いなべ市藤原岳の麓ウォーキングコース、大貝戸道と聖宝寺道を歩く

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藤原岳の麓を歩くウォーキングコースは、三重県いなべ市藤原町にあります。大貝戸登山道と聖宝寺コースという性格の異なる2つの道があり、どちらも整備が行き届いているため、山頂を目指さずに麓だけを歩くハイキングとしても十分に楽しめます。標高1140メートルの藤原岳そのものは健脚向けの山ですが、麓には初心者や家族連れでも安心して歩けるスポットが集まっているのです。この記事では、藤原岳の麓を歩く際のコース選び、アクセス、駐車場、季節ごとの見どころ、そして周辺で立ち寄れる施設までをまとめて紹介します。

目次

藤原岳は鈴鹿セブンマウンテンの一座で花の百名山にも選ばれた山

藤原岳は三重県いなべ市と滋賀県東近江市の境界にまたがる標高1140メートル(展望丘は1144メートル)の山で、鈴鹿国定公園に含まれています。鈴鹿山脈の主要な7座を指す鈴鹿セブンマウンテンの一つに数えられ、田中澄江の著書『花の百名山』にも選ばれました。

藤原岳が含まれる鈴鹿国定公園は1968年に指定された国定公園で、滋賀県と三重県にまたがる鈴鹿山脈を中心に広がっているそうです。1800種を超える植物が生育しているとされ、北部は石灰岩が侵食されたカルスト地形、南東部は花崗岩地帯と、同じ国定公園内でも地質的に変化に富んだ景観を持つことで知られています。

山全体が石灰岩でできているのが最大の特徴で、山頂付近には石灰岩が浸食されてできたカルスト地形が広がっています。石灰岩質の土壌は独特の植生を育み、早春には黄色いフクジュソウの大群落が山肌を彩ります。晴れた日には山頂から伊勢湾や名古屋方面まで見渡せ、条件が良ければ御嶽山や白山まで望めることもあるようです。

鈴鹿セブンマウンテンは藤原岳を含めて7座で構成されており、藤原岳はこの中で最も北に位置しています。標高はおおむね1000メートル前後の低山にまとまっているため、登山初心者でも挑戦しやすい山域とされています。ほかの山には花崗岩質で岩峰の展望を楽しむタイプの山もありますが、藤原岳は石灰岩質のカルスト地形と早春の花という、セブンマウンテンの中でも独自の個性を持っています。

大貝戸道と聖宝寺道は8合目で合流し登山口から山頂まで登り3時間

麓の主なコースは、三岐鉄道西藤原駅からすぐに取り付ける大貝戸登山道と、名刹聖宝寺を起点とする聖宝寺コースの2本です。

大貝戸登山道は古くから多くの登山者に使われてきたメインルートで、道は丁寧に整備されています。迷いやすい箇所にはロープが張られ、急な登りがほとんどないままジグザグに標高を上げていく構造になっているため、初心者でも歩きやすいコースといえます。麓の部分だけを歩くウォーキングでも、緑豊かな山道の雰囲気を十分に味わえます。

聖宝寺コースは、山麓にある名刹聖宝寺を起点とする裏道です。聖宝寺は歴史のある寺院で、境内や参道の雰囲気そのものに散策の価値があります。入口には鳴谷神社があり、これが裏道側の登山口を兼ねています。聖宝寺周辺は紅葉の名所としても知られ、秋には多くの観光客が参道を歩きに訪れます。

2つのルートは8合目で合流します。8合目は広いスペースがあり休憩ポイントとして使いやすく、9合目まで登ると視界が一気に開け、晴れた日には鈴鹿山脈や伊勢湾の景色を望めます。9合目を越えて主脈に出ると藤原山荘という山小屋が建ち、そこから山頂まではおよそ20分です。登山口から山頂までは登りでおよそ3時間、下りはおよそ1時間が目安とされています。麓だけのウォーキングでも、この所要時間を知っておくと、どこまで足を伸ばすか計画しやすくなります。

西藤原駅からのアクセスは徒歩圏内で車なら大安ICから20分

藤原岳の麓、いなべ市藤原町エリアへは、公共交通機関でも自動車でもアクセスできます。

公共交通機関を使う場合、三岐鉄道三岐線の終着駅である西藤原駅が最寄りです。西藤原駅は三岐線のちょうど終点にあたる駅で、ホームからは徒歩で登山口や麓の散策スポットへ向かえます。車を使わず公共交通機関だけで麓ウォーキングを完結させることも可能です。

