双六岳(すごろくだけ)は、岐阜県と長野県の県境に位置する標高2,860メートルの北アルプスの名峰です。新穂高温泉を起点とし、鏡平を経由して山頂を目指すルートは、北アルプス初心者でも歩きやすい整備された登山道として高い人気を誇ります。花の百名山に選定された豊かな高山植物、槍ヶ岳を水面に映す鏡池の絶景、そして山頂から望む360度の大パノラマが、多くの登山者を魅了し続けています。
双六岳登山の最大の魅力は、北アルプス南部の主要な名峰を一望できる立地にあります。槍ヶ岳、笠ヶ岳、黒部五郎岳、三俣蓮華岳といった日本を代表する山々が山頂から見渡せ、山頂部のなだらかな台地は「天空の滑走路」と称されています。本記事では、新穂高温泉から鏡平を経由して双六岳へ至るルートの詳細、アクセス方法、山小屋情報、季節ごとの見どころ、登山装備、注意点まで、登山計画に必要な情報を網羅的に解説します。初めて北アルプスに挑む方も、再訪を計画している方も、安全で充実した山行のためにぜひ参考にしてください。

双六岳とは|北アルプス南部を代表する花の百名山
双六岳とは、岐阜県と長野県の県境に位置する標高2,860メートルの北アルプス(飛騨山脈)南部の山です。北アルプス主稜線上の槍ヶ岳と三俣蓮華岳の間に位置し、その豊かな自然と眺望の良さから多くの登山者に愛されています。
山名の「双六」は、サイコロを使う盤上ゲームの「双六」に由来するといわれています。その名にふさわしく、山頂部は穏やかで広がりのある地形をしており、北アルプスの険しい岩稜帯とは異なる独特の魅力を備えています。
地質的には船津花崗岩類という岩石で形成されており、この岩が風化しやすく、かつ構造的に安定していたために、急峻な岩稜ではなくなだらかで開放的な山頂部が出来上がりました。山頂から東側に広がる緩やかな斜面は「天空の滑走路」と呼ばれ、山好きの間では特に有名な眺めとなっています。
双六岳は花の百名山(田中澄江選)、東海の百山、日本百高山に選定されています。日本百名山には含まれていませんが、その美しい山容と豊かな自然環境から多くの登山者を魅了し続けており、北アルプスを代表する山の一つとして高い人気を誇っています。
新穂高温泉から双六岳へのアクセス方法
新穂高温泉は、岐阜県高山市奥飛騨温泉郷にある温泉地で、北アルプス南部登山の重要な玄関口となっています。双六岳登山の起点として、マイカー・公共交通機関のどちらでもアクセス可能です。
マイカーでのアクセスルート
長野方面からは、長野自動車道・松本ICから国道158号線を経由し、安房トンネルを抜けて平湯温泉へ。そこから国道471号線で新穂高温泉へと向かいます。松本ICから新穂高温泉までの距離は約67キロメートルで、所要時間は約1時間30分から2時間程度です。
東海・名古屋方面からは、東名高速道路から中央自動車道・飯田ICを経由するルートや、名神高速道路から東海北陸自動車道・飛騨清見IC経由で高山市を通るルートが利用できます。
駐車場については、新穂高温泉周辺に複数あります。新穂高第1駐車場は第1ロープウェイに近い有料駐車場で、6時間ごとに料金が発生します。鍋平高原駐車場はしらかば平駅に近く、1日500円で利用できます。新穂高無料駐車場はロープウェイ乗り場まで徒歩15分の距離にあり、約200台収容可能です。
登山シーズンのピーク時、つまり7月から8月のお盆前後や紅葉シーズンは早朝から満車になることが多いため、前日入りして車中泊するか、午前3時から4時台の早朝到着を目指すのが理想的です。
公共交通機関でのアクセス方法
公共交通機関を利用する場合、松本駅から濃飛バスまたはアルピコ交通バスで新穂高温泉バスターミナルまで乗り換えなしでアクセスできます。所要時間は約2時間で、1日8便程度の運行です。
高山駅(JR高山本線)から濃飛バスを利用する方法もあります。高山駅から新穂高温泉バスターミナルまでは約1時間30分の乗車時間です。新幹線で名古屋方面からアクセスする場合は、高山駅経由が便利です。
新穂高から鏡平を経由する双六岳登山ルートの詳細
