毛無山は、山梨県と静岡県の県境にある標高1964mの山で、頂上稜線から富士山を正面に望めます。天子山地の最高峰にあたり、日本二百名山、山梨百名山、静岡百山の3つに選ばれています。静岡側の麓の登山口から山頂までは、標準コースタイムで登り3時間10分、下り2時間10分です。
富士山の西側に立つこの山は、朝霧高原をはさんで富士山と向かい合っています。近くて大きく、富士山の細かな造形が肉眼ではっきり見えるという声もあります。頂上稜線からは、富士山だけでなく天子山地、丹沢、駿河湾まで見渡せます。
この記事では、山の基本データ、静岡側と山梨側の登山口、コースタイム、地蔵峠を通る周回コース、縦走路、季節ごとの注意点、駐車場の情報を順に書きます。執筆日は2026年9月19日です。12月10日からは地蔵峠と下部温泉をむすぶ区間が冬季閉鎖に入るので、秋のうちに計画を立てたい人にも役立つ内容にしました。

毛無山は天子山地の最高峰で、最高地点は1964m、三角点は1945m
毛無山(けなしやま)は、山梨県南巨摩郡身延町と静岡県富士宮市にまたがる山です。富士山の西側で、山梨と静岡の県境に連なる天子山地の最高峰にあたります。山頂はいくつかのピークに分かれていて、最高地点のすぐ北東には大見岳(1959m)があります。
標高の書き方は、資料によって食い違います。山と溪谷オンラインや山梨県の登山情報は1964mを使い、三角点の標高として1945mを紹介するページもあります。どちらも間違いではないので、記事や登山計画では「最高地点1964m、三角点1945m」と分けて書くのがいちばん安全です。
| 地点 | 標高 | 補足 |
|---|---|---|
| 最高地点 | 1964m | 山と溪谷オンラインなどが採用している値 |
| 三角点 | 1945m | 別の資料が紹介している値 |
| 大見岳 | 1959m | 最高地点のすぐ北東にあるピーク |
| 静岡側の麓の登山口駐車場 | 860m | ゲート前にある有料駐車場 |
| ふもとっぱら | 700〜1000m | 富士山西麓に広がる草原 |
静岡側の登山口駐車場(860m)から最高地点(1964m)までは、表の数値から引き算すると約1100mの標高差です。これを標準コースタイムで登り3時間10分かけて登ります。
天子山地は、山梨県南西部から静岡県中部にかけて連なる山地で、富士山の西方に位置します。毛無山を最高峰に、竜ヶ岳、雨ヶ岳、天子ヶ岳などの山々が並びます。朝霧高原をはさんで富士山と向かい合う配置なので、富士山を正面から見渡せる山として登山者に選ばれています。
頂上稜線からは富士山に加えて丹沢と駿河湾、山梨側では河口湖と西湖まで見渡せる
毛無山の最大の見どころは、頂上稜線から見る富士山です。近くて大きく、富士山の細かな造形が肉眼ではっきり見える、という感想が登山記録に残っています。急な登りが続くぶん、稜線に着いたときの見返りは大きい山です。
富士山以外の眺めも広く、天子山地の山並み、丹沢、駿河湾まで届きます。山梨県側の情報では、足和田山、河口湖、西湖を眼下に見おろせる景色も紹介されています。同じ山頂でも、見る方向によって湖、海、山並みと景色の顔が変わるのが、この山の面白いところですね。
山梨県が選ぶ「やまなしハイキングコース100選」にも、「毛無山/富士山眺望コース」として掲載されています。山梨県のコース選定でも、毛無山は富士山の眺めを軸にした山として扱われています。
山頂付近の植物にも触れておきます。山頂付近はササと茅戸(かやと)に覆われていますが、四季折々の花も楽しめると紹介されています。
静岡側の麓登山口は標高860mで、駐車場は約40台、1日1000円
静岡県富士宮市側の麓登山口には、ゲート前に有料駐車場があります。標高は860mで、約40台分です。料金は1日1000円と紹介されています。料金や台数は変わることがあるので、出発前に最新の情報を確認してください。
車でのアクセスは、新東名高速の新富士インターチェンジを下りるところから始まります。西富士道路(無料区間)を富士宮方面へ進み、国道139号線をしばらく道なりに走ります。朝霧さわやかパーキング500mの看板の先にある分岐を左折し、キャンプ場入口を過ぎたつき当たりを左折すると、登山口に着きます。
