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雄阿寒岳は、北海道釧路市の阿寒湖の東側にそびえる標高1,370mの火山で、山頂へ向かう道は滝口ダム付近から始まる1本しかありません。環境省が示すコースタイムは、総距離12.4kmで5時間40分です。
阿寒湖のほとりから眺めると、雄阿寒岳はきれいな円錐形をしています。阿寒摩周国立公園を代表する山のひとつです。アイヌの人々はこの山を「ピンネシリ」と呼び、その名には「男の山」という意味が込められていました。
登山道の序盤には太郎湖と次郎湖という2つの湖があり、5合目を過ぎるとハイマツの高山帯に入ります。山頂に立つと、眼下にペンケトーとパンケトーが広がり、遠くは知床連山まで見えます。ただ、急な登りが続くうえ、ヒグマやマダニ、気象の変化にも備えなければなりません。環境省は、楽なコースではないものの、そのぶん充実感のあるコースだと紹介しています。

雄阿寒岳のコースタイムは環境省の目安で5時間40分
雄阿寒岳のコースタイムは、環境省の目安で5時間40分、総距離は12.4kmです。これとは別に、登山口から山頂までの片道を約3時間30分、往復を6〜8時間とみる目安もあります。かかる時間は、登山者の体力や休憩の取り方で大きく変わります。
片道3時間30分の登りは標高差約1,000m
登山口と山頂の標高差はおよそ1,000mあり、急な斜面が何度も現れます。体力にも時間にも余裕をもった計画が欠かせません。
登山口は滝口ダム付近で、国道240号線から入ってすぐ
雄阿寒岳の登山口は、阿寒湖の東の端にある滝口ダムの近くです。入口は国道240号線のすぐそばにあります。
駐車場は無料だが台数に限りがある
車を停める場所としては、滝見橋駐車場や登山口駐車場があります。どちらも料金はかかりませんが、停められる台数は多くありません。
歩き出す前に登山届を出す
コースの入口には登山届所があり、熊への注意をうながす看板も立っています。出発前に、ここで登山届を提出してから歩き始めます。
登山道がいまどんな状態かは、釧路市阿寒町行政センターのほか、阿寒湖温泉にある観光案内所でも尋ねられます。阿寒観光協会も問い合わせ先のひとつです。
太郎湖から山頂まで、雄阿寒岳の登山道で見える景色
雄阿寒岳の登山道は、森の中の湖から始まり、ハイマツの高山帯を経て、阿寒の湖をいくつも見下ろす山頂に至ります。
森の中の太郎湖と次郎湖
登山口から10分ほど歩くと最初に現れるのが太郎湖で、大きなコイが群れで泳いでいる姿に出会えることもあります。次郎湖は太郎湖とほぼ同じ大きさで、川が流れ込む様子も流れ出る様子も見当たりません。静かな水面には周りの森と空が映り、紅葉の季節はとりわけ美しい眺めになります。
5合目の上はハイマツの高山帯
5合目のすぐ下は急な登りの連続です。そこを登りきると、ハイマツが中心の高山帯の景色に変わり、阿寒湖や雌阿寒岳が視界に入ってきます。
ハイマツは、北海道から本州の中部地方にかけての高山帯に広く分布する植物です。標高が高い場所ほど丈が低くなります。針葉樹の森が育たない場所では、ハイマツとダケカンバが群落をつくることがあり、ダケカンバは冬に積もる雪の重みを受けて、斜面に沿うように曲がって伸びます。
8合目には旧軍の気象観測所の跡
8合目付近には旧軍の気象観測所が置かれていた跡地があり、そこから山頂までは20分ほどの道のりです。
山頂からは知床連山まで見渡せる
頂上に着くと、雌阿寒岳の姿に加え、真下にはペンケトーとパンケトーが見えます。さらに屈斜路湖や斜里岳、知床連山まで見渡せ、阿寒カルデラとその中に散らばる湖を一望できます。
雌阿寒岳と比べると雄阿寒岳は上級者向け
雌阿寒岳と比べると、雄阿寒岳は上級者向けとされています。道が1本しかなく距離も長いことから、環境省がそう位置づけています。
雌阿寒岳の山頂までにかかる時間は、どの登山口から登るかで変わります。雌阿寒岳の山頂からは阿寒富士へ向かう道が続いていて、往復に約2.5時間かかります。阿寒富士は標高1,476mで、雌阿寒岳の南側に見える寄生火山です。
| 雌阿寒岳の登山口 | 山頂までの登山時間 |
|---|---|
| 野中温泉登山口 | 約2時間30分 |
| オンネトー登山口 | 約2時間50分 |
| 阿寒湖畔登山口 | 約3時間30分 |
ただし雌阿寒岳では、2025年9月に噴火警戒レベルが2に上がり、入山規制が行われました。雌阿寒岳の最新の状況は、気象庁や釧路市の発表で確かめてください。