新穂高温泉を起点に双六岳を目指す一般的なルートは、1泊2日の行程で計画されることが多く、初日は新穂高温泉から鏡平山荘を経由して双六小屋まで進み、2日目に双六岳山頂を往復してから下山するプランがスタンダードです。コースタイムは1日目が約7時間30分から8時間、2日目が約7時間から8時間です。
新穂高センターから登山スタート
出発地点は新穂高センター(新穂高登山指導センター)です。ここには奥飛騨温泉郷観光案内所と新穂高登山指導センターが併設されており、登山ポスト、24時間利用可能なトイレ、自動販売機が設置されています。登山届はここで必ず提出しましょう。
登山指導センターから舗装された林道を歩き始めます。この区間は左俣林道と呼ばれる平坦な道で、飛騨山脈の壮大な山々に抱かれた気持ちの良い道です。しばらく歩くと穂高平小屋の前を通過し、さらに奥へと進みます。笠ヶ岳への登山道である笠新道登山口を過ぎると、まもなくわさび平小屋に到着します。
わさび平小屋で小休憩
わさび平小屋は、新穂高温泉から約80分で到着できる山小屋です。北アルプス登山の重要な拠点の一つであり、小屋の前にはきれいな沢が流れています。ここで小休憩をとるのがおすすめです。名物のそうめんが人気で、ブナ林からの湧き水を使ったその味わいは登山者の心と体を癒やしてくれます。
小屋の横には野菜や飲み物が桶に入れて冷やされており、セルフで購入できます。トマトやきゅうりなどの野菜がラインナップされることが多く、登山で疲れた体に水分とミネラルを補給するのに最適です。
小池新道で鏡平山荘へ
わさび平小屋を出発してすぐに、槍ヶ岳方面(右俣コース)と双六岳・鏡平方面(左俣コース=小池新道)の分岐点があります。ここから左俣コースに入り、いよいよ本格的な登山が始まります。
小池新道は1955年(昭和30年)に双六小屋の経営者であった小池義清氏らによって開設された登山道で、その名がルートの名称となっています。この道の最大の特徴は、鎖場やハシゴなどの危険箇所がなく、よく整備された歩きやすい道であることです。登山者からも歩きやすいとの評価が高く、北アルプス初心者にも取り組みやすいルートとして人気があります。
ただし注意が必要なのは、途中の秩父沢(ちちぶざわ)付近です。沢を橋で渡る地点があり、過去には大雨や豪雨により橋が流失したこともあります。2025年8月7日早朝の豪雨では土砂崩れが発生し橋が流失したことが報告されており、登山前には必ず最新の登山道情報を確認することが重要です。
秩父沢を過ぎると、ゆるやかな尾根道が続き、高度を上げるにつれて視界が開けてきます。チボ岩と呼ばれる大岩のあたりからは槍ヶ岳の雄姿が見え始め、登山者の気持ちを高ぶらせます。イタドリヶ原、シシウドヶ原を過ぎると、広大な山腹を横切るように続く道が現れ、正面に鏡平山荘が見えてきます。
コースタイムの目安
新穂高温泉から双六小屋までの主なポイント間のコースタイムは以下のとおりです。
| 区間 | コースタイム |
|---|---|
| 新穂高温泉〜笠新道登山口 | 約30〜40分 |
| 笠新道登山口〜わさび平小屋 | 約20分 |
| わさび平小屋〜小池新道登山口 | 約10〜15分 |
| 小池新道登山口〜鏡平山荘 | 約3時間 |
| 鏡平山荘〜弓折乗越 | 約1時間 |
| 弓折乗越〜双六小屋 | 約1時間30分〜2時間 |
鏡平の絶景と魅力|逆さ槍ヶ岳が水面に映る名所
鏡平とは、標高約2,300メートルに位置する双六岳登山コース中の絶景ポイントで、その名のとおり鏡のように山々を映し出す鏡池がある場所です。多くの登山者が双六岳ルートで最も印象に残る場所として挙げる名所となっています。
鏡池に映る逆さ槍ヶ岳
鏡池は、その名が示すとおり、風が穏やかな日には槍ヶ岳や穂高岳連峰の姿を水面に映し出します。特に早朝は風が静かなことが多く、逆さ槍ヶ岳や逆さ穂高の絶景が見られる可能性が高くなります。この幻想的な光景は日本の登山風景を代表するカットとして、多くの山岳写真家やカメラマンが訪れる撮影スポットにもなっています。
鏡平山荘の東側に設けられた木製テラスは、槍ヶ岳を正面に望む絶好の展望台です。小屋からわずか30秒でこの幻想的な風景の前に立つことができ、宿泊者は朝夕の時間帯に贅沢な眺望を楽しめます。
