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静岡市葵区の竜爪山(りゅうそうざん)は、日帰りで富士山と駿河湾の眺めを楽しめる山です。山頂は南の文殊岳(1041メートル)と北の薬師岳(1051メートル)の二つの峰に分かれています。静岡市民に長く親しまれてきた、市を代表する山のひとつです。
楽しみ方は大きく二通りあります。穂積神社は山の東側の中腹、山頂から見て北東寄りの高い位置に祀られていて、車でここまで上がって神社を往復するのが、定番の過ごし方です。麓から自分の足で登る人も少なくありません。登山ルートは10本ほどあるそうで、休日になると地元の登山者でにぎわいます。

竜爪山は文殊岳と薬師岳が並ぶ標高1051メートルの双耳峰
竜爪山は、二つのピークを持つ双耳峰です。双耳峰(そうじほう)とは、二つの峰が並び立つ山を呼ぶ言葉で、安倍川越しに竜爪山を仰ぐと、文殊岳と薬師岳が肩を並べる姿がはっきり分かります。
千葉県南房総市の富山や茨城県の筑波山も、同じ双耳峰です。
一等三角点は低いほうの文殊岳にある
二つの峰のうち高いのは北の薬師岳ですが、一等三角点が置かれているのは南の文殊岳です。
三角点は、測量の基準になる点です。全国をむらのない精度と密度で覆うため、大小の三角形を網の目のように重ねて配置されています。測量はまず一等の網で日本列島の大きな枠をとらえ、続いて近くの一等点を手がかりに二等、三等と細かい点の位置を割り出す順で進みました。一等三角点は、この階層の頂点に立つ点です。
| 三角点の等級 | 点と点の平均距離 |
|---|---|
| 一等(本点) | 約45キロメートル |
| 一等(補点) | 約25キロメートル |
| 二等 | 約8キロメートル |
| 三等 | 約4キロメートル |
| 四等 | 約1.5キロメートル |
一等三角点の設置数は、補点を含めて973点です。置かれる場所は山頂の近くや見晴らしのきく地点が多く、どの点も緯度と経度が正確に測られています。ただし、使う側から見ると、一等から三等までの精度に差はないそうです。
富士山と駿河湾を眺めるなら冬の晴れた日、展望は文殊岳側でも探す
竜爪山から富士山を眺めるなら、ねらうのは空気の澄んだ冬の晴れた日です。この時期に登った人の記録には、駿河湾や富士山の眺望がすばらしかったと書かれています。山頂付近には霜柱が立ち、麓に近いところでは茶畑が広がっていたそうです。
もっとも、薬師岳の山頂そのものは展望がよくないという声があります。富士山を見たくて登るなら、山頂に着いて終わりにしないことです。歩いている途中の景色や、二つ目のピークにあたる文殊岳側の眺めまで含めて楽しむと、満足度が上がります。
冬の薬師岳では氷の花が見られる
冬の竜爪山には、もう一つの見どころがあります。薬師岳で氷の花がたくさん見られたという記録があり、その時期にも紅葉が渋い色合いで残っていたそうです。氷の花を見られるなら急登もつらくない、という登山者の感想まであります。
氷の花は、冬の寒い朝、枯れた植物の茎にできる氷の造形です。代表的なのがシモバシラという多年草で、秋に白い花穂をつけたあと、冬には茎が枯れます。それでも根は長く働き続け、枯れた茎へ水を送ります。気温が氷点下になると、その水が茎の中で凍り、茎の割れ目からはみ出して、薄い花びらを重ねたような形に育ちます。
氷の花は、いつまでも見られるわけではありません。凍っては押し出される動きが何度も続くと茎の繊維が裂けてしまい、氷の花はもうできなくなります。参考までに、神奈川県の自然観察園は、見られる時期の目安を12月中旬から1月上旬としていて、冷え込んで氷点下まで下がった12月の朝をねらい目に挙げています。
似た名前に霜の花(フロスト・フラワー)がありますが、こちらは空気中の水蒸気が枝や石の表面で凍り、花びらの形になったものです。茎から水が押し出されてできる氷の花とは、でき方が違います。