自動車を使う場合、東海環状自動車道の大安インターチェンジから約11.1キロメートル、所要時間はおよそ20分です。名古屋方面からは東名阪自動車道の桑名インターチェンジから約21.4キロメートル、所要時間はおよそ40分が目安になります。四日市方面や鈴鹿方面からもアクセスしやすく、日帰りの行き先として選びやすい立地です。

駐車場は大貝戸登山口が無料40台、観光駐車場が300円で80台

車で訪れる場合、駐車場選びも押さえておきたいポイントです。

大貝戸登山口の駐車場は約40台分のスペースがあり、駐車料金は無料です。ただし大型車は駐車できません。西藤原小学校前にある藤原岳観光駐車場は約80台収容可能で、駐車料金は300円となっています。この駐車場からは聖宝寺コースの入口へもアクセスでき、カーナビでは「西藤原小学校」を目的地に設定すると分かりやすいようです。大貝戸ルートの登山口へも、この駐車場から徒歩10分程度で着きます。

聖宝寺登山口そのものには登山者向けの駐車場が用意されていないため、周辺の里にある駐車場を利用することになります。どちらの登山口を起点にするかを事前に決めておくと、当日の動きがスムーズです。

藤原岳自然科学館は入館無料で西藤原駅から徒歩20分

麓のウォーキングと合わせて立ち寄りたいのが藤原岳自然科学館です。西藤原駅から徒歩約20分の場所にあり、鈴鹿国定公園にある藤原岳周辺の自然環境について学べます。館内では国指定特別天然記念物のニホンカモシカをはじめ、この地域に生息する希少な動植物が紹介されています。開館時間は午前9時から午後4時30分まで、入館料は無料です。休館日など細かな条件は変わることもあるため、訪問前に最新情報を確認しておくと安心でしょう。

石灰岩地帯特有の植生に加えてこうした自然学習施設が整っていることから、藤原岳周辺は登山やウォーキングだけでなく、自然観察や学びの場としても活用できるエリアになっています。

春はフクジュソウ、セツブンソウ、カタクリの群生地

藤原岳が花の百名山として知られる理由は、早春に咲く花々にあります。代表格はフクジュソウで、例年2月末頃から4月下旬にかけて、8合目から9合目付近を中心に多く見られます。フクジュソウは日光を浴びることで花を開く性質があるため、晴れた日でなければ美しく開いた姿は見られません。雨や曇りの日には花が閉じてしまうので、訪れる日の天気は事前にチェックしておいたほうがよさそうです。

フクジュソウとほぼ同じ時期に、セツブンソウやカタクリも見頃を迎えます。これらの花は中京・関西圏でも人気が高く、春先には多くの登山者やハイカーが藤原岳周辺を訪れます。麓の散策路や登山口周辺でもこれらの花を見かけることがあり、山頂まで行かなくても春の訪れを実感できるのが、藤原岳山麓ウォーキングの魅力の一つです。

秋は聖宝寺周辺の紅葉が見頃で鈴鹿セブンマウンテンとしても紹介される

藤原岳山麓は、春の花だけでなく秋の紅葉スポットとしても知られています。特に聖宝寺周辺は紅葉の名所として紹介されることが多く、色づいた木々に囲まれた参道や境内を歩くウォーキングは、多くの観光客や登山者に親しまれています。紅葉シーズンには「初心者でも登れる鈴鹿セブンマウンテン」として藤原岳が取材されることもあり、麓周辺の散策とあわせて紅葉狩りを楽しむ人も多いようです。紅葉の見頃は年によって前後するため、訪問前に最新の情報を確認しておくのがよいでしょう。

石灰岩の山肌は太平洋セメントが80年にわたり採掘してきた歴史を持つ

藤原岳の中腹より上は石灰岩からなり、山頂付近は平坦な準平原状を呈するカルスト地形です。この石灰岩は古くから資源として利用されてきました。太平洋セメント株式会社は、藤原岳の東面と多志田谷の西面において、石灰採取のためにおよそ80年にわたって採掘を続けてきました。三重県側は太平洋セメント藤原鉱山となっており、長年の採掘によって山容が変化するほどの規模で石灰石が採取されてきたといいます。麓から山を見上げると、採掘の影響で山肌の一部が独特の景観を見せている箇所もあり、自然の恵みと産業の歴史が同居する山であることが分かります。