鏡平山荘の名物「かき氷」
鏡平山荘は中部山岳国立公園内に位置する山小屋で、双六小屋グループが運営しています。2014年から三代目・小池岳彦氏が経営を引き継ぎ、順次リニューアルを進めており、清潔感のある設備が整っています。
鏡平山荘の名物として全国の登山者に知られているのが、かき氷です。標高2,300メートルの山の上で食べるかき氷は格別で、いちご、れもん、みぞれ、めろん、宇治金時あずき付きなどの種類があります。価格は500円から700円程度で、アイスや練乳のトッピングも楽しめます。北アルプスの山小屋では珍しい名物として、多くの登山者が楽しみにしています。
鏡平周辺の自然環境
鏡平周辺の植生も見どころの一つです。池の周囲にはオオシラビソやコメツガが植生しており、9月下旬から10月上旬にかけてはナナカマドやダケカンバが美しく紅葉します。オコジョが目撃されることもあり、高山の自然を存分に感じることができます。
鏡平山荘から先は稜線へと向かう登りが始まります。この区間は急登が続きますが、振り返れば鏡池と槍ヶ岳の絶景が広がります。登るにつれて視界が開けていくのがわかり、疲れを忘れさせてくれます。弓折乗越(ゆみおりのっこし)に到着すると、そこには360度のパノラマが広がり、はるか遠くには白山の姿も望め、北アルプスの稜線の広大さを実感できます。
双六小屋の宿泊・テント泊情報
双六小屋は、標高約2,550メートルに位置する双六岳登山の核心的な山小屋で、北アルプスの中でも特に人気の高い山小屋の一つです。双六小屋グループが運営しており、双六小屋のほか、鏡平山荘・わさび平小屋・黒部五郎小舎を傘下に持つ山岳エリアを代表する山小屋グループです。
収容人数と予約情報
双六小屋の収容人数は約150名(宿泊)で、テント場は60張の収容が可能です。テント場利用料は1人2,000円で、トイレ代として100円が1回別途必要となります。テント場近くには双六池があり、水場とトイレも完備されています。
山小屋は完全予約制で運営されており、オンライン予約が可能です。テント場についても特定日は予約が必要となっており、夏シーズンのピーク日、つまりお盆前後や7月連休などは早めに予約することがおすすめです。公式サイトはsugorokugoya.com、電話予約は0577-34-6268で受け付けています。
双六小屋の立地と魅力
双六小屋は北アルプスの要衝に位置します。三俣蓮華岳方面、槍ヶ岳方面、笠ヶ岳方面の縦走路が集まる交差点となっており、北アルプス深部を旅する登山者の重要な拠点となっています。
小屋の設備は食事・宿泊ともに充実しており、初日に双六小屋まで登ってゆっくり休み、翌日に双六岳を往復して下山するプランが多くの登山者に選ばれています。夕焼けに染まる槍ヶ岳を眺めながら過ごす夕食の時間は、双六小屋宿泊ならではの贅沢なひとときです。
2025年シーズンの営業開始は7月10日(木)でした。営業終了時期や2026年シーズンの営業開始日については、公式サイトで最新情報を確認することをおすすめします。
双六岳山頂からの絶景|360度の大パノラマ
双六岳の山頂からは360度の大パノラマが広がります。北アルプスの主稜線が集まる場所に位置するため、周囲の著名な山々を一望できる絶好の展望台となっています。
山頂から望める主要な山々
東側にそびえる槍ヶ岳(標高3,180メートル)は、鋭い三角形の頂が特に印象的で、双六岳と槍ヶ岳の間の広大な稜線を一望できます。「双六岳山頂から槍ヶ岳が浮かんで見える」構図の写真はSNSでも人気を集めており、双六岳を象徴する眺望となっています。
西南西方向にそびえる笠ヶ岳は、傘のような美しい山容で、その優美なシルエットは北アルプスを代表する絶景の一つです。北北西方向に見える黒部五郎岳は、大きなカール(圏谷)を持つ豪快な山容を誇ります。
北側に位置する三俣蓮華岳は双六岳の隣の山で、さらに奥には水晶岳、鷲羽岳、薬師岳なども望めます。遠景では御嶽山や乗鞍岳、白山なども視界に入り、まさに北アルプスのオールスターを一望できる感動的な場所です。
双六小屋から双六岳山頂への3つのルート
双六小屋から双六岳山頂を目指す登山道には、大きく分けて三つのルートがあります。
