滋賀県長浜市にある賤ヶ岳は、リフトを使えばわずか6分で山頂近くまで登れて、山頂からは琵琶湖の絶景を楽しめる山です。標高421メートルとそれほど高くありませんが、南に琵琶湖と竹生島、北に余呉湖、東に伊吹山までを見渡せる360度の展望が魅力となっています。本格的な登山装備がなくても家族連れで気軽に訪れられる手軽さも、この山が長く親しまれてきた理由のひとつです。
琵琶湖と余呉湖という性格の異なる二つの湖を同時に望める山は全国的にも珍しく、この眺めは「琵琶湖八景」のひとつに数えられています。さらに1583年には、織田信長の後継をめぐって柴田勝家と羽柴秀吉が激突した「賤ヶ岳の戦い」の舞台にもなりました。登山と絶景、そして戦国時代の歴史を一度に味わえる場所として、初心者からベテランのハイカーまで幅広く支持されています。

賤ヶ岳リフトの料金は大人往復900円、山頂まで6分
麓の駅から賤ヶ岳リフトに乗り込めば、山頂近くまでの所要時間は約6分です。リフトを降りたあとは、階段状の遊歩道を10分ほど歩くと山頂に着きます。登山靴やザックといった本格的な装備をそろえなくても、絶景まで一気に近づけるのがこのリフトの一番の強みでしょう。
料金は大人が往復900円(片道500円)、子供が往復500円(片道300円)です。家族4人で訪れても大きな出費にはならない価格設定なので、小さな子どもや高齢の家族と一緒でも安心して絶景ハイキングに挑戦できます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 大人運賃(往復) | 900円 |
| 大人運賃(片道) | 500円 |
| 子供運賃(往復) | 500円 |
| 子供運賃(片道) | 300円 |
| 通常営業時間 | 9時から17時 |
| 11月の営業時間 | 9時から16時 |
| 通常の下り最終乗車 | 16時45分 |
| 11月の下り最終乗車 | 15時45分 |
営業時間は9時から17時までですが、11月に入ると16時までの短縮営業に切り替わります。下りの最終乗車時刻も通常は16時45分、11月は15時45分までと早まるため、紅葉シーズンに訪れる場合はスケジュールにゆとりを持たせたほうがよさそうです。
営業期間は例年4月上旬から11月下旬ごろまでで、積雪や強風の多い冬季は運休となります。厳冬期の賤ヶ岳を目指すなら、リフトに頼らず徒歩で登る必要がある点は覚えておいてください。
木之本インターから車3分、木ノ本駅からは無料シャトルバスも運行
車で訪れる場合、北陸自動車道の木之本インターチェンジから約3分というアクセスの良さが光ります。関西方面からも中京方面からも寄りやすく、日帰りドライブの目的地として選ばれることが多いようです。リフト乗り場の近くには無料駐車場が2か所あり、駐車料金を気にせず利用できます。
公共交通機関を使う場合は、JR北陸本線の木ノ本駅が最寄りです。木ノ本駅からタクシーなら約5分、路線バスなら大音バス停下車で徒歩約10分を含めて約15分、徒歩だけでも約40分ほどで到着できます。
2026年4月18日からは、木ノ本駅と賤ヶ岳リフトを結ぶ無料シャトルバスが土日・祝日とお盆期間に運行を始めました。運行時間内であれば何度でも自由に乗り降りできる仕組みで、車を持たない観光客や地元住民にとって利便性が大きく向上しています。公共交通機関だけで訪れたい方は、事前にこのシャトルバスの運行日程を確認しておくと当日の動きがスムーズになるでしょう。
リフト下の登山道は50分、余呉湖側は歴史散策込みで本格ルート
賤ヶ岳へは複数の登山口からアクセスでき、体力やその日の目的に合わせてルートを選べます。
賤ヶ岳リフトの真下を通る登山道は距離が短く整備も行き届いているため、小さな子ども連れのファミリーハイクに向いています。リフトを使わずに歩いて登ることもでき、山頂までの所要時間はおよそ50分です。特別な装備は必須ではなく、歩きやすいスニーカーと動きやすい服装があれば十分に楽しめる難易度といえます。
