富良野岳の登山は十勝岳温泉から往復5時間30分、高山植物の見頃も解説

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富良野岳は、北海道のほぼ中央、大雪山国立公園の南端にそびえる標高1912メートルの山です。十勝岳温泉を登山口とする往復コースはコースタイムがおよそ5時間30分で、コマクサやチングルマといった高山植物が咲き乱れる「花の百名山」として知られています。深田久弥の日本百名山には含まれていませんが、十勝連峰の中では最も花の種類が豊富な山だと紹介されることが多く、登山と高山植物観察を両方楽しみたい人に向いています。この記事では、十勝岳温泉からのアクセスと登山コース、見られる高山植物の種類、下山後に立ち寄りたい秘湯や周辺のラベンダー畑まで、実際に登る前に知っておきたい情報をまとめました。

富良野岳が属する大雪山国立公園は1934年に指定された日本最大の山岳自然公園で、面積は2267.64平方キロメートルにおよびます。北海道最高峰の旭岳を主峰とする山群は「北海道の屋根」とも呼ばれ、活動中の火山である旭岳、十勝岳、東大雪丸山火山を抱えながら、火山湖や湿原、原始林、渓谷など多彩な景観をひとつの公園にまとめています。高山植物の群落規模の大きさも国内屈指とされており、富良野岳のお花畑もこの公園全体の豊かさを象徴する存在の一つです。

富良野岳が花の百名山に選ばれた理由は、隣接する十勝岳との対比で分かりやすくなります。十勝岳は有史以来たびたび噴火を繰り返してきた活火山で、山頂部は今も植物に乏しい荒々しい姿を保っています。一方の富良野岳は火山活動が早くに落ち着いたため土壌が安定し、山頂部まで広大なお花畑が広がりました。同じ十勝連峰の中でも、隣の山とこれほど植生が違う点が富良野岳の面白さです。

目次

十勝岳温泉から富良野岳への往復コースはコースタイム5時間30分

富良野岳への最も一般的なルートは、十勝岳温泉登山口を起点とする往復コースです。登山口から沢沿いの樹林帯を進み、荒涼とした火山地形が広がる安政火口を通過したあと、稜線に取り付いて富良野岳の肩、さらに山頂へと至ります。コースタイムの目安は往復でおよそ5時間30分から5時間50分、総歩行距離は約9.7キロメートル、登山口から山頂までの標高差はおよそ670メートルです。累積標高差は登り下りともに900メートル前後にとどまるため、北海道の百名山クラスの中では体力的な負担が軽い部類に入ります。日帰り登山として無理なく組める行程で、初心者向けと紹介されることも珍しくありません。ただし標高1900メートル級の稜線を歩くルートである以上、天候の急変や残雪、渡渉箇所への警戒は本州の低山と同じ感覚では済みません。

登山道の序盤には沢の渡渉ポイントがいくつかあります。露出した岩はコケで滑りやすく、増水時には無理に渡らず引き返す判断が必要です。中盤で安政火口を抜けると視界が開け、火山地形の荒々しさと稜線の緑のコントラストが見えてきます。このあたりから高山植物が姿を見せ始め、稜線上の富良野岳分岐を過ぎると本格的なお花畑が広がります。山頂直下は急な登りですが、振り返れば十勝岳や美瑛岳、大雪山系の山並みまで一望できます。富良野岳は十勝岳連峰の最南端にあるため、山頂からは連峰の稜線だけでなく、麓に広がる原始ヶ原と呼ばれる湿原・原生林の大きな風景も見下ろせます。稜線の荒々しさと裾野の緑がひとつの視界に収まる眺めは、富良野岳ならではのものです。

登山口までのアクセスと駐車場は早朝到着が必須

十勝岳温泉登山口へは、車なら旭川方面や富良野方面から国道237号線、道道291号線を経由して向かうのが一般的です。公共交通機関を使う場合は上富良野駅から町営バスに乗り、終点の凌雲閣前で下車します。所要時間はおよそ40分から50分ですが、便数は多くないため、事前に時刻表を確認しておく必要があります。

駐車場は20台から50台ほどのスペースがありますが、花や紅葉のシーズンは平日でも朝6時ごろには満車になることが珍しくありません。特に高山植物の見頃と重なる7月から8月の週末は混雑が激しく、日の出とともに行動を始められる時間に到着しておくのが安全です。満車で路肩に止めざるを得ないケースもあるようですが、通行の妨げにならない配慮は最低限守りたいところです。