中道(ちゅうどう)は、稜線の少し下を歩くルートで、キバナシャクナゲやヨツバシオガマなどの高山植物が見られます。稜線ルートは稜線上を歩くルートで、景色を楽しみながら歩けます。巻道(まきみち)は山腹を横切るルートで、シナノキンバイ、ハクサンイチゲ、ミヤマキンポウゲなどの高山植物が見られます。
どのルートを選んでも約1時間から1時間30分で山頂に到着できます。双六岳山頂部はなだらかで広い台地状になっており、その穏やかな地形が「天空の滑走路」と称される理由です。
高山植物と紅葉の見頃|花の百名山ならではの魅力
双六岳が花の百名山に選定された最大の理由は、その豊かな高山植物にあります。ルート上の各所で多種多様な高山植物を楽しむことができ、季節ごとに表情を変える北アルプスの自然を満喫できます。
夏の高山植物の見頃
小池新道沿いでは、季節ごとにさまざまな花に出会えます。初夏(6月下旬から7月上旬)の雪解けとともに、キヌガサソウやミズバショウ、サンカヨウなどが咲き始めます。
稜線上の花見平(はなみだいら)は、双六岳ルート最大のお花畑スポットです。弓折岳から双六小屋の間に広がる大規模なお花畑で、7月下旬から8月のお盆前後が見頃のピークとなります。シナノキンバイ(黄色)、ハクサンイチゲ(白色)、ミヤマキンポウゲ(黄色)が一面に咲き乱れ、コバイケイソウの大きな白い花序も印象的です。この光景は花の百名山に選定された理由を目の前で体感できる場所となっています。
山頂直下のカール地形にも豊かなお花畑が広がります。晩夏(8月下旬から9月)にかけては、トウヤクリンドウ(薄紫・白色)が稜線付近で見られます。
双六岳で見られる代表的な高山植物
双六岳ルートで観察できる代表的な高山植物には、コバイケイソウ、ハクサンイチゲ、シナノキンバイ、ミヤマキンポウゲ、ミヤマキタアザミ、ヨツバシオガマ、キバナシャクナゲ、トウヤクリンドウ、タカネナデシコなどがあります。これらは主に7月から8月にかけて見頃を迎えますが、トウヤクリンドウは8月から9月の遅い時期に咲きます。
秋の紅葉シーズン
双六岳周辺の紅葉は、北アルプスの中でも特に美しい紅葉スポットの一つとして知られています。紅葉の見頃は9月末から10月上旬頃で、双六岳や弓折岳周辺、鏡平、黒部五郎カールなどで美しい紅葉を楽しめます。
主役となるのはナナカマドです。真っ赤に染まったナナカマドの実と葉、そして黄金色に輝くダケカンバ(岳樺)のコントラストが見事で、北アルプスの秋を代表する光景を作り出します。2025年10月初旬には現地でナナカマドが赤く色づき始めた情報も報告されました。
紅葉シーズンの双六岳は夏山とは異なる魅力があります。混雑がやや少なくなり、涼しい気候の中で落ち着いた山歩きが楽しめます。鏡平の鏡池に紅葉が映り込む光景も格別で、写真愛好家には特におすすめの時期です。ただし、9月下旬から10月は気温が急激に下がり、早朝には氷点下になることもあるため、防寒対策は十分に行う必要があります。
双六岳登山の装備と注意点
双六岳はアルプス初心者でも歩きやすいと評価されているルートですが、標高2,860メートルの高山であり、1泊以上の行程となるため、十分な装備が必要です。安全で快適な登山のために、事前の準備を入念に行いましょう。
必須となる登山装備
登山靴は、ハイカット(くるぶし以上を覆う)で防水性のあるものが望ましいです。レインウェアは上下セパレートタイプの防水性・透湿性の高いものを準備しましょう。北アルプスでは天気が急変することがあるため、必携の装備となります。
防寒着としてフリースやダウンを用意してください。山の上は夏でも寒くなることがあり、特に朝晩は気温が低下します。ヘッドランプは予備電池とともに必ず持参しましょう。地図とコンパスは、スマートフォンのアプリも有効ですが、紙の地図も携行することが推奨されます。
行動食と水も重要です。十分な水分と高カロリーの行動食を準備しましょう。ルート上の水場は鏡平山荘や双六小屋などにあります。救急セットとしては、ファーストエイドキット、テーピング、痛み止めなどを用意してください。
宿泊時の追加装備