一方、余呉湖側からの登山ルートはリフト側のコースより距離が長く、ある程度の体力が求められます。日頃から山歩きをしているハイカーに人気があり、余呉湖の湖畔風景を眺めながら歴史ゆかりの史跡をたどれるのが特徴です。余呉駅近くの江土(えづち)登山口から入るルートもあり、歴史散策と登山を組み合わせたい人に好まれています。
「リフトで気軽に絶景だけを楽しむ」「徒歩で本格的な登山を楽しむ」「余呉湖側から歴史散策を兼ねて登る」という3通りの楽しみ方が用意されているので、訪れる人の体力やスケジュールに合わせて柔軟にプランを組み立てられます。初めて訪れるなら、まずリフトで山頂の景色を体感してから、時間と体力に余裕があれば周辺の登山道を歩いてみるという流れがおすすめです。
登山前に確認したい服装と持ち物の目安
賤ヶ岳はリフトを使えば手軽に山頂近くまで行ける山ですが、リフトを降りたあとの遊歩道や、徒歩ルートを選ぶ場合には、それなりの準備をしておいたほうが安心です。滑りにくいソールのスニーカーやトレッキングシューズを履いておくと、階段状の遊歩道や登山道でも足元が安定します。
琵琶湖のほとりに位置する山なので、平地よりも風が強く吹くことが少なくありません。夏場でも山頂は風で体感温度が下がりやすく、薄手の羽織りものを一枚持っておくと重宝します。逆に春や秋は日中と朝晩の気温差が大きいので、脱ぎ着しやすい服装を選んでおくと快適に過ごせるでしょう。
水分補給も忘れずに用意しておきたいところです。リフト乗り場周辺には売店がありますが、山頂には自動販売機などが常にあるとは限らないため、ペットボトルの飲み物を1本程度持参しておくと安心です。写真撮影を楽しみたい人は、スマートフォンとあわせて広角で撮れるカメラを用意しておくと、360度に広がる琵琶湖と余呉湖の景色をより印象的に残せます。
日差しの強い季節は帽子や日焼け止めも欠かせません。リフトに乗っている間や山頂の遊歩道は木陰が少ない区間もあるため、真夏に訪れる際は熱中症対策をしっかり意識しておくと、家族連れでも安心して観光を楽しめます。
山頂の360度パノラマと2026年誕生の絶景ブランコ
山頂に立つと、南側には琵琶湖の雄大な水面と、豊臣秀吉ゆかりのパワースポットとして知られる竹生島が浮かびます。北側には静かな余呉湖が広がり、東側には滋賀県と岐阜県の県境にそびえる伊吹山まで望めます。四方それぞれに違う表情の景色が広がるのが、賤ヶ岳ならではの魅力です。
琵琶湖と余呉湖という性格の異なる二つの湖を同時に見渡せる山は全国的にも珍しく、この眺望こそが賤ヶ岳が「琵琶湖八景」のひとつに数えられている理由でもあります。晴れた日には遠くの山並みまでくっきり見渡せて、写真撮影スポットとしても多くの観光客に親しまれています。
2026年4月26日からは、この絶景をさらに楽しめる新しいスポットも誕生しました。琵琶湖を一望できる「絶景ブランコ」と、記念撮影に最適な「フォトスポット」が新設され、展望だけでなく体験型のアクティビティとしても賤ヶ岳の魅力が広がっています。ブランコに揺られながら琵琶湖と山々のパノラマを眺める体験は、これまでの賤ヶ岳観光にはなかった楽しみ方として注目を集めています。
1583年の賤ヶ岳の戦いで秀吉が柴田勝家を破る
賤ヶ岳は展望スポットであると同時に、日本史における重要な合戦の舞台でもあります。1583年(天正11年)4月、近江国のこの一帯で柴田勝家と羽柴秀吉(のちの豊臣秀吉)が織田信長の後継をめぐって激突しました。これが「賤ヶ岳の戦い」です。
戦いの背景には、天正10年(1582年)6月に起きた本能寺の変があります。織田信長が明智光秀の謀反で命を落としたあと、織田家の後継者を決める清洲会議が開かれました。この会議で秀吉は、信長の長男・織田信忠の遺児である三法師(のちの織田秀信)を後継者として推薦し、その発言力を背景に主導権を握っていきます。これに不満を持った柴田勝家との対立が深まり、両者は軍事衝突へと向かいました。
合戦当日、柴田軍の佐久間盛政が秀吉不在の隙を突いて大岩山砦や岩崎山砦を陥落させる奇襲に成功します。しかし、当時美濃の大垣に在陣していた秀吉が、わずかな時間で本隊を賤ヶ岳周辺まで引き返させた「美濃大返し」と呼ばれる急行軍によって戦局は一変しました。さらに、柴田軍の一翼を担っていた前田利家が戦線を離脱したことで柴田軍の陣形と士気は崩れ、秀吉軍が佐久間盛政軍、そして柴田勝家本隊を打ち破る結果になりました。