藤原岳の南に位置する治田峠付近では、花崗岩に近い古生層の中の鉱脈からかつて銀や銅が産出され、江戸時代には鉱山町として栄えた時期もあったとされています。麓を歩きながら、こうした山の成り立ちに思いを馳せてみるのも一つの楽しみ方です。

麓を走る三岐鉄道三岐線も、もともとは藤原岳のセメント原料を運ぶために生まれた路線です。藤原岳の東斜面に位置する太平洋セメント藤原鉱山は工場の操業開始と同時に開山し、これまでに2億トンを超える石灰石を産出してきたといいます。現在も三岐鉄道の路線を使ったセメントや関連製品の貨物輸送が続けられており、1日に複数往復、数千トン規模の輸送が行われているようです。西藤原駅で観光客を乗せる同じ路線が、産業を支える貨物列車の線路でもあるというのは、藤原岳ならではの取り合わせといえそうです。

ウォーキング前後に立ち寄れるにぎわいの森といなべ市農業公園

藤原岳山麓でのウォーキングとあわせて、いなべ市内の観光スポットに立ち寄るのもおすすめです。

にぎわいの森は2019年5月18日にオープンした、いなべ市のまちづくりの拠点となる複合施設です。農業振興や生業・就農促進、商業・観光振興、市民協働の促進などを目的として位置づけられています。施設内にはフードブティックのキッチュエビオいなべヒュッテ、カフェのcafeRobいなべ店、ブーランジェリーの魔法のぱん、シャルキュトリーの食肉加工屋FUCHITEIなど、個性的な店舗が集まっており、ウォーキング後の休憩や食事の場として人気があります。

いなべ市農業公園も麓ウォーキングとあわせて訪れたいスポットです。いなべ市北部、鈴養湖の近くに都市と農村の交流拠点として整備された公園で、36ホールのパークゴルフ場や遊具・芝生広場を備えています。藤原岳を望む丘には花梅と実梅からなる梅林があり、例年2月下旬から3月中旬にかけて赤・白・ピンクの花が咲き誇り、梅まつりも開催されます。4月から5月にかけては色とりどりの花が咲くボタン園もあり、季節ごとに異なる花の風景を楽しめます。園内の農業公園レストランフラールでは、地元でとれた農作物を中心とした20から30種類ほどの料理をビュッフェスタイルで味わえます。営業時間は11時から14時までです。

いなべ市藤原町には、廃校となった校舎をリノベーションした施設もあります。カフェスペースと充実した遊び場を備えており、子供を連れての麓散策の合間に立ち寄るスポットとしても向いています。

阿下喜エリアには日本一長いナローゲージの北勢線が走る

阿下喜駅は三岐鉄道北勢線の終着駅です。北勢線は桑名市の西桑名駅からいなべ市の阿下喜駅までを結ぶ路線で、762ミリ軌間のナローゲージとしては日本国内でも数少ない現役路線の一つであり、日本一長いナローゲージ路線として知られています。1914年に大山田(現在の西桑名)から楚原間で軽便鉄道として開業した歴史ある路線で、2003年4月1日からは三岐鉄道が運営を継承しました。藤原岳の麓を歩いた後、こうした個性的なローカル鉄道に乗って阿下喜の町を訪れるのも、いなべ市ならではの旅の楽しみ方といえるでしょう。

いなべ市の阿下喜エリアには、温泉やサウナ、食事、宿泊が一体となった複合施設もあり、風情ある町並みを楽しみながら心身を整えられるスポットとして紹介されています。藤原岳の麓を歩いて体を動かした後、この温泉でゆっくり疲れを癒すという組み合わせも人気の楽しみ方のようです。

西藤原駅の構内には2001年に開設された西藤原駅前SL公園があり、蒸気機関車E102号機、電気機関車ED22型、ディーゼル機関車DB25号機の3両の実物車両が保存・展示されています。駅からすぐの場所にあるため、麓を訪れた際の軽い散策と合わせて立ち寄りやすいスポットです。

麓ウォーキングの注意点は足元の装備と熊対策

麓を歩く際にもいくつか押さえておきたい点があります。

麓の散策であっても山間部であることに変わりはないため、歩きやすい靴を用意するのが基本です。舗装されていない道や落ち葉、石の多い箇所もあるので、スニーカーやトレッキングシューズなど足元をしっかり守れる靴を選んでください。季節による気温差も大きいので、羽織れる上着を持っておくと安心です。4月に入っても山中には残雪が残る場所があるとされているため、少し山側へ足を伸ばす場合は着替えや足元の装備を万全にしておいたほうがよいでしょう。