山小屋泊の場合は、宿泊申込時の確認書、現金(カード不可の場合あり)を準備します。山小屋は完全予約制であるため、予約状況の再確認も忘れずに行いましょう。
テント泊の場合は、テント一式、シュラフ(夏でも3シーズン以上対応のもの)、マット、コッヘルなどが必要です。双六小屋のテント場は60張まで対応していますが、ピーク時は早く到着しないと良い場所を確保できません。
双六岳登山で押さえておきたい注意点
登山届は新穂高センターの登山ポストに必ず提出してください。万が一の事故の際、登山届が捜索の重要な手がかりとなります。
天気予報は出発前日と当日朝に必ず確認しましょう。北アルプスは午後に雷雨が発生しやすいため、午前中に行動を終えるよう心がけることが安全な登山の基本です。
熊出没情報にも注意が必要です。北アルプスでも熊の目撃情報があるため、熊鈴を装着し、複数人で行動することが望ましいでしょう。登山道の最新情報については、土砂崩れや橋流失など、登山シーズン中も道路状況が変わることがあるため、双六小屋グループの公式サイトや山と溪谷オンラインで確認することが大切です。
高山では紫外線が強いため、日焼け止めや帽子、サングラスを準備してください。また、急激な標高上昇は高山病のリスクがあります。十分な水分補給と休息をとり、ゆっくりとしたペースで歩くことが大切です。
双六岳のコースバリエーション|縦走で楽しむ北アルプス深部
双六岳は1泊2日のスタンダードコースだけでなく、余裕を持った2泊3日のプランや、北アルプスの深部を旅する縦走コースなど、さまざまな楽しみ方ができる山です。体力や経験、休暇日数に応じて自分に合ったコースを選択できる柔軟性も双六岳の魅力です。
スタンダードな1泊2日コース
最もスタンダードなプランは1泊2日の行程です。1日目に新穂高温泉から、わさび平小屋、鏡平山荘(昼食・かき氷)、弓折乗越を経て双六小屋に宿泊します。2日目は双六小屋から双六岳山頂を往復し、弓折乗越、鏡平山荘、わさび平小屋を経て新穂高温泉へ下山します。
このプランは1日目の歩行時間が長くなりますが、2日目に体力を温存して山頂アタックができるため、登頂の確率を高められる王道のスケジュールです。
余裕を持った2泊3日コース
体力に自信のない方や、各ポイントでゆっくり過ごしたい方には2泊3日のコースがおすすめです。1日目は新穂高温泉から鏡平山荘までで宿泊し、2日目に鏡平山荘から弓折乗越を経て双六小屋に宿泊、双六岳山頂を往復します。3日目は双六小屋から下山します。
このプランなら、鏡平の朝夕の絶景をじっくり楽しめ、高山病のリスクも軽減できます。写真撮影や高山植物観察に時間をかけたい方にも最適です。
上級者向け縦走コース
双六岳を起点にさらに奥地を目指す縦走ルートも魅力的です。双六岳から三俣蓮華岳を経て黒部五郎岳を目指すコース、双六岳から槍ヶ岳へと続く縦走コース、双六岳から笠ヶ岳へ向かう縦走コースなどがあります。
これらの縦走コースは2泊3日から4泊5日の行程となり、北アルプスの深部を旅する贅沢な山行が楽しめます。体力と経験を要しますが、北アルプスの最深部の自然を堪能できる上級者向けの選択肢です。
下山後の楽しみ|新穂高温泉と周辺観光
下山後は新穂高温泉でゆっくり温泉を楽しむことができます。奥飛騨温泉郷は日本屈指の山岳温泉地として知られており、多くの温泉宿や日帰り入浴施設が利用できます。露天風呂から北アルプスの山々を眺めながらの入浴は、長時間の登山の疲れを癒やすのに最適です。
新穂高ロープウェイも観光スポットとして人気があります。日本で唯一の2階建てゴンドラを持つロープウェイで、西穂高口駅(標高2,156メートル)まで上がることができます。登山をしない家族や友人を連れてきた場合は、ロープウェイから北アルプスの絶景を楽しむのもよいでしょう。
奥飛騨温泉郷では地元の飛騨牛料理や郷土料理も楽しめます。長い登山の後の温泉と食事は、双六岳登山の旅を締めくくる至福のひとときとなります。
双六岳の歴史と小池新道の開発
双六岳は長野県大町市と岐阜県高山市にまたがる山で、古くから地元の人々に親しまれてきた山です。山名「双六」の由来は明確には伝わっていませんが、双六岳と樅沢岳(もみさわだけ)の鞍部に位置する双六小屋の名称ともなっており、北アルプス南部を代表する地名として広く認知されています。