この戦いに勝利した秀吉は、織田信長が築いた権力基盤を実質的に継承し、天下人への道を大きく前進させます。敗れた柴田勝家は本拠地である北ノ庄城(現在の福井市)に退き、正室のお市の方とともに自害してその生涯を閉じました。賤ヶ岳の戦いは一地方の合戦にとどまらず、日本の歴史の転換点として位置づけられる出来事です。
現在の山頂には、この戦いを記念する戦跡碑や戦没者の碑が建てられており、当時の激戦を伝えています。登山や絶景鑑賞だけでなく、こうした歴史に思いを馳せながら山頂に立つと、賤ヶ岳観光はより深みのある体験になるはずです。
戦国時代の合戦の多くは平地や城郭を舞台にしていますが、賤ヶ岳のように山の地形そのものが勝敗を左右した戦いは全国的にも珍しい部類に入ります。琵琶湖と余呉湖に挟まれた尾根筋という限られた地形だからこそ、砦の配置や奇襲のタイミングが戦局を大きく揺さぶったといえるでしょう。実際に山頂へ立って周囲の地形を見渡すと、当時の武将たちがなぜこの一帯を重要な戦略拠点と見なしたのかが、地図の上で読むよりも実感しやすくなります。
賤ヶ岳の七本槍、福島正則は5千石加増の大功
賤ヶ岳の戦いの追撃戦で、秀吉軍のなかでもとりわけ目覚ましい武功をあげたのが、のちに「賤ヶ岳の七本槍」と称えられる若武者たちです。一般的に、片桐且元、糟屋武則、加藤清正、加藤嘉明、脇坂安治、福島正則、平野長泰の7名がこれにあたるとされています。
なかでも福島正則は豊臣秀吉の親族にあたる人物で、幼い頃から秀吉の小姓として仕えていました。賤ヶ岳の戦いでは自ら先陣を切って敵陣に突入し、敵将・拝郷家嘉を討ち取る大功をあげ、七本槍のなかでも最多となる5千石の加増を受けています。のちに秀吉政権を支える重臣として、また賤ヶ岳の戦いの立役者として名を残しました。
加藤清正も、賤ヶ岳の戦いで頭角を現した武将のひとりです。秀吉と同郷の尾張国愛知郡中村に生まれた清正は、当初は羽柴方であったものの柴田方に寝返った山路正国を討ち取ったと伝えられています。この戦功が評価され、のちに肥後半国19万5千石を与えられて熊本城主となり、築城の名手としても知られる存在へと成長していきました。
興味深いのは、実際にこの追撃戦で秀吉から感状を与えられた小姓は9人だったという説が伝わっている点です。江戸時代に入ってから、このうちの7人が「七本槍」として特に脚光を浴びるようになり、石河兵助と桜井佐吉という残る2名の存在は、比較的知られていないというのが実情です。賤ヶ岳を訪れる際には、こうした「表舞台に立った7人」と「陰に隠れた2人」という対比にも思いを馳せてみると、合戦史としての奥行きをより深く味わえるでしょう。
木之本宿にある造り酒屋・冨田酒造は、470年以上の歴史を誇る蔵元で、この七本槍にちなんだ銘酒「七本鎗」を醸造しています。賤ヶ岳観光とあわせて立ち寄り、合戦の歴史に思いを馳せながら地酒を味わうというのも、この地ならではの楽しみ方です。
訪れるベストシーズンはリフト営業期間の4月から11月
賤ヶ岳リフトは例年4月上旬から11月下旬ごろまで営業しており、季節ごとに違う表情を見せてくれます。
春、特にゴールデンウィークの時期は、歴史散策と絶景に加えて美しい新緑や花々も楽しめます。リフトの営業が始まる4月中旬から初夏にかけては、真っ白な花を咲かせる「シャガ」の群生が登山道沿いで訪れる人々を迎えてくれます。シャガの見頃はおおむね5月上旬から下旬にかけてで、新緑と白い花のコントラストが登山道に彩りを添えます。
夏場は、琵琶湖から吹き上げる風が心地よく、山頂の開放的な展望を涼やかに楽しめる季節です。標高はそれほど高くありませんが、樹林帯を抜けた山頂付近は見晴らしがよく、爽やかな気分で琵琶湖の青い水面を一望できます。
秋は紅葉のシーズンとして訪れる人も多く、リフトの営業も11月下旬まで続くため、色づいた木々越しに琵琶湖や余呉湖を眺められます。営業終了間際の11月は運行時間が9時から16時までに短縮されるので、訪問時間には気をつけてください。
