草戸山と南高尾は東京の夏ハイキングで最も静かな穴場コース

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東京近郊で人混みを避けて夏のハイキングを楽しみたいなら、草戸山と南高尾山稜ほど条件の揃った穴場コースはありません。標高364メートルの草戸山は東京都町田市の最高峰で、年間200万人が訪れる高尾山のすぐ南側に稜線を伸ばしています。同じ京王線の高尾山口駅から歩き出せるにもかかわらず、南側の稜線に足を向けるとハイカーの数は一気に減り、樹林帯に覆われた静かな里山歩きが広がります。新宿から片道47分、運賃430円というアクセスの良さ、7つのピークを繋ぐ縦走ルート、城山湖を望む展望、下山後は駅直結の温泉まで揃っており、夏の日帰り登山として組み立てやすい山域です。この記事では、コース選びからアクセス、熱中症対策、下山後の楽しみ方まで、歩く前に押さえておきたい情報を整理します。

目次

草戸山は町田市最高峰の標高364メートルの里山

草戸山は、東京都八王子市南浅川町、東京都町田市、神奈川県相模原市緑区の境界に位置する標高364メートルの山で、町田市内では最も標高が高い山として知られています。すぐ北にそびえる高尾山は標高599メートルですが、草戸山の登山口は高尾山口駅から徒歩5分ほどと変わらず、駅からのアプローチのしやすさはほぼ同等です。

草戸山から西へ稜線を伸ばした先には、榎窪山、泰光寺山、入沢山、中沢山、金毘羅山、大洞山という6つのピークが連なり、草戸山と合わせて「南高尾セブンサミッツ」と呼ばれています。高尾山のような舗装参道や観光地の賑わいとは異なり、南高尾山稜は土の登山道が中心で、細かな上り下りを繰り返しながら歩く自然味の強いルートです。標高こそ低いものの、稜線の起伏が多いため、通しで歩けば意外なほど歩きごたえがあります。

危険箇所は少なく登山道もよく整備されているので、初心者やファミリーでも安心して足を運べます。一方で7座をすべて縦走するとロングトレイルの領域に入り、体力に応じて難易度を大きく調整できるのが南高尾の懐の深さです。同じ稜線を短く歩いてピストンにするか、通しで縦走するかで、消費カロリーもコースタイムも大きく変わってきます。

高尾山と同じ駅なのに混雑度が桁違い

高尾山は年間200万人を超える登山者と参拝客が訪れ、世界でも屈指の登山者数を誇る山です。ミシュラン・グリーンガイドで三つ星を獲得したことでも知られ、都心からの近さやケーブルカー、リフト、薬王院への参拝など観光要素が濃く、休日の1号路や山頂周辺は大勢の人で埋まります。

同じ高尾山口駅を最寄りに持ちながら、南高尾山稜へ足を向けるハイカーの数は桁が違うほど少なくなります。駅を出て甲州街道の反対側に踏み込むだけで、樹林帯の静けさを独り占めするような時間が続きます。人混みが苦手な方や、都心から近い山で落ち着いた稜線歩きを楽しみたい方にとって、南高尾山稜は最も選びやすい穴場のひとつです。

さらに、丹沢や奥多摩の一部で夏場に警戒されるヒルについて、南高尾山稜では発生の情報が比較的少ないと言われています。ヒル忌避スプレーや塩を持ち歩く手間が減るという点も、夏に南高尾を選ぶ理由に加えられています。

新宿から最速47分・片道430円で通える東京近郊のコース

草戸山と南高尾山稜の起点は、京王線の高尾山口駅です。新宿駅から特急や準特急を使えば最速47分ほどで到着し、運賃は新宿から高尾山口までの片道で430円と、都心から日帰りで通える料金水準に収まっています。特急と準特急は日中1時間に3本程度動いており、電車の本数の面でも計画を立てやすい路線です。

高尾山口駅は東京都八王子市高尾町にある京王高尾線の終着駅で、大手私鉄が抱える駅のなかでも東京都域では最も西に位置します。1967年10月の高尾線開通と同時に開業した歴史のある駅で、2015年4月には駅舎の改築工事が完了し、木材を全面に押し出した新駅舎が翌年のグッドデザイン賞を受賞しています。ハイキングの前後に駅そのものを眺めるだけでも、里山の玄関口として整えられた空間の心地良さが伝わってきます。