雄阿寒岳の登山シーズンの目安は6月から10月で、冬季は登山禁止
雄阿寒岳の登山シーズンは、6月から10月がひとつの目安です。冬季は登山が禁止されています。
6月の上旬は、年によって雪が残っていたり、道がぬかるんでいたりします。10月も中旬を過ぎると、冷え込みや初雪に注意が必要です。
紅葉は9月下旬から10月中旬にかけて
紅葉の見頃は場所によって少しずれます。滝見橋のあたりは例年9月下旬から10月上旬、阿寒湖は10月上旬から中旬が見頃の目安です。山頂の近くは、麓に比べて色づき始めるのが早いことが多く、秋にはダケカンバの葉が黄金色に染まります。
雄阿寒岳で備えたいのはヒグマとマダニと天候の変化
雄阿寒岳を歩くなら、ヒグマとマダニへの対策、それに天候が崩れたときの装備をそろえてから入山します。登山道には溶岩の空洞や岩場、急な登りがあり、濃霧や強風、低温にも注意が必要です。雨具と防寒具は必ず持っていきます。
ヒグマは音で知らせて遭遇を避ける
この一帯はヒグマのすみかです。登山者は、鈴やラジオ、ボタンを押すだけで鳴る電子ホイッスルのどれかを身につけ、人間がいることを音で知らせます。撃退スプレーを携帯する人もいます。
登山道の外はクマの生活圏なので、道からはみ出さずに歩きます。北海道の自治体も、フンや足跡を見つけたら引き返すこと、食べ物やゴミは持ち帰ること、出発前に出没情報を確認することを勧めています。阿寒湖温泉の地区でもヒグマを見たという通報があり、釧路市と警察が注意を呼びかけています。
環境省北海道地方環境事務所は、登山道で危険な行動をとるヒグマ(問題個体)が確認され、人身事故のおそれが高いと判断した場合に、各登山口を緊急で閉鎖する方針を示しています。
マダニは肌を出さない服装で防ぐ
マダニが活発に動くのは、春から秋にかけてです。札幌市は、長袖と長ズボン、足を覆う靴、帽子、手袋を身につけ、首にタオルを巻くなどして肌を出さないよう勧めています。ズボンの裾を靴下や長靴の中に入れ、登山用のスパッツを重ねると、さらに守りが固くなります。林野庁は、袖口や裾が締まる服を選ぶことと、忌避剤を持っていくことを求めています。
もし咬まれても、自分で無理に引き抜いてはいけません。体の一部が皮膚の中に残ることがあるので、医療機関で取り除いてもらいます。咬まれてから6日から2週間ほどたって発熱や発疹、下痢などが出たら、マダニに咬まれたことを伝えたうえで早めに受診します。
雄阿寒岳は2011年に活火山に選ばれたが噴火の記録はない
雄阿寒岳は、気象庁が2011年6月の火山噴火予知連絡会で新しく活火山に選び、噴火予報(活火山であることに留意)を出した山です。有史以降に残っているのは主に地震や地殻変動の記録で、噴火したという記録は残っていません。
釧路地方気象台が1991年に現地で観測したときには、山頂の北側斜面にある地熱域で、10箇所以上の弱い噴気が見つかりました。2011年に上空から観測した際にも地熱域が確認されています。2024年の火山活動解説では、目立った変化はなく静かな状態が続いたとされました。
雄阿寒岳は約1万年前の噴火で湖を分けた山
雄阿寒岳は、約1万年前からくり返された噴火によってできました。それ以前、広いカルデラの中には大きな湖がひとつありました。噴火で流れ出た溶岩がその湖を分け、その名残の代表が阿寒湖、パンケトー、ペンケトーです。
阿寒カルデラは直径10kmを超える陥没地形
カルデラとは、火山の活動で地面が大きく落ち込んだ地形を指します。そのうち、地すべりや浸食が原因のものを除き、火山活動による陥没が原因のものを陥没カルデラと呼びます。
阿寒カルデラの直径は10km以上あります。爆発的な噴火が130万年を超える長い期間くり返され、約15万年前に現在に近い形になりました。周りを囲むのは、雌阿寒岳(1,499m)、雄阿寒岳(1,370m)、フップシ岳(1,225m)、木禽岳(995m)などの火山です。湖と、針葉樹と広葉樹が混じる森(針広混交林)が溶け合った景色が、この地域の特徴になっています。
ピンネシリとマチネシリ、夫婦の山の言い伝え
アイヌの人々は、雄阿寒岳を「ピンネシリ(男の山)」、雌阿寒岳を「マチネシリ(女の山)」と呼びました。頂がひとつの雄阿寒岳と、頂が2つある雌阿寒岳を対にする見方があります。雌阿寒岳のほうが標高が高く、山頂の数も多いことから、2つの山を夫婦に見立てた民話も伝わっています。
阿寒湖は標高420mにあるマリモの湖