冬季は積雪や強風のためリフトが運休となります。雪化粧した琵琶湖周辺の景色に興味があるなら、防寒対策と登山装備を整えたうえで徒歩ルートに挑戦する必要がありますが、登山初心者にはあまりすすめられない時期です。基本的にはリフトが稼働している4月から11月の間に訪れるのが、安全かつ快適に賤ヶ岳の絶景を楽しむための現実的な選択といえるでしょう。
木之本宿や竹生島など周辺観光との組み合わせ方
賤ヶ岳周辺には、あわせて訪れたい観光スポットも点在しています。山頂から望める竹生島は、琵琶湖に浮かぶ島全体がパワースポットとして知られ、琵琶湖汽船のクルーズを利用して上陸することも可能です。豊臣秀吉ゆかりの地としても知られており、賤ヶ岳の戦いの歴史とあわせて巡ると、戦国時代の近江国により深く触れられます。
賤ヶ岳と対をなすように広がる余呉湖は、静かな湖面が特徴的な小さな湖で、湖畔を歩きながら歴史散策を楽しむハイカーにも人気のエリアです。余呉湖側の登山口から賤ヶ岳を目指すルートを選べば、山頂の絶景だけでなく麓の湖の風景もあわせて堪能できます。
木之本エリアには古い町並みや歴史的な建造物も残っており、リフトや登山で身体を動かしたあとに、地元の食事処や土産物店に立ち寄るという定番の観光コースも組みやすくなっています。日帰りで訪れる場合は、午前中にリフトと山頂散策で汗を流し、午後に木之本宿や竹生島クルーズをまわるという流れにすると、体力的にも無理なく1日を使い切れます。滋賀県内には近江牛や湖魚料理を提供する飲食店も多いので、賤ヶ岳観光の合間に地元の食文化に触れてみるのもよいでしょう。北陸自動車道の木之本インターチェンジからのアクセスの良さもあって、日帰りドライブの目的地としてはもちろん、北陸方面や関西方面への旅の途中に立ち寄るスポットとしてもおすすめです。
なかでも木ノ本駅から徒歩圏内にある「北国街道 木之本宿」は、賤ヶ岳への登山とあわせて立ち寄りたいエリアです。木之本宿は、眼の仏さまとして知られる木之本地蔵院の門前町として栄えた宿場町で、北国街道と北国脇往還が交わる交通の要衝として、旅人や参拝客で古くから賑わってきました。境内に立つ高さ6メートルの地蔵像は秘仏とされる本尊を模したもので、「木之本のお地蔵さん」として全国から参拝客を集めています。寺の歴史は白鳳時代にまで遡るとされ、毎年8月に開かれる「大縁日」には多くの露店が並び、大きな賑わいを見せます。
木之本宿の町並みには、江戸時代から続く醤油醸造元や造り酒屋、平入で瓦葺の屋根に袖壁や連子格子を備えた木之本特有の民家が今も軒を連ねており、当時の宿場町の面影を色濃く残しています。「木之本交遊館」「ダイコウ醤油」「冨田酒造」「白木屋醤油店」「山路酒造」「旧木之本宿本陣(竹内家住宅)」の6件が国の登録有形文化財に登録・答申されており、歴史的な町並み散策を楽しみたい人には見逃せないスポットです。賤ヶ岳リフトで絶景を堪能したあとに、木之本宿で歴史的建造物や地酒・醤油といった地元の名産品に触れる組み合わせは、この地域を訪れる際の定番コースといえます。
賤ヶ岳は標高421メートルというコンパクトな山でありながら、琵琶湖・竹生島・余呉湖・伊吹山という滋賀を代表する景観を一度に見渡せる、価値の高い展望スポットです。リフトを使えばわずか6分で山頂近くまでアクセスでき、本格的な登山装備がなくても絶景を楽しめる点は、家族連れや登山初心者にとって大きな魅力になっています。余呉湖側からの本格的な登山ルートも整備されているので、体力に自信のあるハイカーには歴史散策を兼ねた楽しみ方も用意されています。2026年には「絶景ブランコ」やフォトスポットの新設、木ノ本駅とを結ぶ無料シャトルバスの運行開始など、アクセス面・体験面の両方で充実が進んでいます。営業時間や季節ごとの運行時間の違いを事前に確認したうえで、木之本インターチェンジからの車でのアクセスか、木ノ本駅からのシャトルバスや徒歩でのアクセスかを、自分の旅のスタイルに合わせて選んでみてください。








