近江富士と呼ばれる野洲市の低山、三上山へ山出から登山40分

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近江富士の名で親しまれる三上山は、滋賀県野洲市の山で、標高は432メートルです。山出のバス停から山頂までは歩いて約40分で、登山情報サイトが初心者向けとして挙げるコースは2つ、必要な体力の目安は1から2(5段階評価)です。ただし、表登山道には急な登りが続き、裏登山道には濡れると滑る岩や木の根があります。

三上山は、西のふもとにある御上神社が御神体として祀る山でもあります。山頂には奥宮があり、神が降りたと伝わる岩も残っています。ふもとの神社の本殿は国宝です。

山の東側には県立の森林公園があります。周りには銅鐸の博物館や、国指定名勝の庭園を持つ古社もあります。

目次

三上山が近江富士と呼ばれるのは山の形が富士山に似ているから

三上山が「近江富士」と呼ばれる理由は、山の形が富士山に似ているからです。なだらかな稜線を持つ姿は古くからこの名で呼ばれてきました。新幹線の窓からも見えますし、琵琶湖の向こう岸にある比叡山からも、湖をはさんで近江富士の姿を眺められます。

周りに大きな山がないので、432メートルという高さの割によく目立つ山です。

平野に一つだけ取り残された残丘

地形として見ると、三上山は平野から一つだけ盛り上がった残丘にあたります。残丘(ざんきゅう)とは、侵食されずに残り、ぽつんと孤立した丘のことです。地形学ではモナドノックとも呼びます。

残丘が取り残されるのは、周囲より岩盤が硬いためです。名前の由来はアメリカのモナドノック山で、日本で典型とされる残丘は、岩手県の早池峰山です。

全国400座以上の郷土富士のなかの一つ

近江富士は、各地の山を集めた郷土富士の一覧に、三上山の別名として載っています。郷土富士(ご当地富士)は、富士山の名声と富士信仰にあやかって、地元の山を「富士」と呼んだものです。全国で400座以上あるとされます。

古くは、浅間神社を祀る地元の山を富士と呼んだ例がありました。郷土富士には、尾張富士や美濃富士のように、本物と姿の違う山も多く含まれます。形の似た山に富士の名を付けるのが一般的になったのは、明治維新より後のことです。北海道の利尻富士がその一例です。

むかで山の名は俵藤太の大百足退治から

三上山には「むかで山」という別名もあります。俵藤太(藤原秀郷)が大むかでを退治した伝説から来た呼び名です。

御伽草子『俵藤太物語』では、話は瀬田の唐橋から始まります。藤太が橋の上の大蛇を踏み越えていくと、大蛇の正体は琵琶湖の龍神の身内でした。三上山の大百足に手を焼いていた龍神は、藤太に退治をお願いします。

ところが、藤太の放った矢は百足の体に当たって跳ね返されてしまいます。このとき藤太が思い出したのが、百足は人の唾に弱いといううわさでした。矢に唾をつけて放つと、矢は百足の眉間を貫いたそうです。お礼として龍神は、米がいくら取っても尽きない俵や、使っても尽きない巻絹といった宝を藤太に贈ったと伝わります。

藤原秀郷は平安時代中期の東国の武将です。平貞盛とともに、平将門の乱を平定しました。

野洲駅からバスで山出へ、車なら無料駐車場が2か所

三上山へは、電車とバスでも車でも行けます。車で行く場合は御上神社と近江富士花緑公園に駐車場があり、登山の出発点に選ばれることが多いのは御上神社の駐車場です。

行き方経路時間・台数など
電車とバスJR野洲駅から滋賀交通バスの北山台行きに乗り、山出で降りる乗車は約10分
車名神栗東ICから三上山まで約10分
駐車場御上神社の駐車場20台、無料
駐車場近江富士花緑公園の駐車場260台、無料
電車とバス(花緑公園へ)JR野洲駅から近江鉄道バス約15分

三上山の登山道は表が急な登り、裏はなだらかだが濡れると滑りやすい

三上山には表登山道と裏登山道があり、性格がはっきり違います。表登山道は急な登りが続く道で、裏登山道は表よりなだらかです。この違いから、帰りに裏登山道を下る歩き方があります。

ただ、裏登山道にも歩きにくさはあります。岩盤がむき出しになっているところや、木の根が張り出しているところが多く、雨の後など濡れた状態では足を取られやすくなります。