阿寒湖は標高420mにある淡水湖で、広さは1,318ヘクタール、平均の水深は18.7mです。湖の周りは約30kmあり、いちばん深いところでは水深が約45mに達します。2005年11月には、ラムサール条約の登録湿地になりました。
特別天然記念物のマリモ
阿寒湖のマリモは特別天然記念物で、大きいものは30センチほどの球の形に育つ、めずらしい淡水藻です。採ることも触ることも禁じられています。マリモを観察できるセンターは湖の中のチュウルイ島にあり、島へは遊覧船で行けます。
阿寒湖は2005年から釧路市の一部
2005年10月11日、釧路市と阿寒町、音別町が合併し、新しい釧路市が誕生しました。このときから、阿寒湖をはじめとする観光地も釧路市に含まれています。
阿寒摩周国立公園は1934年指定
阿寒湖と雄阿寒岳が属する阿寒摩周国立公園は、もともと阿寒国立公園という名前で、1934年(昭和9年)12月4日に指定を受けました。その後、2017年(平成29年)に行われた第5次点検の中で、現在の名前に改められています。阿寒、屈斜路、摩周という3つのカルデラの地形が土台になった公園で、火山と森と湖が見どころです。摩周湖は水の透明度の高さで、屈斜路湖は日本最大のカルデラ湖として知られています。
阿寒湖温泉へは釧路空港からバスで約75分
公共交通を使う場合は、JR釧路駅か釧路空港からバスに乗り、阿寒湖バスターミナルで降ります。釧路空港からの乗車時間は約75分で、阿寒湖温泉へは阿寒湖バスターミナルから歩いて約7分です。車なら、道東道の足寄ICを降りて国道241号を通り、約60分で着きます。
阿寒湖温泉ではアイヌ文化と湖畔歩きも楽しめる
北海道最大のアイヌの集落、阿寒湖アイヌコタン
温泉街の真ん中にある阿寒湖アイヌコタンには約120人が住んでおり、アイヌの集落としては北海道最大とされています。民芸品(木彫や刺繍)の店と飲食店を合わせて約20店舗があり、店先では木彫りの作品やアイヌ文様の刺繍、ムックリなどの楽器が売られています。
アイヌシアター「イコロ」は、アイヌ民族舞踊の専用劇場として国内で最初にできた施設です。ユネスコ無形文化遺産になった古式舞踊のほか、人形劇やイオマンテの火まつりが上演され、古式舞踊と現代舞踊にデジタルアートを重ねた新しい演目「ロストカムイ」もあります。公演の日程は季節で変わり、演目が入れ替わることもあります。アイヌコタンの中には、ここで活動する作家がつくった生活用具や衣服、装飾品、木彫品を展示する「オンネチセ」もあります。
ボッケと遊歩道、遊覧船
遊覧船乗り場とビジターセンターをつなぐ遊歩道の途中には、ボッケがあります。ビジターセンターの裏手からボッケまでは1.2kmです。ほかにも、1.5kmの湖のこみちと1.2kmの森のこみちが整えられています。ボッケは100度近くまで熱くなるので、柵の内側には入らないでください。
阿寒観光汽船の遊覧船は、湖畔の桟橋を出て湖の景勝地をめぐるもので、所要時間は約1時間25分です。運航は5月から11月までです。環境省のモデルコースでは、遊覧船と湖畔の散策を合わせて全体で2時間10分とされており、歩く区間は30分(1km)と15分(0.5km)です。
冬の阿寒湖は氷上の花火とワカサギ釣りの季節
冬は、湖畔での体験を楽しむ季節です。
全面結氷した湖の上では阿寒湖氷上フェスティバルが開かれ、氷の上から打ち上げる花火「冬華火」が見どころになります。2026年は2月1日から3月2日まで開かれ、点灯は19時30分から21時まで、入場は無料でした。フェスティバルが終わったあとも、3月3日から3月15日までは花火だけが打ち上げられました。
ワカサギ釣りは例年1月から3月までで、温泉街に近い湖上に釣りの施設ができ、道具はまとめてレンタルできます。料金の例として、あいすランド阿寒の天然わかさぎ釣りは2,200円で、釣具一式と遊漁料が含まれ、天ぷらのサービスも付きます。釣りのほかにも、スノーモービルやバナナボートに乗ったり、スキーやアイススケートを楽しんだりと、氷の上や雪の上で遊べる体験がそろっています。
まとめ
雄阿寒岳は、釧路市の阿寒湖の東にある標高1,370mの活火山で、登山道は滝口ダム付近からの1本だけです。環境省が示すコースタイムは総距離12.4kmで5時間40分です。登山口と山頂の標高差は約1,000mあります。
太郎湖と次郎湖の森を抜け、5合目の急登を越えればハイマツの高山帯に出て、山頂からはペンケトーやパンケトー、知床連山まで見渡せます。登山シーズンの目安は6月から10月で、入山前にはヒグマの出没情報と火山の情報を確かめ、雨具と防寒具、マダニ対策の服装をそろえて出かけてください。