富良野岳の高山植物はコマクサやチングルマなど十数種類

標高1912メートルの富良野岳でこれほど豊かな高山植物が見られる背景には、北海道の気象条件があります。北海道は緯度が高いため、本州の中部山岳で3000メートル級に相当する気象条件が、標高1500メートル付近の森林限界という形で現れます。本州の感覚では標高に1000メートルほど加えた高さに相当するとも言われ、富良野岳のような2000メートル弱の山でも、稜線に出れば本格的な高山帯の景観が広がる理由になっています。

富良野岳の一番の見どころは、山肌一面を覆う高山植物のお花畑です。登山道沿いではノビネチドリやアカモノ、エゾイソツツジ、マルバシモツケが見られ、稜線に上がって富良野岳分岐を過ぎると、砂礫地に咲くコマクサや黄色い花のメアカンキンバイが増えてきます。コマクサは「高山植物の女王」とも呼ばれる可憐な花で、富良野岳のお花畑を象徴する存在です。山頂手前のお花畑では多くの登山者が足を止めて写真を撮っています。

稜線沿いには他にも、白い綿毛状の花穂が特徴のチングルマ、ピンク色のエゾコザクラ、小さな白花が群生するエゾノツガザクラ、光沢のある葉と桃色の花を持つコイワカガミ、赤紫の花を輪生させるヨツバシオガマなど、種類の多さが際立ちます。チングルマの群落やエゾノハクサンイチゲが一面に広がる箇所は、お花畑という言葉がそのまま当てはまる景観です。山頂から三峰山方面へ稜線をたどると、礫地にイワウメやマルバシモツケ、イワヒゲ、キバナシャクナゲ、エゾウサギギクが姿を見せ、三峰山周辺では紫色のイワブクロが群落をつくります。歩を進めるごとに植生が入れ替わっていく点が、富良野岳から三峰山にかけての稜線歩きの面白さです。

開花のピークは7月から8月

開花時期は年や標高によって差がありますが、早咲きの高山植物はおおむね6月下旬から咲き始め、遅咲きのものは7月上旬から見頃を迎えます。7月は多くの種類が一斉に咲きそろう最盛期で、麓の富良野・美瑛エリアでラベンダーが見頃になる時期とも重なるため、花目当ての登山者と観光客の両方で賑わいます。8月に入っても標高の高い場所では花のリレーが続くので、盛夏でも高山植物を十分に楽しめます。年ごとの残雪量や気温で開花状況は変わるので、登山口周辺の観光協会や直近の登山者の記録で最新の状況を確認しておくと安心です。

麓の富良野盆地は、ラベンダーが見頃となる7月を中心に、ひまわりやポピー、サルビア、マリーゴールドなど四季折々の花が畑を埋め尽くします。富良野岳登山とセットでふもとの花畑観光を組み合わせれば、標高差のある2種類の花景色を一日で味わえます。

これだけの花畑を維持するためには、登山者一人ひとりのマナーも欠かせません。北海道では高山植物の盗掘防止のため監視活動やパトロールが行われており、盗掘行為には1年以下の懲役または100万円以下の罰金が科されます。登山道を外れて群生地に踏み込むと、気づかないうちに希少な植物を傷めてしまうこともあるため、写真を撮る際も登山道の外へは出ないよう気をつけたいところです。

十勝岳温泉 湯元凌雲閣は標高1280メートルの北海道最高所の温泉宿

十勝岳温泉は上富良野町の市街地から車で40分ほど山を登った標高約1280メートルの高所にあり、北海道で最も標高の高い場所に建つ温泉宿として知られる「十勝岳温泉 湯元凌雲閣」が営業しています。日本秘湯を守る会に加盟する一軒宿で、乳白色の硫黄泉が名物です。露天風呂からは大雪山や十勝岳連峰の山並み、天候によっては富良野盆地の街並みまで見渡せます。下山後にそのまま汗を流して帰るという使い方が定番になっています。

客室数は13室で、鉄分を多く含んだ茶褐色の温泉と、酸性で透明な温泉という性質の異なる2種類の源泉が楽しめる点が特徴です。客室の窓から十勝岳連峰を望めるので、前泊して早朝から富良野岳を目指す登山者や、下山後にもう一泊してゆっくり過ごしたい登山者にとって候補になる宿です。