割岩・姥の懐・女山をめぐって一周する

一周するなら、表登山道を登って割岩へ進み、姥の懐、女山を経由して裏登山道で下りる道順があります。割岩は、表登山道を登る途中にある地点です。

一周しない歩き方もあります。表登山道で割岩まで登って同じ道を戻る往復や、裏登山道から女山に立ち寄って山頂に向かうルートが、実際に歩かれています。

トレイルランで裏の登山口を出て山頂を経由し、表側の登山口まで走った記録は約2時間20分です。

花緑公園から登ると途中に2つの分岐がある

一般的なコースの出発点には、近江富士花緑公園のふるさと館前にある駐車場もあります。ここから登ると、道の途中で2回、別の道と分かれます。

1つ目は、妙光寺山や田中山へ延びる縦走路です。もう1つは「中段の道」と呼ばれる道で、三上山の中腹をぐるりと一周しています。分岐では案内板を見て進みます。

三上山から妙光寺山へのモデルコースは約3時間55分

三上山の周辺では、花緑公園のふるさと館を出発し、女山、三上山(近江富士)、東光寺岩梨山、東光寺日陽山、東光寺不動山、妙光寺山、旗振山、田中山の8座を周回した記録があります。

ヤマップのモデルコース「三上山-妙光寺山-三上神社」の数字は、次のとおりです。

項目数値
標準タイム約3時間55分
距離7.0キロ
登りの累積標高596メートル

道の組み立て方はいくつかあります。割岩から山頂を経て妙光寺山と田中山を目指す経路があり、妙光寺御池へ下りる道もあります。

田中山までつなぐ長い周回では、ザレた急な登りと上り下りの繰り返しが続き、夏はとくに体力を削られます。妙光寺山を過ぎた先には、荒れた山道を下る区間もあります。岩場の一部は立入禁止になっているため、案内の表示に従って歩きます。

低山の三上山でも雨具・ヘッドライト・水は必ず持つ

標高が低くても、山は山です。2023年の1年間に全国で起きた山岳遭難は3,126件にのぼり、その多くを道迷い、滑落、転倒が占めました。

用意するものは、雨具と防寒具、食料と水、それにヘッドライトと携帯電話です。ただ、山の中には携帯電話が通じない場所もあります。

計画は、日が沈む前に余裕を持って下りてこられる時間で組みます。入山する前には気象情報を確かめ、できれば一人ではなく何人かで登ります。

山頂は木に囲まれ、近くの展望台から琵琶湖を一望できる

三上山の山頂そのものは、木々に覆われています。景色が開けるのは、山頂のそばにある展望台です。ここからは琵琶湖と、比叡や比良の山並みが見渡せます。

元日には、初日の出を拝む登山大会が開かれています。近江富士の山頂付近でご来光を迎える催しで、集合は例年1月1日の午前4時45分ごろ、場所は御上神社にある楼門の前です。参加費はかからず、申し込みも要りません。

三上山は御上神社の御神体で、山頂に奥宮と磐座がある

三上山は、西のふもとに建つ御上神社の御神体です。山頂には奥宮が鎮座し、その近くには神社の祭神が降りてきたと伝わる磐座があります。

神社の言い伝えによると、天之御影神が三上山の頂上に降臨しました。それを受けて、御上祝と呼ばれる神主が三上山を神体として祀ったのが、神社の始まりとされます。天之御影神は、刀鍛冶の祖神とされる神です。

社殿の造営は、養老2年(718年)に藤原不比等が天皇の命令で行ったと伝えられています。社殿は、山を拝む場所だった榧木原という地に建てられたとも記されています。いまの社地も、古代から山のふもとで祭祀を行ってきた場所とされます。

磐座は神が降りて座る岩

磐座(いわくら)とは、神が降りてくる岩、または神が座る岩のことで、古神道の考え方です。信仰の対象として拝まれる岩そのものを磐座と呼ぶ場合もあります。

言葉の成り立ちは「岩の座」で、そこに霊的な力が宿る岩という意味が加わったとされます。天孫降臨を描いた『日本書紀』の条では、天孫が座る場所を磐座と表し、神体、依代(よりしろ)、神座の意味で使っています。神社のなかには本殿を建てず、磐座を直接拝む形のところもあります。