初めての竜爪山は穂積神社の駐車場から登ると標高差を抑えられる
初めて竜爪山に登るなら、穂積神社の駐車場を起点にするのが無難です。平山集落から車でおよそ20分上がったところに神社の駐車場があるため、麓から歩くより標高差を小さくできます。
この山は初心者向けと紹介されることもあります。ところが、実際に歩いた人の感想は「かなりきつい」です。なかでも直登コースは厳しく、急な登りが途切れません。
穂積神社から登っても、楽な道とはいえません。神社から薬師岳までは階段が続き、金属製の階段が長く連なる区間があって、膝に負担がかかりがちです。ここをきついと感じる登山者は多いようです。
竜爪山の登山口はバスなら平山口か牛妻坂下、車なら安倍ごころも使える
穂積神社のほかにも、竜爪山には登山口がいくつもあります。体力や目的、それに交通手段で選ぶと決めやすくなります。
平山口は静岡駅からバスで向かえる
平山口へは、しずてつジャストラインの「竜爪山線(静岡駅〜則沢)」に乗り、平山停留所で降ります。この路線には平日だけ走る便が含まれているので、時刻表は出かける前に公式情報で確かめてください。
車の場合、登山口付近には20台ほど停められるスペースがあります。休日は埋まってしまい、路肩にまで車が並ぶこともあります。満車を避けるには、早めに着くのがいちばんです。
下山に穂積神社を通って平山口の旧道を下る記録も複数あります。ただ旧道には石段や岩場があり、歩きにくいという報告があります。
牛妻坂下は安倍川沿いでバスを降りてすぐ歩ける
安倍川沿いにある牛妻坂下は、曙橋の近くから歩き出すルートです。静岡駅から乗ったバスを降りれば、そのまま登山を始められます。公共交通機関で来る人に向いた登山口です。
安倍ごころは67台の無料駐車場とトイレがそろう
「オクシズの駅・安倍ごころ」は、正式には静岡市賤機都市山村交流センターという施設です。駐車場は67台で無料、近くに公衆トイレもあります。
オクシズという愛称は「奥静岡」を縮めたもので、静岡市の北部にある山あいの地域のことです。安倍ごころは、その入口に置かれた情報発信の拠点です。
気をつけたいのは閉まる時刻です。メインの駐車場は17時に施錠されたという記録があるため、下山の時間には余裕を見ておいてください。施錠される鎖の外側にも、車を停められるスペースがあります。
道白山登山口は人に会わない静かな急登
道白山(白道山)の登山口は、竜爪山の一般的な登山道とは別方向から取り付くルートです。東海自然歩道に合流するまで、急な登りがずっと続きます。ほとんど人に会わない静かな道だったという記録がありますが、体力面では厳しい部類に入ります。
東海自然歩道は、東京都八王子市から大阪府箕面市までを結ぶ長距離自然歩道です。
俵峰からは真富士山を経由して竜爪山へ
俵峰の駐車場を出て真富士山を越え、竜爪山まで歩く縦走ルートもあります。途中で穂積神社への分岐を過ぎ、竜爪山にたどり着く行程です。この駐車場は有料で、500円だったという記録があります。
縦走なら平山バス停から鯨ガ池バス停まで13.9キロ、行動時間は約6時間
竜爪山には、縦走の記録もあります。平山バス停から鯨ガ池バス停まで日帰りで縦走した記録では、歩いた距離が13.9キロメートル、登りの累積が約1300メートル、休憩込みの行動時間が約6時間でした。
数字だけでは、どれほどの負担か想像しにくいでしょう。ヤマレコの記録ページには体力度という1から9ほどの数値が出ていて、数値ごとに「日帰りが可能」や「1泊以上が適当」のような目安が添えられます。この縦走記録の体力度は4で、目安は「1泊以上が適当」でした。しっかりした体力と計画がなければ挑めない行程です。
ほかにも、道白山、文殊岳、薬師岳の三つをめぐって出発点に戻る周回の記録があります。
累積標高は登りの高さをすべて足した数字