日帰り入浴800円、宿泊は2名19600円から

日帰り入浴の営業時間は8時から20時までで、料金は大人(中学生以上)が夏期間800円、冬期間600円、小学生は400円です。時期によって変動する場合があるため、訪問前に最新情報を確認しておくのが確実です。宿泊料金は2名利用で税込19600円程度から、朝食付きプランは22900円程度から、夕朝食付きプランは29520円程度からが目安とされています。チェックインは午後3時、チェックアウトは午前10時です。

三峰山・上ホロカメットク山を経由する縦走コースは中級者向け

体力と時間に余裕があるなら、富良野岳から三峰山、上ホロカメットク山、上富良野岳を経由して十勝岳温泉登山口へ戻る周回コースも選べます。十勝岳連峰の稜線をたどるルートで、視界の開けた尾根歩きを長時間楽しめる一方、複数のピークを越えるため合計の行動時間は長くなります。初心者向けというよりは、体力に自信のある中級者以上に向いたコースです。さらに脚を延ばして十勝岳や吹上温泉、白銀荘方面まで縦走するロングコースを組む健脚者もいます。

上ホロカメットク山避難小屋のテント場と水場の実情

縦走路の途中、上ホロカメットク山付近には避難小屋があり、1泊で十勝連峰をじっくり歩きたい登山者の拠点になっています。テント場は比較的平坦で、目安として約30張ほど設営できる広さです。水場は7月ごろまで周辺の雪渓が水源になりますが、8月に入ると涸れることが多く、小屋からやや下った水場も水量が不安定になりがちです。雪渓の雪を溶かして使う場合も含め、飲用前には濾過か煮沸をしておく必要があります。テント泊を計画するなら、事前に最新の水場と小屋の状況を確認し、余裕を持った水の計画を立てておいたほうがよいでしょう。

いずれのコースを選ぶにしても、体力や経験に見合ったルートを選び、無理のない計画を立てることが前提になります。

もう一つの選択肢、富良野市側の原始ヶ原コース

十勝岳温泉からのルート以外に、富良野市側から富良野岳を目指す原始ヶ原コースもあります。原始ヶ原は富良野岳の中腹に広がる面積約1000ヘクタールの高層湿原で、山頂から見下ろすこともできるスケールの大きな景観です。登山口は「ニングルの森」と呼ばれるエリアにあり、駐車場と管理棟が整備されています。JR富良野駅からタクシーで約40分、料金の目安は7000円程度で、車の場合は道央自動車道の滝川インターチェンジから約76キロメートルです。

原始ヶ原へ至るコースは、大小の滝を眺めながら歩く滝コースと、深い森を進む樹林コースの2つに分かれています。富良野岳山頂までの所要時間は、滝コースが登り約5時間20分・下り約3時間50分、樹林コースが登り約4時間30分・下り約2時間50分です。十勝岳温泉からのコースより距離と時間がかかるため、本格的な登山を求める健脚者や、原始ヶ原の湿原そのものを目的地にしたい人に向いています。原始ヶ原一帯は木道がなく泥濘地形が多いため、長靴か渡渉に強い登山靴がないと歩行が難しいという点は事前に把握しておく必要があります。

登山の注意点はヒグマ対策と沢の渡渉、携帯トイレの3点

北海道の山は本州の山より緯度が高いぶん、標高が同程度でも気温は低くなります。富良野岳は標高こそ1912メートルですが、十勝連峰の稜線上にあるため天候が急変しやすく、夏場でも稜線では冷たい風が吹くことが珍しくありません。防風・防寒のできるレイヤリングと、雨具を含めた温度調節しやすいウェアの準備が欠かせません。

沢の渡渉ポイントでは、露出した岩がコケで滑りやすくなっています。増水時は無理に渡らず引き返す判断が必要で、沢の水量は前日までの降雨量で大きく変わるため、出発前に現地の天候や登山道情報を確認しておきたいところです。山中で水を汲む場合は、エキノコックス症予防のため煮沸してから使う必要があります。

大雪山国立公園全域はヒグマの生息地で、富良野岳周辺でも目撃例が繰り返し報告されています。熊鈴やホイッスルで自分の存在を早めに知らせる対策は必須です。万が一ヒグマと遭遇したら、目をそらさずに対峙し、慌てて背を向けて走り出さないことが基本とされています。しばらく待てば立ち去ってくれることが多いようですが、立ち去らない場合は落ち着いて距離を取りながら遠ざかります。単独行動を避け、地元自治体や山小屋が発信するヒグマ出没情報を事前に確認しておくのも有効な備えです。