高尾山口駅を出て甲州街道方面へ向かい、横断歩道を渡って「高尾山入口」の表示がある信号の手前を入っていくと、およそ5分で草戸山への登山口に着きます。高尾山のメイン登山口とほぼ隣接した位置にありながら、歩き出すとすぐに静かな樹林帯へ吸い込まれていくのが南高尾らしいアプローチです。

車で訪れる場合は、南高尾山稜のもう一方の玄関口である城山湖側からのアプローチも選べます。城山湖の南側には無料の展望台駐車場が整備されており、圏央道の相模原インターチェンジから県道を経由して向かえます。ゲートの開場時間は9時から17時までなので、時間に余裕を持って動く必要があります。ゲート脇のコミュニティ広場にも駐車場とトイレが用意されています。

初心者からロングトレイルまで3コースを選び分ける

南高尾山稜と草戸山エリアでは、体力と時間に応じて選べるコースが3つに整理できます。

初心者やファミリー向けにおすすめできるのは、草戸山ピストン・周回コースです。高尾山口駅から登山口に入り、草戸峠を経て草戸山山頂を目指すシンプルなルートで、駅から1時間ほどで草戸峠に到着し、そこからさらに30分ほど歩けば草戸山山頂に立てます。山頂の松見平休憩所からは眼下に城山湖、条件が良ければ都心の街並みまで見渡せます。往復で半日ほどにまとまるため、小さな子ども連れの練習山行にも向いています。三沢峠まで足を延ばして高尾山口駅へ戻れば、周回で景色の変化を楽しめます。

健脚向けのロングトレイルとしては、南高尾セブンサミッツ縦走コースがあります。草戸山、榎窪山、泰光寺山、入沢山、中沢山、金毘羅山、大洞山の7座を一気に繋ぐルートで、高尾山口駅から南高尾山稜を経由して大垂水峠方面へ向かう全コースの総距離は約17.9キロメートル、標準コースタイムは7時間38分、累積標高差は上り約1,479メートル、下り約1,497メートルとされています。低山でありながら、通しで歩くと相応の体力が求められます。大垂水峠から高尾山口駅までの区間だけを歩く場合は全長約9.2キロメートル、休憩を含めて5時間ほどが目安です。区間タイムの目安として、榎窪山は三沢峠から5分ほど、大垂水峠から大洞山までは35分、大洞山から中沢山までは45分と押さえておくと、途中でペースを調整しやすくなります。

もうひとつは、南高尾セブンサミッツを縦走した後に高尾山を越えて高尾山口駅へ戻る「ハートルート」です。地図上の軌跡がハート型に見えることが名前の由来で、全長は約16キロメートル。静かな南高尾山稜と、賑わいのある高尾山を一日で味わえる贅沢なコース構成になっています。前半で人の少ない稜線をじっくり歩き、後半で高尾山の展望や参拝を組み合わせるという、抑揚のある一日を作れます。

いずれのコースも起点と終点を高尾山口駅にまとめられるため、車の回送を気にせず電車のみで日帰りできる点も計画のしやすさに繋がります。

城山湖と松見平休憩所は南高尾で最大の展望地

南高尾山稜歩きの見どころの中心は城山湖です。城山湖は本沢ダムの湛水によって生まれた人造湖で、「かながわの探鳥地50選」や「かながわの公園50選」に選ばれた景勝地です。上池に相当する城山湖と下池の津久井湖を組み合わせて発電する城山発電所は、日本初の大規模な純揚水式発電所として1965年に運転を開始した施設で、最大出力は25万キロワットに達します。揚水発電所は電力会社が主体で運営されるケースが大半のなか、城山発電所は神奈川県企業庁が運営している自治体運営の発電所であり、公営電気事業として国内でも数少ない事例と言われています。

本沢ダム自体は堤高73メートルの中央土質遮水壁型ロックフィルダムで、堤体表面が草に覆われて外観がアースダム風に見えるという少し変わった構造も特徴です。電力需要が少ない夜間に、津久井湖より約170メートル高い城山湖へ水をくみ上げておき、需要の多い時間帯に津久井湖側へ放流して発電する仕組みで、稜線上から見下ろす湖面は電力インフラの一部でもあります。

草戸山山頂の松見平休憩所と、途中のふれあい休憩所からは、眼下に広がる城山湖の水面を望めます。空気が澄んだ日には都内方面の街並みやスカイツリー、遠くは筑波山まで見渡せることもあるそうです。城山湖の周囲には散策路も整備されており、湖畔を歩きながら休憩を挟むこともできます。金毘羅宮の階段を上った先には龍籠山展望台もあり、稜線からの眺めに変化を持たせられます。