ふもとっぱらキャンプ場の駐車場についても、別の情報があります。普通車は1日1000円、受付は8時30分から、退出は17時までで、事前予約が必要と書いたページもあります。朝早くに出発して夕方までに戻る日帰り登山では、この受付時間と退出時間が計画に響くので、事前に確認しておきたいところです。
山梨県の下部温泉側には、毛無山登山口に数台分の無料駐車場があると紹介されています。別の駐車場では、500円を封筒に入れる無人の方式もあります。無料の駐車場は台数が限られているので、早めの到着を心がけましょう。
不動の滝コースの標準コースタイムは登り3時間10分、下り2時間10分
静岡側の主なコースは、不動の滝を経由するコース(金山沢コース)と、小尾根コースの2本です。中心になるのは、麓の登山口駐車場から不動の滝見晴台を経由して山頂に向かうコースで、標準コースタイムは登り3時間10分、下り2時間10分です。大見岳まで足を延ばす場合は、往復で30分ほど加わります。
登りの内訳は、駐車場から不動の滝見晴台まで40分、見晴台から五合目まで45分、五合目から山頂まで105分です。足すと190分、つまり3時間10分になり、標準コースタイムと合います。山頂までの時間の半分以上を、五合目から上の急な登りが占めているわけです。
| 区間 | 所要時間 |
|---|---|
| 駐車場から不動の滝見晴台 | 40分 |
| 不動の滝見晴台から五合目 | 45分 |
| 五合目から山頂 | 105分 |
| 登りの合計 | 3時間10分 |
| 下りの合計 | 2時間10分 |
総歩行時間は6時間前後と案内するページもあります。日帰りの行程ですが、駐車場によっては退出時間の案内があるので、余裕のある出発時刻を選んでください。
一合目から九合目まで標識があり、不動の滝の見晴台を過ぎると急坂が続く
不動の滝コースの歩き方を、登山口から順に見ていきます。駐車場を出発して15分ほどで、地蔵峠コースとの分岐に着きます。分岐から約25分歩くと、不動の滝の見晴台に到達します。駐車場から見晴台までの合計40分は、先ほどのコースタイムの表と一致します。
登山道は最初こそ緩やかな林道ですが、不動の滝の展望台を過ぎると、九合目まで急坂が続きます。一合目から九合目まで、各合目ごとに標識が立っているのが、このコースの特徴です。標識が現在地と進み具合の目安になるので、急登のなかでも気持ちの支えになります。
九合目の標識を過ぎると、稜線の直前に出ます。ここまで来れば、稜線はもうすぐです。急な登りは体力を削りますが、標識の数字が一つずつ増えていくのは、正直なところ励みになります。
不動の滝周辺は、紅葉の名所としても紹介されています。赤や黄色のカエデの紅葉と滝が重なり、撮影スポットになっています。滝の落差は、資料によって数値の記載が分かれていたため、この記事では数値を書きません。見晴台から滝を望める、というところまでにとどめます。
山梨側の下部温泉から登るコースは、往復のピストンで歩ける
山梨県側には、下部温泉奥の登山口から登って同じ道を戻るピストンコースがあります。山梨県が紹介するハイキングコース100選にも掲載されているルートで、静岡側とは違う顔の毛無山を歩けます。
地蔵峠を経由して下部温泉側の登山口へ下るコースでは、江戸時代の金山遺跡を通ります。富士山の眺めだけでなく、歴史の痕跡を歩いて感じられるコースになっています。
ただし、地蔵峠と下部温泉をむすぶ区間は、12月10日から5月初めまで冬季閉鎖です。この期間は通行できません。この区間を使う計画は、5月初め以降から12月10日より前の間に組むことになります。
地蔵峠を通る周回は17.2km、9時間25分の長丁場で通行止め情報の確認が欠かせない
富士宮市の観光情報は、「毛無山・地蔵峠コース」を総距離17.2km、最高標高1939m、コースタイム9時間25分と案内しています。日帰りで歩くには長い周回コースなので、体力と時間の余裕が必要です。日の短い季節は、明るいうちに戻れる出発時刻を逆算しておきましょう。