山そのものを拝む神体山の代表は奈良の三輪山

神体山とは、山を神の体(御神体)として拝む信仰と、その対象になる山を指します。山頂などに本殿を建てず、ふもとの拝殿から山を遥拝するのが特徴です。

奈良県桜井市にある三輪山がその代表例です。三輪山を祀る大神神社は本殿を持たず、参拝者は拝殿から三輪山そのものに手を合わせます。

御上神社の本殿は国宝、拝殿と楼門は重要文化財

御上神社の建物のうち、本殿は国宝です。鎌倉時代後期に建てられたとされ、神社と寺院、殿舎の様式を組み合わせた独特の造りから「御上造」と呼ばれています。桁行と梁間がともに三間の入母屋造で、屋根は檜皮葺です。仏教建築からの影響も見て取れます。

拝殿と楼門は国の重要文化財です。楼門は三間一戸の入母屋造、檜皮葺の門です。建てられた時期は本殿と同じ鎌倉時代後期とされます。拝殿は、屋根の形と葺き方が楼門と共通で、もとは本殿だった建物を移して造り替えたと伝わります。

楼門を通り抜けると、拝殿、本殿、若宮社、三宮社などが並んでいます。本殿の左手に建つ若宮社も重要文化財です。

区分国が指定する対象
重要文化財有形文化財のうち、国が指定したもの
国宝重要文化財のなかでも、世界の文化から見て特に価値が高く、たぐいない国民の宝とされるもの

秋のずいき祭は国の重要無形民俗文化財

御上神社で知られる祭りに、5月下旬に行う「悠紀斎田記念御田植祭」と、10月中旬に行う秋季古例祭があります。

秋季古例祭は「ずいき祭」と呼ばれています。五穀豊穣に感謝する祭りで、里芋の茎を材料にした「ずいき御輿」を神前にささげるのが、祭りの名前の由来です。2005年に国の重要無形民俗文化財に指定されています。重要無形民俗文化財とは、衣食住、生業、信仰、年中行事などの風俗慣習や民俗芸能のうち、国にとって大切なものを文部科学大臣が指定した文化財です。

山頂で行われる祭りもあります。毎年6月18日の夜明け前に営まれる「山上祭」で、山の上に神を降ろす古いかたちの祭祀です。

東のふもとの近江富士花緑公園は2025年3月にリニューアル

三上山の東側のふもとには、滋賀県立近江富士花緑公園という森林公園があります。リニューアルオープンは2025年3月で、その年の8月からは木育施設「しがモック」を一般の人も使えるようになりました。

園内の中心は、宿泊と物販の拠点になっている木造の「ふるさと館」です。和室とひのき風呂を備えています。ほかに、泊まる人のためのロッジ、植物園、遊具のある広場もあります。

開園時間は9時から17時までで、毎週月曜日と年末年始は休みです。

三上山の周りは銅鐸の出土地、大岩山の銅鐸は重要文化財

三上山のあたりは、銅鐸がたくさん見つかった土地としても知られています。明治14年には、大岩山で遊んでいた子どもが偶然に銅鐸を見つけたとされます。

銅鐸がまとめて大量に見つかった場所として、大岩山地区はかつて日本一でした。その座が入れ替わったのは平成8年で、島根県雲南市の加茂岩倉遺跡から39点が出土したときです。大岩山から出た銅鐸は重要文化財の指定を受け、大岩山古墳群も史跡になっています。

大岩山の銅鐸を中心に展示しているのが、弥生の森歴史公園の中にある銅鐸博物館(野洲市立歴史民俗資料館)です。館内では、銅鐸がどのように生まれ、どう鋳造されたかも解説しています。野洲駅から近江鉄道バスに乗り、「銅鐸博物館前」で降りればすぐです。

兵主大社の庭園や家棟川の手こぎ船も近い

三上山の周辺には、ほかにも立ち寄り先があります。

兵主大社は、718(養老2)年に創られたと伝わる古い神社です。境内には国指定名勝の池泉回遊式庭園があり、拝観料は200円です。行き方は、野洲駅から近江鉄道バスに約15分乗り、「兵主大社前」で降りればすぐです。

家棟川では、手こぎ船の上で漁師料理を味わう体験ができ、船からは近江富士や比良山系の景色を楽しめます。問い合わせ先は野洲市商工観光課です。琵琶湖のほとりには、マイアミ浜オートキャンプ場もあります。

三上山の登山は初心者向け、周辺に公園と博物館

三上山は、初心者向けのコースを持つ野洲市の近江富士です。割岩や女山をめぐる周回もでき、周辺には近江富士花緑公園や銅鐸博物館があります。

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