南高尾セブンサミッツのなかでとくに眺望が開けるポイントとして挙げられるのが、大垂水峠寄りに位置する見晴台です。眼下に津久井湖、正面には丹沢山塊が広がり、条件が揃った日には大室山の奥に富士山を望むこともできる展望地として、南高尾を歩くハイカーの多くが立ち寄る場所になっています。標高494メートルの中沢山の山頂には観音像が置かれ、標高536メートルの大洞山は7座のなかで最も高いピークです。セブンサミッツの主稜線には各所に巻き道が付いており、体力を温存したいときには活用できる一方で、7座すべてを踏むなら分岐で主稜線側を選ぶ形になります。

高尾山の大混雑と切り離した位置で湖と山並みを独り占めできる点は、南高尾山稜ならではのご褒美と言えます。里山の稜線から人造湖越しに関東平野を見渡せる展望地は都心近郊でも数少なく、時間に余裕があれば湖畔まで下りて水面近くから山を見上げる時間を持つと、稜線上とはまったく違う表情を味わえます。

樹林帯とヒルの少なさが夏の南高尾ハイキングを支える条件

標高の低い里山は真夏に暑いという印象を持たれがちですが、南高尾山稜は稜線の大部分が樹林帯に覆われており、直射日光を遮る木陰が多いのが特徴です。7月中旬に南高尾山稜を歩いた記録では、森の中は蒸し暑さをあまり感じず、濃い緑の匂いに包まれた涼しい環境だったという声もあります。

高尾山のメイン参道のように舗装路を大勢の人と歩く必要がなく、風通しの良い稜線と木陰の道を静かに歩けるのは、真夏のハイキングにおいて大きな利点です。ヒルの心配が少ないという点も、汗をかきながら藪気味のルートを歩く夏場の心理的負担を軽くしてくれます。

大垂水峠のバス停近くなど一部で道幅が狭くなる区間はあるものの、コース全体としては危険箇所が少なく、登山初心者でも安心して足を運びやすい整備水準にあります。

熱中症対策は吸湿速乾の長袖と経口補水液を中心に組む

標高が低いとはいえ、夏場の登山では熱中症対策は外せません。体温の上昇を防ぐ装備と、こまめな水分・塩分補給を組み合わせることが基本になります。

服装は、吸汗速乾性と通気性のある長袖にアームカバーを合わせるのが扱いやすい組み合わせです。素材は綿や麻、ポリエステルなど吸湿性と速乾性のあるものを選び、色は熱を吸収しやすい黒系ではなく、白などの薄く淡い色を選ぶと体感温度を抑えやすくなります。帽子は顔だけでなく首の後ろや耳の周りまでカバーできるものを選ぶと、直射日光や照り返しから守れます。

持ち物としては、冷感タオルやクールネックゲイターなど首元を冷やせるアイテムが役立ちます。水分補給は水だけでなく、経口補水液や塩タブレットでミネラルも同時に補える形にしておくと安心です。一気に飲むのではなく、行動中はこまめに少しずつ口に入れるのが熱中症を避ける基本になります。行動時間や気温に応じて余裕を持った量を用意し、途中で買い足せない前提で計画を組みましょう。

南高尾山稜は樹林帯が多く直射日光を避けやすいコースではあるものの、標高が低い分だけ真夏の気温上昇の影響は受けやすい山域です。無理のないペース配分と、こまめな休憩と水分補給を守るのが安全に歩き切るコツです。歩き始める時間帯を早朝寄りに設定して、日射が強くなる時間帯に稜線の樹林帯を歩けるように組むと、体感的な負担をさらに減らせます。汗をかいたあとに冷えた飲料をまとめて飲むと胃腸の負担にもなりやすいため、休憩中は少量ずつ何度も口に入れる形が向いています。

稜線上にトイレも水場もない前提でスズメバチにも備える

南高尾山稜を歩く前に押さえておきたいのが、コース内には基本的にトイレや水場、売店がないという事実です。登山口の高尾山口駅周辺や高尾山側の主要スポットにはトイレが整備されていますが、南高尾山稜の稜線上には設備がほとんどありません。歩き始める前に駅でトイレを済ませ、水分は行動時間に応じた量を余裕を持って持参する必要があります。真夏はとくに発汗量が増えるため、飲料は多めに用意して、途中で買い足せない前提で計画を立てておきましょう。