このコースには、注意点が二つあります。一つ目は、富士宮市のページに、地蔵峠が落石のため通行できないという案内が載っていることです。富士宮市の観光情報には、「毛無山登山道の一部通行止めについて」というお知らせのページも用意されています。
二つ目は、先ほど書いた冬季閉鎖です。12月10日から5月初めまでの閉鎖とは別に、落石による通行止めが出ている点に気をつけたいところです。地蔵峠を通る周回を考えている人は、出発前に必ず富士宮市の最新の案内を確認してください。通行止めが解除されているかどうかは、この記事の情報だけでは判断できません。
大見岳とタカデッキと雨ヶ岳をつなぐ縦走路は、ササとシラカバの道から富士山と伊豆半島が見える
毛無山の先には、大見岳、タカデッキ、雨ヶ岳とつづく縦走路があります。毛無山と雨ヶ岳のコースからは、富士山、南アルプス、伊豆半島が眺められると紹介されています。ササと白樺(シラカバ)に囲まれた道で、富士山に加えて愛鷹山、箱根、伊豆半島も見えます。
毛無山と竜ヶ岳を結ぶ縦走ルートもあります。端足峠を通って、ふもとっぱらの毛無山登山口駐車場へ戻るコースです。富士山ロングトレイルのモデルコースにも、毛無山登山口駐車場から毛無山、大見岳、タカデッキ、雨ヶ岳を縦走し、A沢貯水池へ至るコースが載っています。
同じ天子山地の山々を組み合わせた山行記録は、ヤマレコに数多く残っています。毛無山から竜ヶ岳へ歩いた2026年2月23日付けの記録や、毛無山、雨ヶ岳、竜ヶ岳をまとめて歩いた記録が、2026年8月に複数投稿されました。
雪の1月から3月は訪れる人が多く、花の6月から8月はあまり知られていない
毛無山は一年を通して人気があります。特に、雪のある1月から3月に訪れる人が多いです。一方で、6月から8月にかけて花が多く咲くことは、あまり知られていないと紹介されています。積雪期の富士山の展望と、初夏から夏の花という、二つの楽しみ方があるわけです。
ただし、冬の入山には条件があります。毛無山周辺は標高が2000m近くになり、12月から4月にかけては、積雪と凍結のため非常に危険です。冬の入山は、雪山の装備と経験が前提になります。地蔵峠と下部温泉をむすぶ区間の冬季閉鎖(12月10日から5月初め)も、計画のときに押さえておきたい条件です。
2025年12月13日には、初冬の霧氷と富士山の展望が広がる毛無山を歩いた動画が公開されました。ふもとっぱらの上の山として紹介された動画で、霧氷の季節にも登山者が入っていることがわかります。
| 時期 | 山の状況 |
|---|---|
| 1月から3月 | 雪があり、訪れる人が多い |
| 5月初めまで | 地蔵峠と下部温泉をむすぶ区間が冬季閉鎖 |
| 6月から8月 | 花が多く咲く |
| 12月10日から | 地蔵峠と下部温泉をむすぶ区間が冬季閉鎖に入る |
| 12月から4月 | 積雪と凍結のため非常に危険 |
ふもとっぱらは標高700〜1000mの草原で、3月と10月にダイヤモンド富士が見える
毛無山の麓には、朝霧高原が広がります。登山口の近くにある「ふもとっぱら」は、富士山西麓の標高700〜1000mに広がる広大な草原で、富士箱根伊豆国立公園に指定されています。キャンプ場としても人気があります。
ふもとっぱらは、3月と10月にダイヤモンド富士を見られる場所としても紹介されています。ダイヤモンド富士とは、富士山の山頂に太陽が重なり、ダイヤモンドのように輝いて見える現象のことです。この記事の執筆日は9月19日なので、10月のシーズンが近づいています。撮影を狙うなら、日の出や日没の時刻を事前に調べておきましょう。
ふもとっぱらから毛無山を目指す、初心者向けのコースを紹介するサイトもあります。登山口の近くに広がる草原なので、山とセットで計画を立てやすい場所です。
山名の由来は「木無し」説と「木成し」説に分かれる
毛無山という名前の由来には、正反対の二つの説があります。ひとつは、樹木がまったく無いことから「木無し」と呼ばれたという説です。もうひとつは、樹木が豊富に茂っていることから「木成し」と呼ばれたという説です。山頂や山稜がササや茅戸に覆われて、樹木が無いように見えることによる、とする説もあります。
