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七時雨山は、標高1063mの岩手県八幡平市の山で、頂上が北峰と南峰の2つに分かれています。南峰のてっぺんは広々とした草原で、登山道は牛を放す牧野を通ります。いちばん短い西根寺田登山口からの往復なら約2時間なので、日帰りで登れる山です。
登山家の岩崎元郎氏が2004年に選んだ新日本百名山にも、七時雨山は入っています。新日本百名山は全部で100山あり、そのうち52山は日本百名山と同じ山です。選ぶときの視点は、中高年でも登りやすいかどうかだったそうです。
大きなカルデラをつくっているのは、七時雨山と田代山の2つの山です。その山麓に広がるのがカルデラ草原です。かつて南部駒が跳ね回っていたこのカルデラ草原は、今は黒毛和牛が草をはむ牧草地と、広い野菜畑になりました。麓を走る鹿角街道の沿道には、江戸時代までの往来をしのばせる史跡もたくさん残っています。八幡平の方向から眺めると、七時雨山は北東に立つ独立峰で、形のよさが目立ちます。

七時雨山の北峰には一等三角点、南峰の頂上には草原と権現様
七時雨山の北峰には一等三角点が置かれ、南峰には権現様が祀られています。景色を楽しむなら南峰のほうが上です。
北峰から南峰までは15分ほどの距離です。南峰の頂上は一面が草原で、周りに視界をさえぎるものがほとんどありません。権現様のある南峰は、昔から雨乞いをしたり、暮らしの安らぎを祈ったりする場所でした。
双耳峰は鞍部をはさんで2つの頂上が並ぶ山
双耳峰とは、ひとつの山に頂上が2つあり、そのあいだを鞍部(コル)が分けている山を指します。英語ではツインピーク、あるいはダブルサミットと呼びます。
一等三角点は5万分の1地形図の骨組みになった三角点
三角点には一等から四等までの区分があり、国内に設けられた数は約10万9千点にのぼります。なかでも一等三角点は、明治時代に国じゅうを同じ規格で、しかも高い精度で測る目的で置かれました。一等三角点どうしを結んだ三角網が、5万分の1地形図の骨組みになっています。三角点の多くは山頂の近くや見通しのきく場所にあり、経度と緯度、標高が正確に測られています。
日帰りで登るなら、最短は西根寺田登山口から往復約2時間
短い時間で山頂に立ちたい人には、西根寺田登山口からの往復が向いています。
案内されている登山口は2か所で、田代平高原の駐車場と七時雨山荘です。
| コース | 所要時間 | 距離 | 標高差 | 難易度・特徴 |
|---|---|---|---|---|
| 西根寺田登山口からの往復 | 約2時間 | 2.9km | 406m | やさしい |
| 田代平高原コース(一例) | 約3時間55分 | 7.8km | 627m | 牧野を通り、放牧された牛が見られる |
田代平高原コースの数字は1人の登山者の記録をもとにしたもので、休む回数や天気しだいで長くも短くもなります。
七時雨山荘から登ると3合目でミズナラ林に入る
七時雨山荘から歩き出すと、最初は幅の広い作業道です。しばらく行くと登山道に入り、牧野の斜面を登り切ったところが3合目のミズナラ林になります。そこから先は木々の中の急な登りが続きます。道はよく手入れされていて歩きやすかったという登山者がいる一方、九合目からは泥道で歩きにくかったという声もありました。
車で来た場合は、山荘の横に停められる場所があります。山荘の人へひとこと声をかけてから停めましょう。
旧鹿角街道を歩く周回ルートは行動時間が長くなる
街道歩きと組み合わせた周回の記録もあります。JR花輪線の荒屋新町駅から出発し、旧鹿角街道をたどって高清水登山口まで歩き、そこで街道を離れて南峰へ登るルートです。帰りは西根寺田登山口の方向へ下り、賽の神群の分岐で旧鹿角街道へ戻ってから、車之走峠を越えて高清水登山口へ降りてきます。
街道の途中には、七時雨一里塚をはじめとする文化財が点在しています。ただ、旧街道を歩く区間が長いので、日帰りでも行動時間は長くなります。
麓の田代平高原は標高約700mの草原で、夏は短角牛が放牧される
田代平高原は、七時雨山の麓、八幡平市古屋敷に広がる標高約700mの草原です。夏になると短角牛が放され、のどかな牧場の景色になります。
初夏はレンゲツツジやワタスゲの花が咲き、6月上旬から中旬には伸び始めたばかりの牧草も目を引きます。秋は金色に波打つススキの向こうに、遠く岩手山が重なって見えるそうです。