登山史においては、かつて双六岳へ登るには、金木戸川から双六谷を詰めて登るルートが唯一の方法でした。しかし、1955年(昭和30年)に当時の双六小屋経営者・小池義清氏が、わさび平から大ノマ乗越を経由する小池新道を開発したことで、現在の新穂高温泉からのアクセスが格段に容易になりました。
小池義清氏はアララギ派の歌人でもあり、短歌集『双六岳』を出版するほどこの山を深く愛した人物です。彼が開いた小池新道は今日も多くの登山者が利用する北アルプスの主要登山道として受け継がれており、その功績は双六岳の登山史に刻まれています。
現在は三代目経営者・小池岳彦氏が双六小屋グループの各山小屋を経営しており、双六小屋、鏡平山荘、わさび平小屋、黒部五郎小舎の計4軒の山小屋を管理運営しています。
双六岳登山についてよくある疑問
双六岳登山を計画する際に、多くの登山者が抱く疑問について解説します。
双六岳は初心者でも登れるのか
双六岳のコースは、北アルプスの中では初心者にも取り組みやすいルートとして知られています。鎖場やハシゴなどの危険箇所が少なく、よく整備された小池新道を経由するためです。ただし、標高2,860メートルの高山であり、1日あたり7時間から8時間の歩行が必要となるため、低山での登山経験と十分な体力は必須となります。北アルプスデビューを目指す方には、適度な準備期間を設けた上での挑戦をおすすめします。
双六岳登山に必要な日数はどれくらいか
新穂高温泉を起点とした場合、最短で1泊2日の行程が必要です。健脚者でも日帰りは現実的ではありません。一般的な登山者には1泊2日、または余裕を持って2泊3日の計画がおすすめです。三俣蓮華岳や黒部五郎岳、槍ヶ岳などへの縦走を組み合わせる場合は、さらに日数が必要となります。
双六岳登山の最適なシーズンはいつか
双六岳登山のベストシーズンは、夏山シーズンの7月中旬から8月中旬と、紅葉シーズンの9月末から10月上旬です。7月下旬から8月上旬は高山植物が最も美しく咲き誇る時期で、花見平のお花畑が見頃を迎えます。9月末から10月上旬はナナカマドやダケカンバの紅葉が見頃となり、鏡池に映る紅葉も格別です。
山小屋の予約はいつから可能か
双六小屋グループの山小屋(双六小屋・鏡平山荘・わさび平小屋)は完全予約制となっています。シーズンインの前から予約が始まりますので、登山計画が決まったらできるだけ早く公式サイトまたは電話で予約しましょう。お盆前後や夏季の連休は特に早期に満室となるため注意が必要です。
累積標高差と歩行距離はどれくらいか
新穂高温泉から双六岳山頂までの距離は約16キロメートルから18キロメートル、累積標高差は約1,800メートル程度です。1日あたりの歩行時間は7時間から8時間を想定しておきましょう。体力配分を考えると、初日に双六小屋まで進む計画が標準的です。
まとめ|新穂高から鏡平を経て双六岳へ
新穂高温泉から鏡平を経て双六岳へ至るルートは、北アルプス登山の醍醐味を存分に味わえるコースです。歩きやすく整備された小池新道、槍ヶ岳を映す神秘的な鏡池、豊かな高山植物のお花畑、そして山頂から望む360度の大パノラマ。これらの魅力が凝縮された双六岳は、北アルプスを初めて訪れるなら双六岳を、と多くの登山者が口を揃えるほどの名山です。
夏山シーズン(7月中旬から8月中旬)は高山植物が最も輝く季節で、特にお花畑の美しさは格別です。秋(9月末から10月初旬)は紅葉が見事で、涼しい気候の中で落ち着いた山行を楽しめます。いずれの季節も、山小屋は完全予約制となっているため、事前にしっかりと計画を立て、公式サイトから予約することを忘れないようにしましょう。
双六岳は険しい岩場やクサリ場が少なく、北アルプスの入門として最適な山ですが、あくまでも標高2,860メートルの高山です。十分な装備と体力、そして天候への注意を怠らず、安全で充実した山行を楽しんでください。北アルプスの奥深さと美しさを体感できる双六岳の登山は、きっと忘れられない山の思い出となるでしょう。