登山道上にトイレはないため、携帯トイレの持参が必須です。夏の繁忙期には「お花畑」付近に期間限定の携帯トイレブースが設置される年もありますが、常設ではないため、特に女性は目隠しになるポンチョを合わせて持っておくと安心です。登山口の十勝岳温泉には水洗トイレがあるので、出発前と下山後はそちらを使えます。

稜線は展望が開けている分、天候の変化を感じやすい一方で、ガスが出ると視界不良でルートを見失うリスクもあります。地図やGPSアプリを携行し、道迷いを防ぐ準備をしておくべきです。登山届の提出も忘れないようにしましょう。万が一遭難した場合、登山届は捜索の手がかりになるだけでなく、救助活動をスムーズに進める助けにもなります。作成の過程で計画を見直すことにもつながり、スケジュールが無理なく組まれているか、自分のレベルに合っているか、食料や装備に不足がないかを客観的に確認できるという利点もあります。北海道警察のオンライン届出のほか、コンパスやYAMAPといったサービスからも提出でき、北海道警察はこれらのサービスと閲覧協定を結んでいます。あわせて家族にも計画書の写しを渡し、行き先を伝えておくと、もしものときの安心材料になります。十勝岳連峰は大雪山国立公園の南部に位置し、主峰の十勝岳を中心に、上富良野町側の十勝岳温泉・吹上温泉、美瑛町側の白金温泉、富良野市側の布礼別(原始ヶ原)など複数の登山口を持つ山域です。富良野岳はこの連峰の最南端に位置する一座で、どの登山口を選ぶかによって難易度も所要時間も景観も変わってきます。十勝岳連峰一帯は国有林に含まれるため、警察署への登山計画書の提出に加えて、管轄の森林管理署への入林届が必要になる場合もあります。上富良野町やかみふらの十勝岳観光協会が公開している最新の登山案内を事前に確認し、必要な手続きを済ませてから入山してください。

ベストシーズンは7月から8月、9月は紅葉も楽しめる

富良野岳登山のベストシーズンは、残雪が落ち着き高山植物が咲きそろう7月から8月です。日照時間も長く、天候さえ安定すれば十勝連峰の景色と満開のお花畑を存分に楽しめます。ただしこの時期は駐車場が早朝から満車になりやすいため、日の出とともに行動を始められる時間に到着しておくべきです。

9月に入ると紅葉シーズンが始まり、稜線一帯がハイマツの緑と草紅葉のコントラストで彩られます。花のシーズンとは違う魅力があり、涼しく歩きやすい気候の中で登山したい人にはこちらもおすすめです。ただし北海道の山は本州より積雪期が長く、山頂付近の初雪も早いので、シーズン終盤は防寒装備をより意識しておく必要があります。

登山と合わせて楽しみたい上富良野のラベンダーロード

登山口へ向かう上富良野町は、日本のラベンダー栽培発祥の地として知られ、「四季彩のまち」の愛称で親しまれています。市街地から十勝岳温泉方面へ向かう道路沿いには、約7キロメートルにわたってラベンダーが植栽された「十勝岳ラベンダーロード」が続き、紫の帯と十勝岳連峰が織りなす景観を車窓から楽しめます。道中にある日の出ラベンダー園は、6月下旬から8月上旬にかけて紫色に染まる名所で、展望台の西側にラベンダー畑、東側に十勝連峰を望むビューポイントです。富良野岳登山の行き帰りにこうしたラベンダースポットへ立ち寄れば、山と花畑、両方の景観を一日で味わえます。

登山後は十勝岳温泉 湯元凌雲閣の日帰り入浴で汗を流し、乳白色の硫黄泉と露天風呂で疲れを癒すのが定番のコースです。時間があれば富良野・美瑛エリアで花畑観光や地元の食事処巡りも楽しめます。登山とラベンダー観光、秘湯めぐりを一度に楽しめる点は、十勝岳温泉と富良野岳のエリアならではの強みです。

富良野岳は、十勝岳温泉を起点に日帰りで登れる手頃な行程でありながら、山頂付近には天空の花畑と呼びたくなるほど豊かな高山植物の景観が広がる山です。コマクサをはじめとする高山植物、十勝連峰の稜線、下山後の北海道最高所の秘湯と、楽しみが幾重にも重なっています。渡渉やヒグマ、天候急変といった北海道の山ならではのリスクも存在するため、装備と情報収集を怠らず、無理のない計画で臨んでください。花の季節に十勝岳温泉から富良野岳を目指す登山は、北海道の自然を存分に体感できる山旅になるはずです。

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