜線には、「ゴジラの背」と称される岩場の痩せ尾根があり、コースの核心部の一つとなっています。
荒川中岳は標高3,083メートルで、荒川三山の中央のピークです。中岳避難小屋が山頂直下に建っており、緊急時の避難場所として機能します。荒川前岳は標高3,068メートルで、荒川三山の中で最も南西に位置するピークで、前岳から荒川小屋へ下る斜面に南アルプス最大規模のお花畑が広がっており、多くの登山者が足を止める絶景スポットとなっています。
赤石岳の南側には、さらに大縦走が広がっています。赤石岳から百間洞山の家、大沢岳(標高2,819m)、兎岳(標高2,818m)を経て聖岳(標高3,013m)へと続く縦走路は、南アルプスの中でも特に山深く、静寂と雄大な自然が楽しめるルートです。百間平は赤石岳南西に広がる広大な台地状の地形で、稜線歩きの一息つける区間として登山者に好まれています。
登山計画の注意点と南アルプスユネスコエコパーク
特種東海フォレストが運営する山小屋への宿泊は事前予約が必須です。特に7月下旬から8月のシーズンピーク時は予約が取りにくくなるため、計画が決まり次第早めに予約を入れることが重要となります。山小屋の宿泊予約と合わせて、送迎バスの乗車についても確認しておくことが推奨されます。
南アルプス南部の山域は深く、万が一の遭難に備えて登山届の提出は必須です。静岡市の登山指導センターまたはオンラインの登山届システムで提出でき、椹島にも登山ポストが設置されています。山中で緊急事態が発生した場合は、まず山小屋スタッフへ連絡を取ることが基本ですが、圏外となることが多いため、衛星電話の携行も選択肢の一つです。
赤石岳を含む南アルプスは、2014年にユネスコエコパーク(生物圏保護区)として登録されました。南アルプス国立公園のコアゾーンとして厳格に保護されており、豊かな生態系が守られています。この地域にはライチョウ(雷鳥)が生息しており、運が良ければ縦走中に出会えることもあります。ライチョウは絶滅危惧種に指定されており、南アルプスでの個体数回復への取り組みが進められている貴重な存在です。
ニホンジカの食害による高山植物の減少が問題となっており、柵による保護対策なども実施されています。自然環境保護の観点から、登山者はコース外への立ち入りや高山植物の採取を厳に慎み、定められたルートを歩くことが強く求められています。ゴミの持ち帰りや環境への配慮は登山のマナーとして当然のことであり、この大自然を後世に伝えるための責任を全員が共有しています。
赤石岳・椹島縦走に関するよくある疑問
椹島から赤石岳を縦走する計画について、多くの登山者から寄せられる疑問を整理します。「椹島まで自家用車で行けるか」という疑問については、東俣林道は一般車両の通行が禁止されているため、自家用車での乗り入れはできず、畑薙第一ダム付近の臨時駐車場から特種東海フォレストの送迎バスを利用する必要があります。
「テント泊だけで縦走できるか」という疑問については、送迎バスの利用条件として椹島ロッジまたは管理山小屋への1食以上付きの宿泊予約が必須となっているため、テント泊のみの計画では送迎バスを利用できず、椹島へのアクセスが難しい点に注意が必要です。
「初心者でも椹島から赤石岳を縦走できるか」という疑問については、難易度が上級に分類され、累積標高差が2,618メートルに達することから、登山経験が浅い場合は単独行を避け、経験豊富な仲間やガイドと共に登ることが推奨されます。「2泊3日で本当に余裕があるか」については、3日目が約8時間45分の長丁場となるため、体力に不安がある場合は3泊4日の行程を選び、百間洞山の家を挟むと安全マージンを確保しやすくなります。
まとめ|椹島から赤石岳を縦走する山旅の魅力
赤石岳は、南アルプス南部を代表する3,000メートル峰であり、椹島を起点とした縦走コースは、日本有数のスケールを誇る山岳景観と豊かな高山植物、地球の歴史を感じる地質を同時に体験できる、日本登山の醍醐味が詰まったルートです。「日帰り不可」「上級者向け」という難易度ではあるものの、十分な体力トレーニングと事前準備を積み重ね、山小屋を活用した計画的な山行を組むことで、多くの登山者が達成可能な縦走です。
椹島まで一般車両では入れない不便さも、その分訪れる価値のある山深さと、手つかずの自然を守る仕組みになっています。荒川三山・赤石岳の2泊3日縦走は、南アルプスの山旅として完成度が高く、一生の思い出となる体験を提供してくれるでしょう。2026年は椹島ロッジと百間洞山の家の修繕工事が予定されているため、最新情報を特種東海フォレストの公式情報源で確認しながら計画を立てることが重要です。 椹島から赤石岳を目指す縦走は、南アルプスの大自然と向き合う一歩であり、十分な準備のうえで挑戦する価値のある山旅と言えます。