麓周辺には藤原岳自然科学館やにぎわいの森など、休憩や食事ができるスポットが点在しているので、あらかじめルートに組み込んでおくと余裕を持って歩けます。フクジュソウの開花に日照が影響するように、山の景観や花の観賞は天気に左右される部分が大きいため、できるだけ晴れた日を選んで訪れることをおすすめします。

安全面では、藤原岳で熊の出没情報が報告されたことがあり、実際に4合目付近で熊に遭遇したという報告も見られます。麓周辺を歩く際も熊鈴を携行するなど、野生動物との遭遇に備えた対策をしておくと安心です。少しでも山側へ入って歩く場合は、スマートフォンから提出できる登山届の活用も検討してください。万が一の際の捜索・救助にもつながるため、コースや行程が分かる形で記録しておくことが望ましいといえます。

冬場に山側まで足を伸ばす場合は、積雪への備えも必要です。藤原岳は場所によって20センチメートルほどの積雪になることがあり、軽アイゼンやチェーンスパイクといった簡易な装備を夏山の装備に足すだけで対応できるケースも多いようですが、トラバース箇所では滑落に注意が必要とされています。北風が強まる場面もあるため、標高や時間帯によって気温差が大きくなる点も踏まえておいたほうがよいでしょう。藤原山荘には冬季トイレも備わっており、雪山登山を初めて試す人にも比較的挑戦しやすい山とされています。

麓には数千年の歴史を感じさせる神社仏閣が点在する

麓のウォーキングコースの途中には、歴史を感じさせる神社仏閣や史跡が点在しています。聖宝寺のほかにも延喜式内社にあたる古い由緒を持つ神社がいなべ市内には複数存在するとされ、山と人の暮らしが古くから結びついてきたことをうかがわせます。

藤原岳の麓に広がる旧藤原町エリアは、春の桜、初夏の緑、秋の紅葉と四季折々の自然に恵まれた地域でもあります。藤原岳という存在の大きさとともに、この地域には数千年にわたる歴史が刻まれてきたとされ、山と人の暮らしが深く結びついてきた土地柄がうかがえます。

地質の面から見ると、藤原岳は石灰岩地帯特有のドリーネ(石灰岩が溶食されてできる漏斗状のくぼ地)が点在するカルスト地形が広がっており、山頂付近の平坦な地形とあわせて、日本の山の中でも独特の景観を持つ山として位置づけられています。麓からこうした地形の成り立ちに思いを馳せながら歩くのも、藤原岳ウォーキングの奥深い楽しみ方の一つです。

いなべ市は2003年に4町が合併して誕生した三重県最北端の市

藤原岳の麓が属するいなべ市は、2003年に員弁郡の4つの町が合併して誕生しました。三重県内でも最北端に位置し、岐阜県や滋賀県と接する山あいの市です。旧藤原町にあたるエリアが、今回紹介した藤原岳の麓のウォーキングコースの舞台になります。市域が複数の旧町にまたがる分、農業公園やにぎわいの森、阿下喜の温泉施設など、目的別に立ち寄れる観光スポットが市内に分散しているのも、いなべ市を旅する際の特徴といえそうです。

藤原岳の麓は季節と目的に応じてコースを選べる

三重県いなべ市に位置する藤原岳は、鈴鹿セブンマウンテンの一座であり花の百名山にも選ばれた山です。山頂を目指す本格的な登山は健脚向けですが、麓には大貝戸登山道や聖宝寺コース、西藤原駅前公園、藤原岳自然科学館など、気軽に歩いて楽しめるスポットが数多く点在しています。

三岐鉄道西藤原駅からも自動車からもアクセスが整っており、日帰りで十分に楽しめる立地です。春はフクジュソウやセツブンソウ、カタクリの花々、秋は聖宝寺周辺の紅葉と、季節ごとに異なる魅力があります。ウォーキングの前後には、にぎわいの森や阿下喜エリアの温泉施設、いなべ市農業公園、藤原町の廃校リノベーション施設など、いなべ市内の観光スポットにも立ち寄れば、一日を通して充実した時間を過ごせるでしょう。

自然観察や写真撮影、家族での散策、健康づくりのためのウォーキングなど、目的やレベルに応じて多様な楽しみ方ができるのが、いなべ市にある藤原岳の麓エリアの魅力です。駐車場情報やアクセス方法、季節ごとの見どころを事前に確認し、無理のない計画を立てて出かけてみましょう。

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