由来がひとつに定まっていないので、この記事でも断定はしません。「諸説あります」と書くのが誠実でしょう。山頂付近が木の少ないササの原であることは、先ほど書いたとおりで、その見た目と名前が重なるのは面白い点です。
難易度は体力度3、危険度Bで、日帰りできるが急登と道迷いに気を配る
朝霧高原の登山口からのルートは、体力度が3、危険度がBと紹介されています。日帰りは可能ですが、沢や崖などの通過や急な登り下りがあり、道が分かりにくい所があるなど、いくらかの危険が伴う難易度です。
登山道は、最初は緩やかな林道から始まり、徐々に急登が続きます。体力に自信のない人は、休憩を取りながら進んでください。急な坂や滑りやすい箇所があるので、足元には十分に注意します。岩場、鎖場、急斜面では、自分の経験と体力に合わせて無理をしないことが基本です。
登山情報サイトのなかには、山梨県側からの登山を難易度レベル56の上級と評価しているところもあります。同じ山でも、コースの選び方や評価の基準によって、難易度の印象が変わります。天候、季節、登山道の状況でも難易度は動くので、無理のない計画で歩きましょう。
2026年7月には雲海に浮かぶ富士山を写した山行記録が並んだ
ヤマレコには、2026年7月8日から7月12日にかけて、毛無山の登頂記録が多く登録されています。7月11日には、「【山梨百名山】毛無山 ~雲海に浮かぶ富士山は圧巻だった」というタイトルの山行記録が登録されました。雲海に浮かぶ富士山の眺めが、登山者の目当てのひとつになっているとわかります。
8月には、毛無山、雨ヶ岳、竜ヶ岳を合わせて歩いた記録が並びました。夏から初冬まで、富士山の眺めを目当てに登る人が絶えない山です。
毛無山の登山についてよくある疑問
初めて登る人が気になるのは、日帰りで歩けるかどうかでしょう。結論から言うと、静岡側の不動の滝コースなら、標準コースタイムは登り3時間10分、下り2時間10分なので、日帰りで歩けます。体力度は3と案内されていて、急登が続くぶん、朝早い出発をおすすめします。
冬に登れるのか、という疑問もよく聞きます。12月から4月は積雪と凍結のため非常に危険で、地蔵峠と下部温泉をむすぶ区間は12月10日から5月初めまで通行できません。冬に入る場合は、雪山の装備と経験が前提になります。
駐車場の料金を心配する人もいるでしょう。静岡側の麓の登山口は約40台で1日1000円、ふもとっぱらキャンプ場も普通車で1日1000円と紹介されています。山梨側の下部温泉側には、数台分の無料駐車場があります。どこも料金や運用が変わる可能性があるので、出発前に確認してください。
毛無山の登山計画で押さえる項目のまとめ
毛無山は、山梨と静岡の県境にある天子山地の最高峰で、最高地点は1964m、三角点は1945mです。富士山の眺めは、静岡側の不動の滝コースを登った先の稜線で開けます。標準コースタイムは登り3時間10分、下り2時間10分で、体力度は3と案内されています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 所在 | 山梨県南巨摩郡身延町と静岡県富士宮市 |
| 標高 | 最高地点1964m、三角点1945m |
| 静岡側の登山口 | 標高860m、約40台、1日1000円 |
| 標準コースタイム | 登り3時間10分、下り2時間10分 |
| 難易度 | 体力度3、危険度B |
| 冬季閉鎖 | 12月10日から5月初め(地蔵峠と下部温泉をむすぶ区間) |
| 通行止め | 地蔵峠は落石のため通行不可の案内あり |
| ダイヤモンド富士 | ふもとっぱらで3月と10月に見られる |
12月10日から冬季閉鎖に入るので、地蔵峠を通る周回コースや山梨側の下部温泉から登る計画は、それまでに済ませておく必要があります。出発前には、富士宮市の最新の案内で通行止めの状況を確認してください。準備を整えて歩けば、頂上稜線で富士山の大きな眺めが待っています。