放牧の日程は牧場の運用で決まるため、出かけても牛に会えるとは限りません。また、12月中旬から翌年の4月中旬までは通行止めになります。
日本短角種は岩手県で生まれた放牧の牛
田代平高原で草をはむ短角牛は、正式には日本短角種といいます。明治時代に岩手県の岩泉で、もとからいた南部牛とアメリカのショートホーン種をかけ合わせて誕生しました。祖先の南部牛は、江戸時代の南部藩で内陸と海沿いのあいだの荷運びを担っていた牛です。
東北地方で生まれた品種は、日本短角種が唯一とされています。生産頭数は岩手県が全国でいちばん多く、育てているのはおもに県北の地域です。毎年5月に牧場へ出され、雪がちらつき始める10月下旬まで外で過ごします。
山開きは5月第4日曜日、南峰を目指すなら雪が消えてから
七時雨山の山開きは、毎年5月の第4日曜日です。
それより前の4月に登った人の記録では、北峰までは行けたものの、南峰への道には急な斜面に雪がまだ張りついていて、その手前で引き返しています。南峰まで足をのばすなら、雪がすっかり消えてからにしてください。
春先の山では、キクザキイチゲがたくさん咲いていたという記録があります。雪の積もった時期に登る人もいて、南峰では雪に埋もれた看板から雪を払う様子も報告されていました。
山頂の展望はガスしだい、晴れれば北峰から岩手山まで見える
七時雨山の名前は、1日に7回も天気が変わる(時雨れる)ことからついたそうです。山頂付近は霧に包まれやすく、天気によってはまったく景色が見えない日もあります。
晴れていれば、北峰から田代平高原や田代山、そして岩手山まで一望できます。
反対に、2026年6月6日に日帰りで登った人は、曇り空に小雨まで降り、山頂の手前から霧に包まれて何も見えなかったそうです。
アクセスは荒屋新町駅か平舘駅からタクシー、車なら西根ICで降りる
電車で行く場合は、JR花輪線の荒屋新町駅か平舘駅が玄関口になります。駅から登山口までの道のりは長めなので、タクシーの利用も考えておきましょう。車なら、東北自動車道の西根ICで降りて国道282号に入り、県道田代西根線を進みます。
| 出発地 | 行き先 | 移動手段 | 所要時間 |
|---|---|---|---|
| JR花輪線の平舘駅 | 七時雨山荘 | 車 | 約20分 |
| JR花輪線の荒屋新町駅 | 七時雨山荘 | 車 | 約20分 |
| JR花輪線の荒屋新町駅 | 田代平高原 | タクシー | 約20分 |
| 盛岡駅 | 七時雨山荘 | 車 | 約1時間 |
荒屋新町駅の前には、車を停められる場所とトイレがあります。
現地ガイドは八幡平市観光協会が紹介している
八幡平市観光協会のホームページを開くと、「日に七たび時雨というみちのくの名峰七時雨山・田代山登山」という題の山行企画が掲載されていて、あわせて現地ガイドを紹介しています。紹介されているのは、八幡平市山岳ボランティアガイドの会と八幡平市山岳協会の2団体です。
七時雨山荘は2026年11月8日まで営業する「星降る山荘」
登山口のひとつである七時雨山荘は、「星降る山荘」と呼ばれる宿です。2026年は5月1日から11月8日までの営業です。
特色は、古民家を使った日本で初めての本格的な薪サウナと、夜空の下での天体観測です。環境省認定の星空が見られます。
八幡平の東部には落差15mの不動の滝もある
田代平、七時雨、田山の地区の見どころには、不動の滝も挙がります。場所は旧安代町を流れる不動川の上流で、国樽沢にかかる高さ15mの滝です。車を停めたら、桜松神社の参道を約5分歩くと滝の前に出られます。
登る前にクマと牛のふん、足元の準備を確認する
七時雨山では、笹藪の中でクマを目にしたという登山者がいます。クマ鈴のように音の鳴るものを身につけ、ひとりで行動しないようにしてください。ツキノワグマがどこに出ているかは岩手県のホームページで公開されているので、出かける前に目を通しておくと安心です。
足元については、先ほどの6月6日の記録が参考になります。踏み跡はくっきりしていて、ローカットの靴でも問題なく歩けたそうです。ただ、牧場の中を通る区間では、牛のふんに注意するよう案内されています。
七時雨山は草原と岩手山の眺めを日帰りで楽しめる八幡平市の山
七時雨山は、八幡平市にある標高1063mの双耳峰で、草原に覆われた南峰と一等三角点のある北峰を、日帰りでまとめて歩けます。手早く登るなら西根寺田登山口からの往復約2時間、牛のいる牧野を歩くなら田代平高原コースです。山開きは5月の第4日曜日で、山頂は霧がかかりやすく、晴れた日には北峰から岩手山まで見渡せます。