「登り約1300メートル」というのは、累積標高のことです。
標高差は、登山口と山頂の標高の差だけを見た数字で、途中の上り下りは数えません。累積標高は、登った高さをすべて足し合わせます。標高200メートルの山を例にとると、道の途中に30メートルの下りがあり、それを登り返して山頂に着いた場合、登った高さの合計は230メートルです。下った30メートルは数に入れません。
同じ高さの山でも、上り下りが激しいコースほどきつく感じます。登山の計画を立てるときに距離と累積標高の両方で難しさを判断するのは、そのためです。
ピストンは道を間違えにくく、縦走は疲れたときの判断ミスに注意
縦走(じゅうそう)では、頂上に立ったあと下山せずに尾根づたいに次の山を目指します。来た道をそのまま引き返す往復は「ピストン」と呼ばれ、同じ道を戻らない縦走とは正反対の歩き方です。周回は最後に出発地へ帰ってくる歩き方で、いくつもの山を回ってから起点に戻る場合は「周回縦走」という言い方もあります。
ピストンは帰り道を間違えにくく、かかる時間も読みやすい歩き方です。縦走は知らない道を歩き続けるので、疲れてきたときの判断ミスに注意が要ります。
出発前にはクマの目撃情報と登山届の提出先を確かめる
竜爪山を歩いた人の記録には、登山道でクマへの注意を促す看板を見かけたと書かれています。静岡県が公表した数字では、令和7年度の県内のクマ目撃情報は200件にのぼり、過去最多になりました。令和6年度の調査では、県内のツキノワグマは約540頭と推計されています。
県の自然保護課は、季節ごとの注意点を挙げています。秋は冬眠を前にクマが餌を探して活発に動き回り、これまでの生息域の外に姿を見せることもあります。春は冬眠から覚めたクマが新芽や山菜をあさる季節にあたり、子どもを連れている母グマはとりわけ神経をとがらせています。人がけがをする被害の多くは、出会い頭にばったり遭遇して起きています。クマ鈴やラジオで、こちらがいることを知らせながら歩いてください。
県のクマ出没マップは随時更新されているので、山に入る前に最新の目撃情報を見ておきましょう。なお、マップに載る目撃情報には、クマだと断定できないものも含まれています。
登山届は提出先を出発前に確認する
登山届の提出を条例で義務づける自治体は、2010年ごろから増えてきました。岐阜県のように、出さなかった場合に5万円以下の過料が科されることがある県もあります。
出し方は自治体ごとに異なり、登山口のポストに入れる方法、登山アプリ、メール、郵送などがあります。登山届受理システム「コンパス」(運営は日本山岳ガイド協会)を使えば、地図の上でルートを組んで提出でき、指定した家族や友人へまとめて送ることもできます。ただ、コンパスで受け付けていない自治体もあります。提出先は静岡県や静岡県警が案内しています。
分かりにくい分岐は地図とGPSで先に確認する
竜爪山には、登山道の分岐が分かりにくい場所があります。歩き出す前に地図やGPSでルートを頭に入れておくと安心です。最新の通行状況は、静岡市の観光情報や地元の山岳情報で分かります。
下山後は交流センターわらびこで汗を流せる、入浴は1時間100円
安倍川沿いを歩いた人の記録に、山を下りてから「交流センターわらびこ」に寄って風呂に入ったという話が出てきます。入浴料は1時間100円だったそうです。
竜爪山で富士山を眺めるなら冬の晴れた日に、体力に合う登山口から
竜爪山は、文殊岳と薬師岳が並ぶ静岡市の双耳峰で、冬の晴れた日には富士山と駿河湾の眺めが待っています。初めてなら穂積神社の駐車場から登って標高差を抑え、展望は文殊岳側の眺めもあわせて楽しめます。バスなら平山口や牛妻坂下、車なら安倍ごころの無料駐車場も使えます。体力に自信があれば、平山バス停から鯨ガ池バス停までの縦走にも挑めます。クマの目撃情報は県のクマ出没マップで、登山届の提出先は静岡県や静岡県警の案内で分かります。