もうひとつ意識しておきたいのがスズメバチです。高尾山エリア全体では、秋になるとスズメバチの活動が活発化し、登山道が通行止めになるほど注意が呼びかけられます。真夏から初秋にかけても活動時期に入っているため、香りの強い整髪料や香水の使用は控え、もし近くを飛んでいても手で払ったり大声を出したりせず、静かにその場を離れるのが安全策です。黒っぽい服装はハチを刺激しやすいと言われており、熱中症対策で淡い色の服を選ぶことは害虫対策の面でも合理的な選択になります。

登山道沿いには、白い菊のような花を咲かせるシロヨメナをはじめ、季節ごとにさまざまな野草が顔を出します。人が少なく静かな稜線だからこそ、足元の小さな花や野鳥の声にも気づきやすく、ゆったりとした里山歩きの楽しみが広がります。

下山後は駅直結の京王高尾山温泉と老舗そばで一日を締める

ハイキングを終えた後の楽しみとして、高尾山口駅周辺には立ち寄りやすい店が揃っています。駅前には「元祖自然薯そば」を看板メニューにしている老舗そば店があり、歩き疲れた体に温かいそばがよく合います。駅から徒歩3分ほどの「栄茶屋 本店」は白い暖簾が目印の手打ちそば店として親しまれており、駅から徒歩2分ほどの場所にも季節の素材を使った本格的な二八そばを提供する蕎麦処があります。

そば以外の選択肢としては、高尾山口駅に直結するイタリアンレストランで、石窯焼きのナポリ風ピザや自家製麺のパスタを味わうこともできます。汗を流したあとに温泉で一息ついてから食事にする流れ、あるいは食事を済ませてから電車に乗る流れなど、体力や時間に応じて自由に組み立てられるのが高尾山口駅エリアの使い勝手の良さです。

締めくくりに合わせやすいのが、高尾山口駅に直結する日帰り温泉「京王高尾山温泉 極楽湯」です。2015年のオープン以来、高尾山エリアを訪れるハイカーに広く使われてきた施設で、地下約1,000メートルから湧き出す天然温泉はアルカリ性単純温泉、源泉温度は26.2度と記録されています。男女別の浴場には露天岩風呂のあつ湯とぬる湯、ひのき風呂、マイクロバブル風呂、炭酸石張り風呂、座り湯、サウナと水風呂を組み合わせた構成で、あわせて7種類の湯船が用意されており、館内には食事処とうたた寝処も併設されています。営業時間は8時から22時30分(最終入館受付21時45分)で年中無休のため、朝から歩き始めても夕方から歩き始めても、下山後にゆったり立ち寄ることができます。

駐車場は110台分あり、利用客は3時間まで無料で使える案内も出ています。駅のすぐ隣という抜群の立地から、温泉で汗を流したあとはそのまま電車に乗って帰るだけという手軽さも、南高尾山稜コースの魅力を後押しします。夏場は歩き終わりに一段と汗をかいた状態で温泉に直行できる導線が組めるので、他の低山ハイキングにはない締めくくりの快適さが得られます。

高尾山に飽きた東京近郊のハイカーへ向く一日

草戸山と南高尾山稜は、世界一の登山者数を誇る高尾山のすぐ隣にありながら、静かに自然を楽しめる東京近郊の穴場のハイキングエリアです。新宿駅から電車で1時間ほど、片道430円というアクセスの良さを持ちながら、樹林帯の稜線歩き、城山湖の静かな展望、駅直結の温泉まで、日帰りハイキングとして完成度の高い一日を組み立てられます。

コースの選び方は幅広く、初心者やファミリー向けの草戸山ピストン・周回コースから、健脚向けのセブンサミッツ縦走、高尾山とセットで楽しむハートルートまで、体力や目的に応じて自由に組み合わせられるのも大きな魅力です。標高が低く木陰が多いため夏場でも比較的歩きやすく、ヒルの心配が少ないという点も、真夏の低山ハイキング先として選びやすい理由になります。

高尾山の混雑に疲れた東京近郊のハイカーや、夏でも静かに歩ける山を東京都内で探している方には、草戸山と南高尾山稜は自信を持って選べる穴場の一日コースです。熱中症とスズメバチの対策を整えたうえで、静かな里山歩きと城山湖の眺め、下山後の温泉までを一日で繋いでみてほしいエリアです。歩く時期や体力に応じてコースの組み替えが利くため、一度歩き終えたあとも季節を変えてリピートしやすい山域でもあります。

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